月が綺麗ですね(ウォロ)
ゴーストタイプのポケモンが土地を支配する夜。
ある山の上でウォロはなまえを見かけた。
「こんばんは、何をされてるんですか?」
神殿での一件があったものの、不思議なことに彼女との関係は以前とさほど変わりがない。
変わったことといえば、ウォロが本心を隠さなくなったことくらいだろうか。
「こんばんは、ウォロさん。リングマを進化させようと思いまして」
「なるほど」
彼女の横に立っていたリングマが気になっていたが、理由を知ってウォロは頷いた。
「道具はありますか?」
「無いって言ったらウォロさん売ってくれるんですか?」
「ふふ、あいにくピートブロックは品切れでして」
「品切れのもの多すぎません?」
いつぞやで木材を持ち合わせていなかったことを未だ覚えているらしい。なまえはぷくりと拗ねた表情を見せる。
しかし、その表情も一瞬で、すぐにいつもの顔に戻ると
「進化するの見て行かれますか?」
と話をもとに戻す。
「えぇ、せっかくですし」
「わかりました。……じゃあ、リングマよろしくね」
リングマがなまえからピートブロックを受け取ると、リングマの周りに風が起き、姿形が変化する。
地が揺れ、木々がざわめき、ビリビリとした感覚を肌で感じて暫く。それがおさまると、リングマが立っていた場所にはガチグマが居た。
「成功だ!よかった〜!ガチグマ、これからもよろしくね」
なまえの言葉に応えるようにガチグマが一声鳴くと、なまえは嬉しそうに目を細め、ガチグマをモンスターボールの中へ収めた。
「以前やろうとしたら駄目だったので、今日成功してよかったです」
「おや、アナタでも失敗することがあるんですか?」
「当たり前です、人間ですよ?」
ウォロの嫌味に気が付きながらもなまえは冷静に言葉を返す。そんな彼女の態度に、ウォロはため息をついて、空を見る。
天にはまんまるとした月が地上を見下ろしていた。
「月が綺麗ですね」
ウォロは気づけば思ったことを言葉にしていた。
その言葉を聞いた彼女は、目を丸くさせたかと思うと、いたずらっ子の笑みを浮かべる。
「えぇ、死んでもいいくらいに」
「……は?」
話が噛み合わないではないか。とウォロが驚いた表情でなまえを見る。そんなウォロの顔を見て、余計になまえはクスクスと笑うのだ。
「古代シンオウ人の末裔さんでも意味がわかりませんか?」
「は?いや今それ関係あります?」
ウォロとしては、月がきれいだなんて理由で目の前の少女に死んでほしくないのだ。……死んでもらったほうが自分の目的達成には良いのかもしれないが、死んでほしくない理由は個人的理由なので口を噤む。
「ウォロさんならいつか分かりますよ。きっと。
私の言葉の意味が分かるまで死なないでくださいね」
「ならアナタも答え合わせできるまで死なないでくださいね」
まるで呪いの言葉だな。
誰に言うまでもなく心の中で吐き捨てて、
ウォロは月を見上げた。
*初出:20220214Twitter
ある山の上でウォロはなまえを見かけた。
「こんばんは、何をされてるんですか?」
神殿での一件があったものの、不思議なことに彼女との関係は以前とさほど変わりがない。
変わったことといえば、ウォロが本心を隠さなくなったことくらいだろうか。
「こんばんは、ウォロさん。リングマを進化させようと思いまして」
「なるほど」
彼女の横に立っていたリングマが気になっていたが、理由を知ってウォロは頷いた。
「道具はありますか?」
「無いって言ったらウォロさん売ってくれるんですか?」
「ふふ、あいにくピートブロックは品切れでして」
「品切れのもの多すぎません?」
いつぞやで木材を持ち合わせていなかったことを未だ覚えているらしい。なまえはぷくりと拗ねた表情を見せる。
しかし、その表情も一瞬で、すぐにいつもの顔に戻ると
「進化するの見て行かれますか?」
と話をもとに戻す。
「えぇ、せっかくですし」
「わかりました。……じゃあ、リングマよろしくね」
リングマがなまえからピートブロックを受け取ると、リングマの周りに風が起き、姿形が変化する。
地が揺れ、木々がざわめき、ビリビリとした感覚を肌で感じて暫く。それがおさまると、リングマが立っていた場所にはガチグマが居た。
「成功だ!よかった〜!ガチグマ、これからもよろしくね」
なまえの言葉に応えるようにガチグマが一声鳴くと、なまえは嬉しそうに目を細め、ガチグマをモンスターボールの中へ収めた。
「以前やろうとしたら駄目だったので、今日成功してよかったです」
「おや、アナタでも失敗することがあるんですか?」
「当たり前です、人間ですよ?」
ウォロの嫌味に気が付きながらもなまえは冷静に言葉を返す。そんな彼女の態度に、ウォロはため息をついて、空を見る。
天にはまんまるとした月が地上を見下ろしていた。
「月が綺麗ですね」
ウォロは気づけば思ったことを言葉にしていた。
その言葉を聞いた彼女は、目を丸くさせたかと思うと、いたずらっ子の笑みを浮かべる。
「えぇ、死んでもいいくらいに」
「……は?」
話が噛み合わないではないか。とウォロが驚いた表情でなまえを見る。そんなウォロの顔を見て、余計になまえはクスクスと笑うのだ。
「古代シンオウ人の末裔さんでも意味がわかりませんか?」
「は?いや今それ関係あります?」
ウォロとしては、月がきれいだなんて理由で目の前の少女に死んでほしくないのだ。……死んでもらったほうが自分の目的達成には良いのかもしれないが、死んでほしくない理由は個人的理由なので口を噤む。
「ウォロさんならいつか分かりますよ。きっと。
私の言葉の意味が分かるまで死なないでくださいね」
「ならアナタも答え合わせできるまで死なないでくださいね」
まるで呪いの言葉だな。
誰に言うまでもなく心の中で吐き捨てて、
ウォロは月を見上げた。
*初出:20220214Twitter