風紀委員として見過ごせません!
※中2の頃のお話
※夢主→浅野君な感じですが、メインで出てくるのはカルマ君
私立椚ヶ丘中学校は、全国屈指の進学校だ。
休み時間も机に向かっている生徒も多く、皆真面目に勉強に取り組んでいる。
そんな中、サボり常習犯の素行不良な生徒が1人いる。
不真面目な癖に成績は優秀なため、先生は彼のことを大目に見ているようだが、風紀委員としてそんな生徒を見過ごすわけにはいかない。
「2-D、赤羽カルマ君っ!! 起きなさい!!」
昼休み、私は屋上の扉を勢い良く開けて、気持ち良さそうに寝ている彼に向かってそう叫んだ。
カルマ君はというと、首だけ動かしてちらりとこちらを見て私の姿を確認すると、1つあくびをして再び目を閉じて眠ってしまった。
「……もうっ!」
私はカルマ君の方へとつかつかと歩み寄ると大声で名前を呼んだ。
「カ・ル・マ・君!!!」
「……一瀬ちゃん、うるさい」
「うるさい、じゃなくて!! カルマ君、午前の授業全部サボってたでしょう?」
「だってー、眠かったから」
カルマ君は相変わらず寝転がったままでそう答える。
「眠いからってサボっちゃ駄目なの! カルマ君もちょっとは浅野君を見習ってよ」
浅野君の名前を出した途端、カルマ君はうんざりとした表情を浮かべる。
「うわ、また出たよ浅野クン。一瀬ちゃんはほんと好きだね〜浅野クンの事」
「す、好きとかそういうんじゃなくて…! 浅野君は、すごいんだよ? この前だって全国模試は総合一位だったし、勉強以外にもスポーツも芸術もなんでも出来て、学外からも色んな分野で表彰されて――」
大尊敬している浅野君について私が熱弁していると、カルマ君は「はいはい」と聞き流して、また眠りにつこうとする。
「だから、起きてってばーっ!」
「えー」
「もう十分寝たでしょ!?」
「……一瀬ちゃんは、もっと寝たほうがいいんじゃない?」
「へ?」
「寝不足っぽい顔してる」
「! そ、そんな事……」
カルマ君は、妙に鋭い。
確かにここ最近は夜遅くまで勉強していて、睡眠をしっかり取れていなかった。
私が言い淀んでいると、カルマ君は笑みを浮かべて自分の隣の床をポンポンと叩いた。
「一瀬ちゃんも寝なよ。気持ちいいよ?」
「寝るわけないでしょ!」
「あ、じゃあ、一瀬ちゃんが寝てくれたら代わりに俺起きるから」
「だから私は寝ないって…!」
「じゃあ俺も起きない〜」
そう言って再びゴロンと寝転がるカルマ君。
「……ああもうっ!! 寝ればいいんでしょ」
「そうこなくっちゃ」
「ちょっと横になるだけだからね」
私はカルマ君の隣に腰を下ろすと、仰向けに寝転がった。
「ね、気持ちいいでしょ?」
「……」
太陽の光によって温められたコンクリートの床から、背中を伝ってじんわりと体に熱が伝わってくる。
(悔しいけど、気持ちいい……)
寝不足であることに加え、心地よい暖かさと、ちょうど食後だったこともあり、だんだんと頭がぼーっとしてくる。
「じゃあ、そのまま目瞑ってみようか」
「でも……」
駄目だと分かっていながら、悪魔の囁きを受け入れてしまった私は、そのまま心地よい眠りの世界へと落ちていった。
「おい、一瀬」
自分の名前を呼ぶ声に、重いまぶたをゆっくりと開ける。
ぼやけた視界がだんだんとはっきりしてきて、私の目に映ったのは、険しい顔をして私を見下ろしている浅野君の姿だった。
「浅野君……? ってうそ、寝ちゃってた!?」
うっかり屋上で寝こけてしまっていたことに気づき、慌てて体を起こすと黒いカーディガンがずり落ちた。
そのカーディガンの持ち主はというと、私の横でまだすやすやと眠っている。
浅野君は私からカーディガンを奪い取ると、カルマ君にバシッと投げつけた。
「起きろ、赤羽」
「なに……?」
やっとカルマ君も起きたようだ。
私は起き上がったカルマ君の肩を掴んでぐらぐらと揺らす。
「カルマ君!! 起きるって約束だったじゃない……!」
カルマ君はというと、私の言うことなど無視して浅野君の方へと視線を向ける。
「あれ、浅野君がいる。どうしたの?」
「それはこっちのセリフだ。なんでこんな所で2人で寝てるんだ」
浅野君は委員会の時間になっても現れない私を探しに来たらしい。申し訳ないことをしてしまった。
「ごめんね浅野君……! カルマ君に乗せられて……!」
「えー俺のせいにしないでよ。ぐっすり寝ちゃってた一瀬ちゃんにも非はあるよね?」
「うっ……」
何も言い返すことが出来ず言葉を詰まらせていると、浅野君の大きなため息が聞こえてきた。
「とにかく、委員会に行くぞ。皆待ってる」
「あ、うん……!」
浅野君の後に続いて歩き出すと、後ろから呑気なカルマ君の声が聞こえてきた。
「一瀬ちゃーん、また一緒に昼寝しようね〜」
「する訳無いでしょ!! 誰のせいで寝過ごしたと思って――」
「早く来い!」
もうちょっとカルマ君に文句を言ってやりたかったけれど、私は浅野君に無理やり腕を引っ張られ委員会へと連れて行かれたのだった。
風紀委員として見過ごせません! end
2017.1.19
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