「おーい、慧!」
「金造?珍しく朝早いね。」
「迎えに来てやったんに、なんやねん、その言い草。」
「あはは、ごめんて。お迎えありがと。」
玄関先でのやり取りは幼馴染の志摩金造とのもの。小さな頃からご近所で同い年だったこと、祓魔が関わっているという特殊な家庭環境もおそろい、とのことで仲良くなるのは必然的だった。今日は非番だという金造の誘いで久々に志摩家にお邪魔する予定である。京都明王陀羅尼宗、僧正頭志摩家の当主八百造さんの四男で、京都出張所警邏二番隊隊員、中二級仏教系祓魔師。肩書きに反して、金造の名前の如く金髪に染め上げた目の前の男は、ただの単純馬鹿である。よく詠唱騎士の資格取れたよね、なんて言った日には拗ねてめんどくさいので心の中にしまい込んでいる。
「みんなと会うん久しぶりや。弓ちゃん元気にしとるん?」
「元気有り余りすぎるくらいや。」
なんて喋りながらもあっという間に目的地についてしまった。ご近所なのに久しぶりなのはお互いに忙しい身だから、である。金造は肩書きの通り京都出張所での任務、私は神社にくる依頼や正十字騎士団から直接来る依頼を消化しているから。
「お邪魔しま…」
「慧姉!」
「おっふ。大きなったね、弓ちゃん…もうお姉ちゃん腰砕けるか思うたわ。」
「あほ度も増したけどな」
「金兄には言われたない!」
「なんやと!!!!」
「はいはい、やめーや。弓ちゃん、これ水羊羹。あとでみんなで分けてくれる?」
お邪魔する前に突然腰辺りに突撃タックルを受け蹌踉めいたところをさり気なく金造が支えてくれたので転ぶことこそなかったが、衝撃の正体を見て思わず発育良好な女の子に婆くさい発言をしてしまった。流れるように兄妹喧嘩が勃発しかけたものの上手くあしらうのはいつも自分の役目だと自負している、持ってきた差し入れの紙袋を金造の妹である弓ちゃんに手渡して、再度お邪魔しますえ、と口上してから勝手知ったる志摩家に上がらせてもらった。
「柔造さんは?今日もお仕事?」
「おん。なかなか揃って休みっちゅう訳にもいかんしな。お前も急がしそうやないか、ついこの前も東京の方に行っとったやん。」
「あー。騎士団の依頼やったんよ。指名やったし、断れんかったわ。」
近況報告をしながらぐだぐだと時間を費やしていると、金造の持つ携帯から着信音が鳴り響く。なんやねん、と不機嫌そうな金造がディスプレイを見た途端に険しい表情になったのを見て、あぁ、こんな真面目な表情も出来るんかーなんて不躾に思っていると、柔兄からや、と発信元の名をあげる様子に首を傾げる。
「仕事中なんよね?」
「もしもし、柔兄?どないし…はぁ?!おとんが!?…おん、すぐ行く」
慌てたような声、そしてすぐ行くと告げそのまま立ち上がる金造の様子はただ事ではなく、思わず眉間にしわを寄せて金造を見上げる。
「どないしたん」
「なんかよおわからんけど、おとんが倒れたって。襲撃されたとか言うてたわ。すまん慧、ちょっと行ってくる」
「待って、私も行く。」
「はぁ!?」
「上二級祓魔師やで、なんか役に立てるかもしれんし。私かて八百造さんが倒れたなんて言われて待ってられへん。」