面影を探し続けるなんて私にはきっと出来ない(ウォロ)
*メイン依頼26に関するネタバレあり。
*イッシュ地方出身主
▽▼▽
「逃げるとは不甲斐ない! お前がアルセウスに挑むというから力を貸してやったのに!」
男の声が空に響く。
その言葉はなまえへ向けられたものではないが、彼女はどこかひっかかりを覚えた。
「いつかアルセウスを従えてみせる!」
恍惚とした表情で語る瞳に、なまえは映っていない。
その表情になまえはこの世界に来る前の元の世界で、仲良くしてくれていた近所のお兄ちゃんのことを思いだした。
別にお兄ちゃんとなまえの姿や考えが似ているというわけではない。
自分が目の前にいるにも関わらず、別の何かを見ている。その姿が似通っていた。
「何十年 何百年かかったとしても!!」
ウォロは一人そう言い捨てて、なまえとすれ違う。
『あいつ、「サヨナラ」って言ったきり。どこかに行っちゃってさ。それからずっと探してるんだけど見つからないんだ』
トウヤお兄ちゃんの言葉が頭をよぎる。
「……えぬ、さん?」
「は?」
独り言のつもりだった言葉は、きちんとウォロの耳に届いたらしい。
そのまま無視して立ち去ってもいいのに、何が気になったのか足を止め、顔をなまえの方へ向けている。
「えぬさんって誰です?」
「え、」
誰と聞かれれば答えにくい。
元の世界で住んでいたイッシュ地方で、一時世間を騒がせたプラズマ団の王様。
トウヤお兄ちゃんに聞いた話では、
ポケモンをトモダチと呼ぶ不器用なヒト。
実際会ったことがあるわけではない。
人から話を聞いた話でしか彼を知らない。
そんな人間のことを、どう話せというのか。
「ふーん、ジブンには話せませんか。さすが余所者は傲慢ですね」
「なっ!」
どう返すのが正解か考えている間に、ウォロは無言を勝手に解釈したらしい。
「ち、違います!ただ、うーん。説明が難しくて」
「なんなんですかソレ。わざわざこんな場面で名前を呼ぶなんて大事なヒトなんじゃないですか?」
「いや、それはないですよ……。会ったこと無いですし」
「はぁ?」
ますます意味が分からないとウォロは顔を顰める。
こんな少女のことなんて無視して立ち去ってしまおうと思っていたのに、聞こえてきた言葉が気になって立ち止まってしまった。今更立ち去るのもやりにくい。
「会ったことない人の名前を呼んだんですか?」
「いや、呼んだというか、今ふと思い出したってだけで」
なまえもウォロもなんで今こんな話を?と思い始めているが、口から出た言葉は消せない。引き返せない。
「あー、うーん、ほんとになんとなくってだけで、あの、Nさんはポケモンと会話が出来たって、えっと、知り合いのお兄ちゃんから聞いたことがあって、今のウォロさん見てたなんかその話をふと思い出して、それで、」
「気が付いたらえぬさんと口からでていた?」
「えぇ、まぁ、そんな感じです!なんなんですか、こんな話!」
「……。」
「無言?!」
自分はしどろもどろながらも説明したというのに、ウォロは肩を震わせているばかり。
なんなんだこの人は。と無性になまえは腹が立ってきた。
「変な人だ、アナタは」
「今のウォロさんに言われたくないです」
「でもまぁアナタの言うえぬさんに興味がわきました」
「は?」
「アナタの知っているえぬさんについて、もっと話を伺っても?」
数分前の険悪な雰囲気はどこへ行ったのか。
背面取りの方法をなまえへ教えた時のような雰囲気を纏わせて、ウォロはなまえへ手を差し出した。
「だから全然知らないんですってば」
小言を言いながらもなまえはその手をとった。
「それにしても寒いですね」
「ウォロさんがそんな格好してるのが悪いと思いますけど……。そんなに寒いなら村に戻ってイモモチ食べましょうよ」
「……悪くないですね」
青年と少女は歩いてきた道を戻る。
洞窟へ足を踏み入れる直前、少女は後ろを振り向いた。
