▶お互いにすれ違ってる話
▶zhと拗れてる、短め
夜中に目が覚めた。なんだか、再度眠りにつくのも難しい日だった。隣で眠るいつもは長時間見つめると怒る吸血鬼を心ゆくまで見つめた後、夜風にもあたるかと思い立った私はよいしょ、とベッドから出た。薄手のカーディガンを羽織り、窓ガラスを横にスライドさせ、スリッパを履いてベランダに出る。見上げれば、そこは銀世界が広がっていた。
「わあ、綺麗。」
本音だった。キラキラと輝く星はまるでこちらを見てと言っているみたいに私を誘う。まるで希望に縋るよう、私は星空へと手を伸ばした。付き合っているのか、付き合っていないのかもわからないただ惰性だけの関係。それが私と葛葉の関係だった。どちらが先に声をかけたのかも、もう覚えていない。昔からの顔なじみ。そんな関係をどうにかするか、終わりにしたいと思っているのもまた、本音だった。
今までだって、何度も葛葉との関係を終わらせようとしてきた。それでも、彼と会う前日までは、確かに伝えられたはずの言葉も彼を目の前にすると一瞬で消える。大好きなのだ。認めたら一瞬で終わってしまうような脆さでも、どうしようもなく、あのルビーが私のものであって欲しいとそう願ってしまう。はぁ、と吐き出されたため息は白い風となって星空へと消えた。さようなら、そんな簡単な言葉さえも言えない。今の関係に甘えているのは所詮私の方なのだ。少しだけ目に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
「…さっむ!お前、なにやってんだよ。」
「………葛葉。」
彼に言い出せないのは私のせいだけではないのではないか、とふと思うことがある。私がいくら決意を固めても、お前これ好きだったろ?と私が好きなものを覚えてたり、バァカと無邪気に笑うその笑顔にどうしようもなく惹かれる。夜を共にするときに、いちいち大丈夫かよ、なんて聞かないでほしい。大切にされてるだなんて錯覚をさせないで欲しい。それともう1つ、私が一人で泣いていても気づかないで欲しい、のに。
「…どうして。」
「起きたら突然隣で寝てたやつがいないんだから、そりゃ驚くだろ。普通。」
「で、も!私がいなくたって葛葉は…」
困らないでしょう?ぽたり、堪えていた涙が落ちた。もう自分の意志では止められない。葛葉の前では絶対にこれ以上泣きたくなかった。溺れてしまうのが怖いから。もう戻れないところまで来ている自覚もある。今なら、言える。何故だかそう思った。
「くずは、
「俺が、お前が横にいなかった時、どんな気持ちだったか分かるか?」
彼は私の言葉を遮るように、問いかけた。
「マジで、出て行ったんかと思った。もう二度と会えないんじゃねって思った。」
「…。」
「ベランダにいるの見つけた時も、消えそうになってるお前見て、俺がどんな気持ちだったか分かんのかよ。」
「そんなの…。」
「100%なかったって言えんの?」
初めて責められるように見つめられ、息をごくりと飲んだ。言えると思った気持ちなんてとうに消えて、止まらない涙だけが頬を伝った。
「全然、足りねえんだよ。俺の好きとお前の好きじゃ何もかも違いすぎて。」
はやく、戻れないところまで堕ちてこい。と冬空の中から、温かい室内へと引き込まれる。室内に入った途端、彼が存在を確かめるかのように強く私を抱きしめた。その温もりで私は、ああ葛葉だって生きているんだな、とそう思った。星降る夜に願いをかける。どうか彼を私から奪わないで。