ご機嫌ななめ(凛月)


今日は、なんだか凛月くんの機嫌が悪い。
ずっとふてくされたような顔をしていて、話しかけてもそっけない返事しか返ってこない。
昼休みも1人でさっさと教室を出て行ってしまった。
いつもであれば膝枕をねだってきたり、ご飯を食べさせてと甘えてきたりするのに、今日は一体どうしたというのだろう。

私は凛月くんを追いかけて、中庭へとやってきた。

「凛月くん」

「なに」

中庭の木陰で仰向けに寝ていた凛月くんは、目を閉じたままで短く返事をする。

「あの……何か、怒ってる?」

「別に怒ってない」

「そっか……。えっと、炭酸買ってきたんだけど、いる?」

「いらない」

「膝枕、しようか?」

「しなくていい」

「じゃあ……私の血、飲む?」

「……飲まない」

そう言うと、凛月くんはくるりと背を向けてそっぽを向いてしまった。
拒絶されているのを感じて、胸が苦しくなる。
初めて出会った頃に戻ってしまったようだ。

最初の頃は冷たくあしらわれることも多かったけど、少しずつ打ち解けて、仲良くなって、甘えてくれるようになって……。
そのことが、とても嬉しかった。

だけどもう、凛月くんは私を必要としてくれないのかもしれない。

そう考えると、どうしようもなく辛くて、気づいたらぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

「……っ」

「……なまえ?」

私が泣いていることに気づいて、凛月くんは目を丸くする。
まさかこんな事で泣くとは思っていなかったのだろう。
自分でも、少し冷たくされたぐらいで泣いてしまうとは思っていなかった。

だけどそのぐらい、私は凛月くんのことを好きになってしまっていたみたいだ。

凛月くんに泣き顔を見られたくなくて、その場から立ち去ろうと反対方向を向いて歩き出そうとしたけど、ぐいっと後ろから腕をひかれる。
そしてそのまま凛月くんに抱きしめられた。

「泣かないでよ」

「……ごめん、なさい」

「謝らなきゃいけないのは俺の方だと思うんだけど」

凛月くんは少し申し訳なさそうにそう言った。

「ちょっと、機嫌が悪かっただけだから」

「……どうして機嫌が悪かったの?」

「……。昨日……」

「昨日?」

「誰とデートしてたの」

「えっ? デート?」

「知らない奴と2人で買い物してたじゃん。あれ誰?」

私は昨日の事を思い返す。
昨日は確か……。

「もしかして、弟のこと?」

「は?」

「昨日は、弟と一緒に買い物行ってたよ」

「……」

凛月くんは、はぁーと大きなため息を吐いた。

「紛らわしいことしないでよ」

「ご、ごめん?」

「なーんだ。やきもち焼いて損しちゃった」

凛月くんは私を地面に座らせると、私の膝の上に寝転がった。
そして私を見上げて目を細めて笑う。

「やっぱり、お昼寝には枕が必要だよね」

「……凛月くん、機嫌直った?」

「なまえが、俺に冷たくされたら泣いちゃうぐらい、俺の事好きだって分かったからね」

「それは……」

「否定しないんだ?」

「り、凛月くんだって、やきもち焼いてたくせに」

「だって、俺の枕を誰かに取られたら嫌だし」

枕呼ばわりされている事には少し不満だけれど、それでも凛月くんに必要とされることが嬉しかった。

「ねぇなまえ、血くれるんでしょ?」

「ええっ!?」

「さっきくれるって言ったよね?」

「でも凛月くん要らないって、」

「気が変わったの。ね、いいでしょ?」

そうしてまた私は凛月くんに絆されてしまう。
でもそれが心地良いと思ってしまうのだから、もうどうしようもない。



2017.04.30



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