宝生永夢が召喚されて数日経った。
 彼はすっかりカルデアに慣れたようで、職員やサーヴァント問わず色々な人と交流している姿がすでに確認されていた。特に一緒にいるのは、立香とマシュを除く人たちの中で最初に挨拶をしたオジマンディアスである。限られたサーヴァントとしか交流しない彼にしては珍しく、オジマンディアスは宝生のことを気に入ったようで事あるごとに自ら声をかけていた。

「宝生!ここにいたか!」
 今日もそれは例外ではないようで、朝食堂に入ってすぐオジマンディアスは彼を見つけると大きな声で声をかけた。カルデアにオジマンディアスの声量を知らぬものはいないがいきなり傍で大声を出されて驚かぬ者はいない。実際たまたま彼の傍にいた職員がびくりと肩を震わせた。声をかけられた宝生は朝餉を食べている途中であったが、オジマンディアスの姿を確認すると椅子から立ち上がり軽くお辞儀をした。
「オジマンディアスさん、おはようございます」
「うむ、おはよう」
 宝生がお辞儀をしている間にオジマンディアスは移動しており、宝生の横の空いている席に座り込んだ。
「朝から素敵な挨拶ありがとうございます。大きな声で挨拶されるのはこちらもいい気持ちがするので嬉しいのですが、周りの人が驚いてしまうこともあるので気を付けてくださいね」
「む…」
 二人の近くに座っていた者たちが一人また一人と席を移動し始めた。オジマンディアスに直接注意したとして彼が素直に言うことを聞こうとするのはカルデアに二人しかいない。そして肝心の二人は今食堂に居ない。オジマンディアスが宝生に対しどのように対応するかまだ分からないができればあまり巻き込まれたくない。そう考えてしまうのは仕方のないことだ。
「しかし、宝生。貴様さっき、ついさっきだぞ、大きな声で挨拶されるのは良いことだと言ったではないか。何が不満なのだ?」
「はい、大きな声で挨拶されるは嬉しいです。良いことだと思います。しかし場所に応じて適した声の大きさで挨拶できるのが、えっと……挨拶できるのが真に上に立つ者だと僕は考えています!」
「…ほう」
 周りの人たちがそわそわとしながら二人の会話を見守っていることなぞ露知らず。二人の会話は進んでいく。
「オジマンディアスさんは、歴代のファラオの中でも特に優秀で民から慕われていた方だとお聞きしました。そんな貴方が他の人に対する気遣いができないわけありません」
「なるほど、ファラオたる余を説得しようとするか、いいぞ許す!貴様のその心意気気に入った!」
「気に入ってくれたなら嬉しいですけど、声がでかいですって…」
 元々オジマンディアスが宝生を気に入っていたのもあってか、先ほどまで漂っていた少しピリッとした感覚が周囲から消えた。それをサーヴァントだけでなく職員も感じたようで離れていた者たちはそろそろと元の場所に戻った。食堂の雰囲気が平常に戻ったころ、立香が食堂へ入ってきた。
「おはよう。宝生永夢いる?」
「は、はい!僕はここです!」
 名を呼ばれ慌てて返事をすると、立香が宝生の元へやってきた。宝生の前に立つ立香はどこかわくわくとした面持ちで、思わず宝生は横にいるオジマンディアスの方へ眼を向けた。オジマンディアスは宝生の視線に気づくと、片方の眉だけ器用にあげた。どうかしたか?とでも聞いているようだ。宝生は首を小さく横に振ると立香の方へ向き直った。立香は宝生たちの行動に少し違和感を覚えたようだが、あまり気にするとこなく要件を話し始めた
「シュミレーション室が使えるようになったよ!」
「えっ、ほんとですか!」
 宝生永夢が召喚されたとき、立香はすぐにでも彼をシュミレーション室での戦闘訓練に参加させようとしていたのだが、運悪くその日部屋を使用していた者の宝具がシュミレーション室の要となる機械に当たって使えなくなっていたのだ。それが先ほど技術班の職員の働きによって修理されシュミレーション室は元通りに使えるようになった。立香は仮面ライダーという枠に属す宝生永夢の戦いを早く見てみたくて仕方がない。
「うん、ほんと!早速だけど今からでもどうかな?あともし一緒に模擬演練したい人がいたらその人にも声かけるけど…」
「余が共に行くぞ!」
「オジマンディアスさんが一緒なら心強いです!よろしくお願いします」
 宝生が頭を下げると、気分をよくしたオジマンディアスは満足そうに頷いた。
「オジマンディアスと…もう一人きてほしいところだけどどうしようか…」
 立香が顎に指を添え悩んでいると、三人の近くに別の人物が声をかけてきた。
「なんだかおもしろそうな話してるじゃん?」
 ライダーの方の坂田金時だ。
「あ、いいところに。金時今から暇?シュミレーション室で永夢の初演練するんだけど一緒にどう?」
「おお!そういうことならもちろんいいぜ!なんでもお前仮面ライダーっていうんだろ!一度一緒に戦ってみてぇとは想ってたんだ!こんなに早く機会が回ってくるとはなぁ!よろしくな!」
「坂田さん、よろしくお願いします」
「よし、じゃあメンバーも決まったし出発!」
片手を上に上げ楽しそうな立香を先頭に三人はぞろぞろと付いていく。
「あ、そうだ、立香さん」
 シュミレーション室に入り、いざ。という時 宝生が声をかけた。
「僕に指示する際にはまず最初にスキルの使用をお忘れなく」
「え?」
 詳細を聞く前にシュミレーターは作動した。
「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
 戦闘が始まった途端宝生の声が大きく響く。召喚されてからずっと丁寧な言葉遣いであった彼が急に荒々しい物言いに変わったため立香は目を丸くするが、バーサーカーである性質が関係しているのかもしれないと自身を納得させた。
 敵はバーサーカークラスの魔獣たち。メンバーの誰もがクラス相性は良いが今回は宝生の戦い方を知るのが目的であるため彼をメインで動かすことは決めていた。
「えっと、永夢スキル発動お願い!」
「了解!」
 立香が指示を出すと、宝生は徐におもちゃみたいな黄緑色の何かを腰に巻き付けた。
「は?」「む?」「なんだ?」
 見慣れぬものの登場に、立香、オジマンディアス、金時はそれぞれ言葉を漏らす。
三人の視線など気にせず、宝生はこれまたおもちゃのようなピンク色のものをどこからか取り出すとボタンを押す。

