*COA4衣装の探囚
*「ちょっと仲の悪い探囚」ってリクエスト頂いて書いたやつです。

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あるレースチームが所有しているガレージ。
その中から二人の男が言い合う声が聞こえてきた。

「君はどうしてこの部品を壊すような運転をするんだ!」
「レースに勝つためには仕方ないだろ!」

言い合っているのはレーサーのノートンと、メカニックのルカ。
チームメンバーは二人の口論など見慣れた様子。デミとマイクは呆れた口調で、二人のやり取りを見守っている。
「まーた、やってんのあれ」
「私たちには止められないよ、あれ」
ノートンはレースで勝つために車を勢いよく走らせることが多々ある。そのため、車体に傷がつくのも日常茶飯事だ。
ルカは予算内で車を修理する必要があるため、貴重な部品部を壊されるのが気に食わない。
「君の勝率が私達チームについてくれるスポンサーが関わっているのは私にもようく理解している。でもね、危ない行動で余計な場所を修理させないでくれ」
「その勝つために出来た傷なんだから直すのは君の仕事でしょ?」
「あの、お二人はいつもあんな感じで…?」
チームの取材に来ていたビクターが小声でデミに訊ねると彼女は口を大きく開けて高笑いする。
「いいの、いいの!あいつらなんだかんだ言って仕事はきちっとやる奴等だから!」
「そ、そういうもんなんですか…」
デミの言葉を手帳に書き込むビクターの姿に、マイクは真面目だねぇと笑った。
「……そっちは何笑ってるのさ」
「私たちを見世物にするなら見物料もらおうかな」
デミの声で、三人が見ていることに気が付いたらしい。ノートンとルカが揃って三人の方へ顔をむけた。
「見世物ったってアンタらしょっちゅう言い合ってんじゃん。どちらかと言うと私たちの方に見せられ料がほしいけど」
「見せられ料?何それ」
「見せ物料があるなら見せられ料もあるでしょ。知らないけど、ハハハ!」
「デミもう酔ってんの?」
「酒がないのに酔えるわけないだろ!ほら、ノートン!次あんたがインタビュー受ける番だよ」
「あ、はーい」
ノートンはルカから離れると、ビクターの方へ歩み寄る。同じタイミングで、ルカは他のメカニックに呼ばれ、ガレージの奥へ引っ込んでいった。


 「あ〜、やっぱりエンジン音最高」
数時間後、インタビューを終えたノートンが自主練の為に車を走らせていた。それを遠くから見守るのはルカ。うっとりとした表情で運転するノートンの方を見つめている。
「ルカって運転してるノートンのこと好きだよねぇ」
今日の仕事は終わったというかのように、今度は手にビールジョッキを持ったデミがルカに向かって言うも、彼はきょとんとした表情。
「私が見ているのはノートンじゃなくて、彼が運転する車の方。彼自身に興味は一切ないよ。そこは間違えないでくれ」
「はいはい」
「あぁ、でも」
「ん?」
「ここのチームメンバーだと彼の運転する車のエンジン音、機械音が一番美しいな。惚れ惚れする。彼の車は幸せだなと思うよ。……まぁだからって傷を増やされるのを許すのとは別だけど」
「……ん?」
それ、本当にノートンに興味ないって言いきれるのか?
デミは喉元まで出かかった言葉をギリギリのところで食い止め、代わりに酒を煽る。
「まぁあんたらがそれで満足してるならいいけどさ」
「デミはさっきから何を言ってるんだ?」
ぶつぶつと呟くデミの言葉の意味が分からないと、ルカは首を傾げた。


*初出:20210615Twitter