ぼくの席

 僕はよく隅に近い席に座っていた。
決して会話の中心にははいらないけど大抵の言葉は耳に入る。
そんな丁度いい場所が僕にとって安心できる場所だ。そして、なによりも


「…ねぇ名前
君はもう少し食べたほうが良いような気がするんだけど…」

「えへへ…サシャが美味しそうに食べてくれるからつい…」

彼女が近くにいるからだ。
もそもそと乾いたパンを咀嚼しながら考える。
こんなこと思うのは失礼だとわかっているけど、子供だと見紛うほどに小さな身体に僕と同じで流されやすい性格をしている名字を放っておくことができなくて、僕はライナーと離れてでも此処に座り続けている。

「うん……君が優しいのはよくわかってるよ」
「それでも、訓練で体力を消費しているんだから少しでも食べなくちゃ」

僕の言葉に彼女は困ったように眉毛を下げる。
怖い顔でもしていただろうか?さり気なく眉間に手を当ててみてもシワは寄っていない。
単純に彼女の自虐心を刺激してきまっただけなのかもしれない。


「ありがとう。今度からは気をつけるね…」

先程まで見えていた困り顔は彼女が俯いたことによって見えなくなってしまった。
これ以上お節介を焼くのは面倒くさがられるかもしれないと僕は饒舌になりかけた口を閉ざすために最後の一欠片を口のなかへ放り込んだ。





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