腹痛と発熱(肥前)
※生理ネタです
※肥前くんが本丸に来てまだ間もない頃のお話
(はぁ……お腹痛い……)
執務室で 政府に提出する書類と向き合いながら、私は腹痛と戦っていた。原因は分かっている。月一のアレだ。ただでさえ書類仕事は苦手なのに、体調まで悪いとなるともう最悪だ。
だけど、本日近侍の肥前くんも手伝ってくれていることだし、弱音を吐くわけにはいかない。
明日提出の書類仕事が山盛り溜まっていると知った時の、今朝の肥前くんのうんざりしたような表情を思い出して気合いを入れ直す。
これ以上ダメ審神者だと思われる訳にはいかない。
自分を鼓舞しつつ書類と戦っていると、肥前くんから声がかかった。
「おい、こっちは終わったぞ」
肥前くんは、一見書類仕事には向いてなさそうなタイプに見えるが、政府の刀だけあって手慣れたものだ。
根は真面目で黙々と作業をしてくれるので仕事も早い。
だから今日の近侍に選んだというのもあるのだけど。
「ありがとう肥前くん。じゃあ悪いけど、次はこっちの書類をお願いしてもいいかな……?」
書類を受け取った肥前くんが、眉間にしわを寄せてこちらをじっと見てくるので何か文句を言われるのかと思いきや。
「……顔色、悪いぞ」
気づかれてしまった。さすがは脇差と言ったところか。
肥前くんはさほど他人に興味がなさそうなタイプに見えたので、もしかしたら気づかれずに1日過ごせるんじゃないかと思ったんだけど。
「実はちょっと朝からお腹痛くて……。でも別に大丈夫だから気にしないで」
「なんか変なもんでも食ったのか?」
「そういうんじゃないんだけど……」
私の歯切れの悪い答えに、じゃあ何だ、という視線を向けてくる。
あまり余計な心配をかけたくないし、ここは正直に答えよう。
「あの……あれだよ。ただの生理痛」
「……」
もしかして生理痛という言葉を知らなかっただろうか。
個刀差もあるだろうけど刀剣男士が人間のことについてどこまで知識があるのかよく分からない。
「えっと、生理痛っていうのは……」
「知ってる」
知ってたらしい。説明するのはちょっと恥ずかしい気もするから知っててくれてよかった。
「そういうわけで、毎月のことだから大丈夫だよ」
「辛いんなら、寝てろよ」
「え、でも書類が……」
「俺がやっとく」
「そういう訳には」
「無理して倒れられたほうが迷惑なんだよ」
「でも」
「いいから寝てろって言ってんだ」
半ば怒り気味にそう言われてしまったら、従うしかない。
私は座ってた座布団の上にごろんと寝転がった。
「おい、寝るなら布団で寝ろよ」
「うーん、動きたくない……」
肥前くんはチッと舌打ちをするとおもむろに立ち上がり私の目の前まで歩いてきた。私は肥前くんを見上げる形になる。
床から見上げるとすごく大きく見えるなあ、なんて呑気なことを考えていると、肥前くんは屈んで私のことを抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「!?!?」
パニックになる私をよそに肥前くんは隣の寝室まで私を運んで布団の上にそっと降ろしてくれた。
「ほらよ」
毛布までかけてくれる始末だ。
私は心臓がバクバクでお腹の痛みなんて忘れていた。
「あ、ありがとう……?」
「ん」
肥前くんは短く返事をすると、書類仕事に戻っていった。
(一体何が起こったの)
いや別に何事もなかったんだけど。ただ布団に運んでもらっただけだ。その行動が予想外だったから私が勝手にドキドキしているだけで……。
ドキドキする心を鎮めようと私は布団の中で目を閉じる。
あぁ、どうしよう。
肥前くんのせいで熱まで出てきちゃったみたい。
2022.6.30
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