「それで? 何時身を固めるんだ? 団長はギンガ団内から選んだほうがいいとか言うかもしれんが、お前に決めている人がいるなら私は応援する」
 シマボシさんの言葉になまえはたじろいだ。

 
 図鑑を完成させてしばらく経った。
図鑑を完成させてからというもの、周りの人間からやたらと結婚の話をされるのだ。
今居る時代の感性では、なまえの年齢で結婚するのは当然なのかもしれないが、なまえは令和を生きていた人間である。
そんな彼女に結婚だなんだというのは縁がなさすぎる話で、なまえは困惑していた。

 「どうしよう………」
ムラの人たちに結婚の話をされても、なんだなんだと話をかわす事ができていたが、これまで散々お世話になったシマボシさんに言われては考えてしまう。
 当初の目的を果たしても元の世界に帰れないなまえに対し、「ここに居ていい」と居場所を改めて与えてくれたのはシマボシさんに他ならない。そのことに関しては感謝しかない。
しかし、これとそれとは話が別だとなまえは思う。

「結婚、かぁ………」
「予定があるんですか?」
「ひぃぁ!?」
 はじまりの海の海辺で座り込んでいたなまえの後ろから声をかけてきたのは、ウォロ。
後ろから声をかけられることには慣れたが、今回は独り言を聞かれた恥ずかしさで驚いてしまった。
「アナタは何度も驚いてくれるから面白いですよ」
「そういうの今はいいです……」
「あぁ、結婚。でしたっけ?」
「うっ……」
「相手は?いつ頃婚姻の式を?」
「うぇ?」
 意外となまえに顔を寄せて、ぐいぐい問い詰めてくるウォロに、なまえは戸惑う。
「あ、相手がいないので困ってるんです」
「アナタなら選びたい放題でしょう? なにせ、ヒスイ地方の救世主様なんですから」
「そ、そんなこといわれても……、私のいた世界ではこの歳で婚約なんて早すぎるんですよ」
「なるほど……」
 ウォロはなまえの話を聞き、うーんと考えるふりをする。
「ではこうしましょう!ジブンがアナタの恋人になるというのは?」
「はぁ!?」
「もちろん、フリですよ。アナタと恋人とか嫌ですよ。
しかしまぁ、ジブンもこの歳で一人身なものでギンナンが煩いのです。なので恋人のフリ、です。
アナタとジブンどちらかに、真に好きな人が出来たら別れるとか如何です?」
 元の世界で流行ったドラマのような話だなと考えながらもなまえは頷く。
まぁ、短期契約かと思えばいいか………。


そう考えていたなまえは、数年後自分がウォロと婚約することになるとは全く考えていなかった。