……トウヤお兄ちゃん、私はお兄ちゃんみたいに面影を追わなくて済みそうです。
*イッシュ地方出身主
▽▼▽
「逃げるとは不甲斐ない! お前がアルセウスに挑むというから力を貸してやったのに!」
男の声が空に響く。
その言葉はなまえへ向けられたものではないが、彼女はどこかひっかかりを覚えた。
「いつかアルセウスを従えてみせる!」
恍惚とした表情で語る瞳に、なまえは映っていない。
その表情になまえはこの世界に来る前の元の世界で、仲良くしてくれていた近所のお兄ちゃんのことを思いだした。
別にお兄ちゃんとなまえの姿や考えが似ているというわけではない。
自分が目の前にいるにも関わらず、別の何かを見ている。その姿が似通っていた。
「何十年 何百年かかったとしても!!」
ウォロは一人そう言い捨てて、なまえとすれ違う。
『あいつ、「サヨナラ」って言ったきり。どこかに行っちゃってさ。それからずっと探してるんだけど見つからないんだ』
トウヤお兄ちゃんの言葉が頭をよぎる。
「……えぬ、さん?」
「は?」
独り言のつもりだった言葉は、きちんとウォロの耳に届いたらしい。
そのまま無視して立ち去ってもいいのに、何が気になったのか足を止め、顔をなまえの方へ向けている。
「えぬさんって誰です?」
「え、」
誰と聞かれれば答えにくい。
元の世界で住んでいたイッシュ地方で、一時世間を騒がせたプラズマ団の王様。
トウヤお兄ちゃんに聞いた話では、
ポケモンをトモダチと呼ぶ不器用なヒト。
実際会ったことがあるわけではない。
人から話を聞いた話でしか彼を知らない。
そんな人間のことを、どう話せというのか。
「ふーん、ジブンには話せませんか。さすが余所者は傲慢ですね」
「なっ!」
どう返すのが正解か考えている間に、ウォロは無言を勝手に解釈したらしい。
「ち、違います!ただ、うーん。説明が難しくて」
「なんなんですかソレ。わざわざこんな場面で名前を呼ぶなんて大事なヒトなんじゃないですか?」
「いや、それはないですよ……。会ったこと無いですし」
「はぁ?」
ますます意味が分からないとウォロは顔を顰める。
こんな少女のことなんて無視して立ち去ってしまおうと思っていたのに、聞こえてきた言葉が気になって立ち止まってしまった。今更立ち去るのもやりにくい。
「会ったことない人の名前を呼んだんですか?」
「いや、呼んだというか、今ふと思い出したってだけで」
なまえもウォロもなんで今こんな話を?と思い始めているが、口から出た言葉は消せない。引き返せない。
「あー、うーん、ほんとになんとなくってだけで、あの、Nさんはポケモンと会話が出来たって、えっと、知り合いのお兄ちゃんから聞いたことがあって、今のウォロさん見てたなんかその話をふと思い出して、それで、」
「気が付いたらえぬさんと口からでていた?」
「えぇ、まぁ、そんな感じです!なんなんですか、こんな話!」
「……。」
「無言?!」
自分はしどろもどろながらも説明したというのに、ウォロは肩を震わせているばかり。
なんなんだこの人は。と無性になまえは腹が立ってきた。
「変な人だ、アナタは」
「今のウォロさんに言われたくないです」
「でもまぁアナタの言うえぬさんに興味がわきました」
「は?」
「アナタの知っているえぬさんについて、もっと話を伺っても?」
数分前の険悪な雰囲気はどこへ行ったのか。
背面取りの方法をなまえへ教えた時のような雰囲気を纏わせて、ウォロはなまえへ手を差し出した。
「だから全然知らないんですってば」
小言を言いながらもなまえはその手をとった。
「それにしても寒いですね」
「ウォロさんがそんな格好してるのが悪いと思いますけど……。そんなに寒いなら村に戻ってイモモチ食べましょうよ」
「……悪くないですね」
青年と少女は歩いてきた道を戻る。
洞窟へ足を踏み入れる直前、少女は後ろを振り向いた。
……トウヤお兄ちゃん、私はお兄ちゃんみたいに面影を追わなくて済みそうです。