03
「……紗良は、赤羽の話をしているときは楽しそうだな」
ふいに、思わぬことを学秀から指摘され、紗良は目を瞬かせた。
「そ、そうかな?」
「それに、最近赤羽の話ばかり聞く気がする」
「そ、それは、カルマ君と一緒にいる時間が多い、から……」
――だけど、本当にそれだけなのだろうか。
紗良はなんだか恥ずかしくなり、布団で顔を隠した。
「紗良は、赤羽に告白されたんだろう? 返事はしたのか」
「ま、まだ……」
気持ちが決まるまで待ってくれるというカルマの言葉に甘えて、まだはっきりと返事をしていないままだ。
「紗良。君は、赤羽の事が……」
学秀は何かを言おうとして、「いや、やっぱりいい」と、首を横に振った。
「……君は、僕の事はどう思ってるんだ?」
「え、学秀君の事?」
紗良はきょとんとした顔をして首を傾げる。
「そう、僕の事」
真剣な目でそう問われ、紗良はうーんと考える。
「えっと……学秀君の事はすごく尊敬してるよ。小さい頃からいつだって私よりなんでも上手にできて、頼りになって、困った時は助けてくれて……。もし、お兄ちゃんがいたらこんな感じかなって、思ってるんだ」
紗良がそう伝えると、学秀は複雑そうな表情を浮かべて「お兄ちゃん……」と呟いた。
「ご、ごめん。嫌だった……?」
学秀の反応を見て、紗良は慌てて謝る。
「不満じゃないと言えば嘘になるが。……いや、良いんだ。紗良がそう思ってくれているならそれでも構わない」
「学秀君……?」
学秀は少し切なげな笑みを浮かべ、紗良の顔を覗き込む。
「……お兄ちゃんということは、家族みたいな存在ってことになるね。じゃあ、紗良にとって、僕は特別?」
「うん。もちろん特別だよ?」
「ふっ。それなら、良い」
満足そうに、だけどどこか寂しそうに笑った。
「少し、おしゃべりをしすぎたね。ゆっくり寝ると良い」
そう言いながら、学秀は紗良の頭を撫でる。
「ありがとう。じゃあ、おやすみなさい」
瞼を閉じると、疲れていたこともあってか、すぐに眠気が襲ってきた。
「おやすみ。……好きだよ、紗良」
その小さな呟きは、紗良の耳に届くことはなかった。
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