マイティアクションX!

「変身!」
 大きな音が響いたと思うと、宝生はそれを先ほど腰に巻き付けた黄緑色の何かに突き刺した。すると宝生の周りに何やら不思議な絵が描かれたパネルたちがぐるぐると彼を取り囲む。宝生は目の前にきたこれまたピンクのパネルをタッチした。そして再び辺りには聞きなれない音声が響く。

ガシャット! 
レッツゲーム! メッチャゲーム!
ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?
アイム ア カメンライダー!!

「…え?」
 何が起こったのか分からず立香は目を瞬いた。宝生が立っていたはずの場所に今は謎のピンク色したロボット?のようなものがいる。
宝生の近くにいたオジマンディアスも立香を同様驚いているようであったが、金時は「ゴールデンだぜぇ!」と一人大騒ぎだ。
「立香さん、もう一つのスキルも発動許可お願いします!」
 ピンクのロボットから宝生の声がする。呆けていた立香ははっとすると、慌てて永夢の言われた通りにした。
「よしきた!」
 永夢はそう叫ぶと黄緑色の物体についているレバーを一度開いた。
「大変身!」

ガッチャーン!

レバーが開くと同時に音声が響く。そして永夢はその場で高くジャンプしたかと思うと

レベルアップ!
マイティジャンプ! マイティキック!
マイティ マイティ アクションX!

という音声と共に今度はすらっとした姿に変化した。

「かっけぇ…!」
 その姿に金時は目を輝かせる。オジマンディアスも宝生の姿にほぅと感嘆の声を発した。
「武器を持っているわけでもないその貧相な体でどのように戦うのかと不思議に思っていたがまさかそのような姿になるとはな!」
「結構変わってるだろ?だがこの姿だけで満足されるわけにはいかないな!」
 宝生は得意げにそう言うと斧のような形をした武器を取り出し、敵に切りかかった。
宝生の攻撃が当たるたびにHit!という文字が浮かぶ。
立香は自身がマスターになる前に自宅でよくプレイしたゲームみたいだなと思う。あっという間に敵を殲滅させると宝生はレバーを閉じ、ピンクのものを抜き取った。
変身が解除され、宝生永夢の姿は元に戻る。
「僕の戦いどうでしたか?」
 宝生は立香の方へ振り向きニコリと笑う。
「すっげぇよ!あんな姿になって戦うなんてよ!最高にクールだぜ!あの姿には名前はあるのか?」
 立香が何か話す前に金時がとても興奮した様子で宝生に詰め寄り話始める。
「あ、ありがとうございます。えっとあの姿は仮面ライダーエグゼイド。あの姿の時はエグゼイドと呼んでください」
「エグゼイド!名前もクールだぜ!」
「宝生。貴様はあの姿でなければ戦えぬのか?」
「えぇ、まぁ…お恥ずかしい限り…。軽く攻撃を躱したり敵を押しやるくらいはできるかもしれませんが敵が複数いたら変身しないとダメですね」
「なるほど…」
「あ、あの変身するときの道具は?」
 漸く口を挟むことができた立香は当初の疑問をぶつける。
「あれはゲーマドライバーとガシャットです。僕はこれらを使って変身します。まぁ…これにもいろいろあるのですべて話すとややこしくなりますが…。今日のところは省略させてください」
 敵をすべて倒したことでシュミレーション室は元の状態に戻りつつあった。もう少し戦闘訓練を続ける手もあるのだが、宝生の戦い方を見るのが今回の目的だったので立香は、今日の訓練はこれでしまいだと三人に告げる。


「そういえば、朝ご飯食べる予定だったのに食べずにここ来たんでおなかすきました」
「えっ、ご飯食べる前だったのに付き合わせちゃってごめん!」
「えっ、あっ、…いや、僕自身シュミレーション室に興味がありましたし。それに何も言わず付いてきた自分のせいでもありますし…」
「いいじゃねぇの!今からみんなで食いに行こうぜ!大勢で食べる方が美味しいしな!」
「実際に腹が空いているかはともかく、食堂に行くのならば余も行こう」

 シュミレーション室から四人がわいわいと話しながら歩くのを少し離れたところから眺めている人物がいた。