キスしないと出られない部屋(ライク・ツー/千銃士R)


「おい、起きろマスター」

「……? ライク・ツー…?」

周りを見回すと、真っ白な壁に囲まれていた。

「ここどこ…?」

「さぁな。俺も気づいたときにはここに居た」

とりあえずこの部屋を探索することになった。

とはいってもこの部屋には何も物がなく、あるのは開かない頑固な扉ぐらいだ。
押しても引いても蹴っても銃で撃ってみても傷一つつかない。
どうしたものかと考えていると、床に紙が落ちていることに気づく。

その紙に書かれていた文字を見て2人して固まる。

「「キスをしないと出られない部屋?」」

もちろん、私とライクツーは恋人同士などではない。
マスターと貴銃士。ただそれだけの関係だ。

「ど、どうしよう?」

隣のライクツーを見上げる。
ライクツーはため息を一つ吐いた。

「『どこに』とは書かれてねぇよな」

ライクツーは私の手をとると、薔薇の傷に口づけた。

「……っ!?」

赤面する私をよそに、ライクツーはスタスタと扉の方ヘとあるき出す。

「……開いてねぇな」

「えぇ……」

ライクツーは舌打ちをすると、ズンズンと私の方へ歩いてくる。
勢いに圧倒されて後ずさると、腕を引かれて今度は頬にキスをした。

「ひゃあ」

「うるさい」

残念ながら、扉はまだ開いてないようだ。

「……」

「やっぱ、口にしないとダメってこと…かな…?」
「たぶんな」

他に出られる方法はなさそうだし、キスするしかなさそうだ。

「誰だよこんな部屋作ったやつ……」

ライクツーはしかめっ面でブツブツ文句を言っている。
よっぽど私とキスしたくないのかと思うとちょっと辛い。

「ご、ごめんね? 私なんかが相手で……。嫌、だよね……」

「嫌、というか……こんな形で強制的にキスさせられるのが不服なだけで、別にお前とキスするのが嫌なわけじゃねーよ」

「えっ、そうなの?」

「……お前は嫌じゃねーのかよ」

「私はライクツーとなら……いいけど……」

「ふぅん」

そう言うと、また私の手を掴んで引き寄せる。
ライクツーのきれいな手が私の頬をするりと撫でる。
恥ずかしくて下を向いていた顔を無理やり上にあげられた。
ライクツーの綺麗なオッドアイと視線が重なる。

「……マークスに知られたら、殺されそうだな」

顔が近づいてきて、唇同士が触れ合う寸前で止まる。

「目、閉じろよ」

言われて慌てて目をぎゅっと瞑った。
心臓がバクバクとうるさくて、ライクツーに聞こえてないか心配になる。
唇に柔らかい感触がして、すぐに離れる。
目を開けると、ライクツーはふいっと顔を逸らした。
彼の耳が少し赤い気がするのは気のせいだろうか。

「……これで開くんじゃねーの」

再び扉の方へスタスタと歩いていくライクツー。
私も慌てて彼の後を追った。
確かに、先程まではびくともしなかった扉が今はすんなり開いた。

「ほら、行くぞ」

「う、うん!」

2人で部屋の外へ出るとそこはいつもの寮の廊下だった。
何の変哲もない普通の場所だ。
振り向くもそこにあったはずの扉はなかった。

「なんだったんだろう……」

首を傾げていると、マークスが私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

「マスター!!!」

マークスが私達の方へと駆けてくる。

「うるさい奴が来たな……」

「マスター、無事か!? どこに行ってたんだ? 探しても見つからないから心配してたんだぞ!」

「ごめんね心配かけて……私は大丈夫だよ」

「ほんとうか? 損傷は……ないみたいだが、顔が少し赤いぞ。もしかして発熱してるんじゃないのか? 病気か!?」

「いや、これはそういうんじゃないくて……」

先程の出来事を思い出し、ちらりとライクツーを見上げる。

「面倒だからマークスには言うなよ?」

「マスター!! ライクツーと何してたんだ!?」

「な、なんでもないよ……!」

今日あったことは、私とライクツーだけの秘密だ。



2024.3.31



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