数分前までものすごく優しくてやらしくて気持ちいいことをしていたはずなのに、それが今はくどくどと続く小言を正座して聞いている。やらしいことをした後ってもっとこう…甘ったるい雰囲気のなか微睡みながらいちゃついたりするもんじゃないの?なんか思っていたのと違う。足もしびれてきたしそろそろ正座を崩してもいいかな。

「僕の話を聞いているんですか!」
『もちろんです』

…ちっくしょう、タイミングを逃した。というより骸さんってなんで変なところで思い出したかのようにダメ出しをしてくるんだろう。
そりゃ私に全く非がないとは言わない。でもこの場面で言うべきことではないと思うんだけど。むしろ普段は顔を合わせたら最後、誰かが骸さんを呼びに来るまでよくもまあそんなに溜め込んだよなってくらい延々と小言を言い続けるから自然と避けてしまうようになっていた。
まあ、そんなわけで久しぶりに会った骸さんの小言が始まる前に胸のなかに飛び込んですり寄り唇をふさいだ。舌を入れさせてくれたらこっちのもん。骸さんも初めは驚いた顔をしていたけど角度を何度かかえていくうちに肩の力を抜いて応えてくれた。人目を阻みながら部屋の中に入れば後は流れに身を任せればそれでいい。周りの人達もパーティーの最中に連れだって消える私達のことなんてまるで気にも止めず余興や料理、それに己の欲望を満たすべく獲物を狙ったりと各々楽しんでいるんだから人様の事情なんぞに構ってられないのだろう。
今日はちょっと怒っていたのか少し乱暴だったけど、でも骸さんは相変わらず優しくてやらしくて気持ちよかった。

「…だからお願いですからどこかへ行くときはせめて僕にだけは連絡してください」
『今後気をつけます』

なるべくね。と心のなかでつけ足してにっこり笑うと「絶対わかってないでしょう」とげんなりとした顔をする。

『まあまあ、せっかく久しぶりに会ったんだしもっと楽しみましょうよ、ね?』

さりげなく正座していた足を崩して骸さんに覆い被さると、きりりとした表情をして脱ぎ捨てていたシャツを掴み着替え始めた。

「いや、これ以上は駄目です。時間がありません」
『けち』
「ケチじゃありません。雲雀くんにおこられます」
『あ、そっか。任務…』
「君とこんなところで会うなんて思わなかったので」
『私も』
「後で迎えに来ますからここで大人しくしていてください」
『はぁい』

絶対に出歩かないでくださいよ、と念押しして部屋から出ていった。信用ないなあ、なんてひとり笑っていると静かになった室内で急にエアコンの音がやけに大きく響いて耳に障った。
さて、どうしようか。このまま大人しく骸さんの帰りを待つか、脱け出すか。
あれだけ念押ししたということは幻覚を使った大掛かりな何かをするのか、それとも雲雀さんと一緒に来ているということは血生臭いことでも始まるのか。どちらにしろ私には関係のないことだ。特有のだるさのせいか眠くなってきた。骸さんは今から任務だなんて可哀想。あ、元々任務だったのに抜け出して私と会ってたんだっけ?雲雀さんにバレたら後できっちり噛み殺されそうだなあ。まあいいや。一眠りした後でシャワーでも浴びて着替えてのんびりしよう。それでも暇をもて余しそうだったら、骸さんには悪いけど先にここから抜けさせてもらおう。しばらくはひとりでも大丈夫なくらいいっぱいキスもしたことだし。出来ればもう少しだけ骸さんといやらしいことをしたかったけど。早く帰って来てくれるといいな。なんて思いながら布団を手繰り寄せて重くなってきた瞼を閉じた。






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