超人社会と呼ばれるようになって個性が普通になってきた今日。
飛行だったりテレパシーだったり重宝される時代だが、本主人公の個性は普通ではなかった。
「千夢 純生(ちゆめ すみき)です。個性は色欲。今は制御装置つけてますが、たまに制御効かなくなるときあるんで、よろしく」
個性というもの、実はとんでもなく面倒だと彼は常々言う。今や様々な職業で活躍をする個性が多くあるが、彼の個性はそういう類ではなかった。
色欲の個性だと説明をしながら耳につけている尋常じゃないピアスを見せる#苗字#にこそこそと話す声がした。説明すると囁かれる声にうんざりしつつ案内された席に座る。
あまりにも強力な個性のため、制御が効かないことがあり、度々問題を起こして転校をしていた#苗字#だったが、縁あってこの雄英高校に転入できたのだ。
特にこのクラスの担任はイレイザーヘッドと言い、”相手の個性を消す”個性を持つらしい。もしも暴走した時のためにと校長の計らいであった。#苗字#自身もこれ以上面倒にならないのであればそれでいいですとあまり期待をせずに転入しており、3年間適当に過ごせばいいかと座った席からぼんやりと窓を眺めていた。
「へー、制御できねぇんだその個性」
「ちょっと不便だな」
「まーなー」
入学試験や戦闘訓練で敵と対峙した雄英高校1年A組。噂にはきいていたが話してみれば思ってた以上に普通であった。#苗字#は少し拍子抜けしたのかもしれない、いや、色欲と聞かされても恐れず話しかけてくる彼らにホッとしたのかもしれない。昼休みになり臆せずに個性のことを聞いてくる金髪の見た目がウェイ系男子が#苗字#にウインナーを突き付ける。
「#苗字#の個性に当てられるとどんな感じになるんだ?」
「うーん、ふわっとなる?」
「曖昧なニュアンスでわかんねぇな」
赤髪の熱血系男子が肉にかぶりつきながら頭を抱える。#苗字#の説明が曖昧すぎるため、創造も出来ない、そんな反応だった。#苗字#は唸りながらどう返答すれば伝わるのかと悩む。
「例えばだけど、俺のことで頭いっぱいになるとか……恋してる感じになる、らしい」
「まじかよ!それって女の子に使ったらやべーんじゃねーの?!」
「なんだよ上鳴、色欲だぜ?始めは恋でもだんだん性欲に変わって、下手したら襲われるんだって」
「願ったり叶ったりだろ」
「いやいやいや、可愛い子なら俺だって大歓迎だけどよ……」
俺の個性は無差別だからさ……女の子じゃなかったら嫌だろ?そう告げると残念そうに目を伏せる上鳴。切島にいたってはちょっと顔を赤くして肉を食ってるだけだ。おいこら、お前が聞いてきたんだろ、照れんなよ。
「かといって無下にはできねぇし?」
「どうやって止めてんだ?」
「言い聞かして無理だったら気絶させる」
「え、えげつねぇ〜」
「けっ、そんなん理性保てねぇ奴がわりーんだよ」
鼻で笑う爆豪。女の子に屈強な精神論叩きつける気かお前は。
「制御できねー分、思いっきり個性使うから並大抵の精神力がないとやばいらしい」
「てかよ、制御できねぇテメェも悪いんじゃねえか」
爆豪が俺の座ってる椅子を軽く蹴る。そりゃあまあそうだけど。俺だって制御したくてもできねぇから制御装置に頼ってるわけだし、んん、なんかモヤモヤする。制御するのだって大変なんだぜ?と言えば、俺だったらそんなもん簡単に制御できるだなんて言いやがる。
「へぇ」
「あ、千夢が悪い顔してる」
「爆豪ー、謝っとけって」
「あぁ?なんでこいつに謝んなきゃなんねーんだよ!!」
「いーよー謝んなくても」
身を以て体験してもらうからいーの。俺はそう言うと静かに制御装置を外した。ひとつ、ふたつ、さすがに全部外すと可哀想だからふたつだけ。
そうして隣の爆豪に向き直り右手を彼の頬に添える。
「なっ!」
「なぁ爆豪。俺……もう我慢できねぇよ……」
「っ……ぁ…」
左手で爆豪の手を握って、右手を頬から首にゆっくりと撫で下ろす。さっきまで威勢の良かった声がだんだんと小さくなっていく。ゴクリとなる爆豪の喉。それを聞いて俺は人差し指を爆豪の喉から顎にかけてゆっくりと添わせ
、そっと彼から離れる。
「ほっら、爆豪。これでもまだ俺の個性について言えんのか?」
「ぅぁ………くっ…そがぁ…」
笑いながら制御装置をつける。いつもなら眉間に皺を寄せている爆豪の顔が今は赤くなり目も少しだけ細くなっている。
「へぇ、案外可愛い顔できんじゃん爆豪も」
「くっ……あっははははははは!!ひーーーなんだよ爆豪その顔!!!」
「ば、爆豪?!」
我慢できなかった上鳴が腹を抱えて笑いだす。切島も驚きつつも口元がにやけていていた。あー、楽しい。俺は爆豪の顔を写真におさめる。たまには個性使うのも悪くねーかもなんて考えながら待ち受けに設定した。
「じゃあ俺職員室いってくっから」
ヒラヒラと手を振ってその場を後にする。早く出てかねーと個性きれた爆豪にぶっ飛ばされそう。