*リッパーの敬礼に鯖が「戻って」モーションしたら手重ねてるみたいになるじゃんって、居館写真大会していた時に、撮った写真を元に書いた話(前提が長い)


▽▼▽

「踊ってくれませんか?」
「……え?」

突然ノートンから誘われた招待を快諾したナワーブは、目の前の状況が分からず、慌てふためいた。
自分は何故か居館の階段を数段登った場所にいて、その下にはリッパーが片膝をつき、手をナワーブへ差し出している。
「あ、ちょっとナワーブ、一歩後ろに下がってくれない?」
「は?」
ふと階段の手すりから下を見れば、ノートンが背中に埃がつくのも気にせず寝っ転がっていた。ちょいちょい、と手で後ろへ下がるように言われ、その通りに身体を一歩後ろへ。
「…うん、よし。じゃあもう一回」
「何が?」
ナワーブの質問に答える人は誰もなく、目の前のリッパーが先ほどと同じように片膝をつき、手をナワーブへ差し出した。
「えっと、?」
手を出され、どう返すべきかわからない。
そう言えば居館に入ってすぐ踊ってくれませんか?と言われた気がする。
……踊る?自分が?
「ちょっと、ナワーブ。ちゃんとしてよ」
「いや、いきなりどうしろと」
じろりとノートンに睨まれるが、何を二人が求めているのかナワーブにはわからない。
素直にそのことを言うと、「やれやれ」と第三者の声が聞こえてきた。
ノートンが寝転んでいる部屋の奥、一人用の椅子に腰かけて本を読んでいたルカ・バルサーである。
「私が見本を見せよう」
「?」
今度はルカに手招きされて、ナワーブは階段を降りる。
そして元々ルカがいた椅子に腰かけた。
「いや、本当になんなんだよ」
何故三人がノートンの居館にいるのか、何をしているのか、一切説明がない。
階段を登り、先ほどまでナワーブが居たところに立ったルカを見ながら、ナワーブはぼんやりと三人の姿を眺めた。

「すまないね、リッパー。私が相手でも?」
「まぁ……ふむ、思っていた以上にナワーブくんが鈍感でしたからね」
「ん」

口角をあげながら、ルカはノートンに合図を送る。それにノートンが頷いて、再び床に寝っ転がった。

「……うん、ルカもう一歩下がって」
「こうかな?」
「そうそう」

リッパーは場所を動かず、ルカが一歩ずつ場所を微調整する。ノートンが指で丸を作った。準備はできたらしい。

「おまたせ、リッパー。何時でもどうぞ」
「では。……私と踊っていただけませんか?」
ナワーブにしたように、リッパーがルカの方を向いてかしずき手を差し出す。
ルカは、リッパーの大きな手に自分の手を重ねた。
「私で良ければ喜んで」

二人の動きが終わり、元の立った姿勢に戻る。二人は同じタイミングでノートンへ声をかけた。
「どうだった?」「どうでした?」
「ん‥、良い感じ」
ルカとリッパーがその言葉を聞いて、ノートンの両隣に移動する。
三人で何やら見ているようだ。仲良さげな様子にじっとできず、ナワーブは三人の元へそろそろと近づいた。
「…何してんだよ」
「写真撮ってる」
「…?」
ノートンの言葉に首を傾げたナワーブに、実物を見せた方が早いだろうとルカがノートンの持っていたカメラを見せる。
カメラの画面には、ちょうどリッパーの手にルカが手を置き、ダンスに応える姿が映っていた。
「タイミングいい感じでしょ」
「なるほど……ってこれが撮りたかったなら先に教えてくれよ」
「言わなくても分かるかなって」
当然とでも言いたげなノートンの頭をナワーブは小突く。
「じゃあナワーブくん、今度は上手にできますよね?」
「え、ルカと撮ったんだから十分だろ」
「写真くらい撮られておきなよ」
ルカに背中を押され、渋々とナワーブは最初に立った場所へと向かう。
リッパーも鼻歌まじりに階段下へ移動する。仮面のせいで表情は分からないが、機嫌が良いのは誰の目から見ても明らかだ。

「探鉱者、もう一枚よろしいですか」
「あぁ、そのつもり。ナワーブもう二歩前に立って」
「お、おぅ」
「いいよ」
「……では、ナワーブくん。私と踊っていただけませんか」

……ところで何故ノートンはこんなに素直に写真を撮っているのだろう。別に写真が趣味でもなんでもなかったはずだが。
ふと思い浮かんだ疑問を払拭してくれる人は誰もおらず、ナワーブは生暖かいルカとノートンの視線を左の方から感じながら、おずおずとリッパーの手を取った。


 写真を無事撮り終わった後、ナワーブは試合があるからとノートンの居館から出ていってしまった。残された三人は、カメラを覗き込み撮った写真を確認していく。
「こういうのはどう?」
「……うーん、二枚目の方が私好みですね」
「了解。じゃあ現像しておくね」
「お願いします」
リッパーとノートンのやり取りを聞きながら、ルカはにやりと微笑んだ。
「全く、君は金になることならなんでもするね」
「なんのことだか。僕は、ナワーブとの2ショット写真が欲しいなんて言うリッパーさんの頼みを聞いてあげただけだよ。……ところでお代は何時払ってくれるのかな?」
ノートンの質問には答えず、リッパーは「うーむ…」と悩みながら居館を出ていった。
リッパーが居なくなった場所を見つめながら、ルカが呟く。
「……君、はぐらかされてない?」
「まだデータは僕が持ってるし、あいつから金をもらわない限り僕が写真を渡さなければ良い話でしょ」
ルカと同じ方向を睨みながら、ノートンが唇を尖らせた。


*初出:20210321Twitter