気づいた気持ち
ここ最近は体の調子が良く、保健室に行く回数がかなり減った。
そうなると必然的に、アッシュ君に会う機会もなくなってしまう。
クラスも違うし、わざわざ休み時間に会いに行って話をするような間柄でもない。
彼と最後に会話したのはいつだっけ。
少し寂しい、と感じているのは自分だけなのだろうか。
そんな事を考えながら、移動教室で廊下を歩いていると、屋上へと続く階段の下で数人たむろして喋っている男子がいた。
その中に、アッシュ君の姿もあった。
前を通り過ぎようとした時、彼もこちらに気づいたようで、ライトグリーンの瞳と目があった。
私はつい嬉しくなって、アッシュ君に向かって小さく手を振った。
だけど、すぐにふいっと目を逸らされてしまう。
……ちょっと、馴れ馴れしすぎたかな。
私は手を振ったことを少し後悔しつつ、前を向いて足早に彼の前を通り過ぎる。
後ろから、話し声が聞こえきた。
「あの子、知り合いか?」
「……知らない」
「お前に手振ってたろ」
「人違いじゃねえの」
――ああ、聞きたくない。聞きたくない。
気づいたら私は駆け出していた。
私は彼にとって、知り合いと呼べるほどの存在でもなかったんだ。
勝手に仲良くなったつもりでいたけど、自惚れだった。
馴れ馴れしく手なんか振って、嫌われてしまったかもしれない。
他愛もない話をして笑い合っていた保健室での穏やかな時間を思い出して、涙が出そうになる。
保健室で私の話し相手になってくれたのは、彼にとっては単に暇つぶし程度のことだったんだろう。
あの時間を特別だと感じていたのは、きっと自分だけだったんだ。
胸の奥が、ズキリと痛む。
私は自分が思っていた以上に、アッシュ君のことを好きになってしまっていたみたいだ。
2018.12.28
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