遅れた要因は数多ある。たとえば朝食をゆっくり食べたこと、時計をみていなかったこと、長風呂しすぎたこと……エトセトラ。しかし中でも核となったのは、朝、幼なじみが迎えに来なかったことだ。それを認めてしまうと真琴に頼りきっていることまで認めてしまうことになるので悔しいが事実である。
 真琴が来なかったことを不思議に思わなかったわけではないが、深く考えるようなことでもなかった。別に行かなくてもいいかなんて怠惰な考えは何度も眼前を通り過ぎたが、それはそれで面倒なことが起こりそうなので、遙は遅刻という選択を取った。
 着く頃には朝礼は終わっているだろうという遙の予想に反して、彼が教室に足を踏み入れると天方が授業の変更の有無などを連絡している真っ只中であった。
 いっぺんに集まった視線と同じように遙も驚いたが入り口に突っ立っていたっておもしろくない。遅刻した旨を、遙がこのタイミングでやってくるとは思っていなかったのだろう、不意を打たれ狼狽える天方に伝え、自分の席に向かう。そのころには教室は冷静さを取り戻していた。
「七瀬くんも遅刻なんだ」
 こっそり聞こえた言葉は女子生徒のものだったが誰のものかまではわからなかった。
 俺も、とはどういうことだろうか。他に誰が遅刻したのだろう。気になった遙は辺りを見渡す。ふっと、苦笑する真琴が目にとまった。
「橘くんの遅刻は珍しいよね」
「あはは……ちょっとね」
 隣の席の女子生徒に話しかけられた真琴は困ったように眉を下げていた。なるほど遅れたのは真琴か、と一つ解決する。それと同時に先ほど七瀬くんも云々言っていたのは彼女なのだと理解し、朝、真琴が来なかった理由もわかった。が、浮かんでくるのは新たな疑問なのである。
 どうして真琴は遅刻したのだろう。彼女のまねをするわけじゃないが、珍しい。
「じゃあ……欠席は橘水希くんだけね」
 考え込む遙の耳に届いたのはそんな天方のセリフであった。橘水希が、なんだって?
 慌てて天方を見るが、彼女はそんなことには気づかない。人差し指を立てて、偉人の言葉を紹介するのだ。
 今度は真琴を見る。彼もまた遙の視線に応えない。
(水希が……欠席?)
 遙の疑問に答えたのは無人の席だ。最後に見たかの幼なじみの席は、ぽかんと寂しく空いていた。
 朝礼が終わるとすぐに遙は真琴のもとに駆け寄った。真琴と声をかけると、彼はゆっくり顔を上げ、「よかった。俺が迎えに行かなくてもちゃんとこれるんだ」なんて、眉を八の字にする。
 これはむっとするほかない。バカにするなと低く言うとごめんごめんと謝られる。ご機嫌取りだろうか、むくれる遙に言葉を続ける真琴は「朝は相変わらずサバ?」とか。そんないつものペースに巻き込まれてすっかり聞きたいことを忘れてしまうところであった。
「水希、どうしたんだ?」
「水希は……えー……と」
 危うく聞き忘れそうになった一番気になることを口にすると、真琴は不自然に目線を逸らした。おかげで遙の眉間にシワが寄る。
 おかしなことを聞いたつもりはない。何でそんなに言葉を選ぶ必要があるのか。
「水希は、その……ちょっと」
「……なんだ? はっきり言え」
 嘘が下手くそな男だと思う。遙のきつい口調に真琴はますます居心地悪そうにして、きょろりきょろりと目を泳がせた。
 まさか仮病か。遙がそう疑るのも無理はなかった。
「……聞いても、早退しないって約束してくれる?」
「?」
 遙の視線に耐えかねたのだろう。真琴が声を潜めてそう言った。
 これから真琴に告げられることと自分の早退と一体なんの関係があるのか。遙はきょとりと口を三角にする。
 どこかでサバの大安売りでも開かれているというのか、それとも水希が一人豪邸に設備されたプールに向かったとでも言うのか。いずれにせよそのようなことを聞かされて教室を飛び出すような思慮のない人間ではない……と思う。いや、やはり飛び出すかもしれない。
 とうとうそれは聞く内容にもよるという結論に達したが、真琴は遙のイエスを聞くまで決して話さないつもりであるらしい。それを察し、遙は仕方なく頷いた。
 それを確認して、実はと、真琴は口を動かす。
「水希、蓮のがうつって風邪ひいちゃって」
「……は?」
「それでいろいろあって、遅刻したんだっていうのは……余談かな」
 はは、と乾いた笑いを浮かべて頬をかく真琴は、確かに水希が風邪をひいたと言った。水希が風邪? 彼もまた人の子だったということか。
 なんて失礼極まりないことを考える遙の腕を真琴ががしりと掴んだ。唐突なそれにびっくりして、なんなんだと彼を見下ろす。
「……なんだ」
「その足、どこに行く気?」
 にこりと笑う真琴。我が足元を見下ろしてみると、あら不思議、遙のつま先は先ほど入り口として使ったドアに向いているのである。「ちょっとトイレ……」なんてごまかしてみても深いため息しか返ってこない。
「今来たばっかりなのにもう帰る気?」
「……ほっとけ」
「何言ってるんだよハル。堂々とサボらせるわけないだろ?」
「サボりじゃない」
「とにかくダーメ」
 これは勝てそうにない。遙は少なくとも今はおとなしく引くことにした。
 だって真琴が遅刻するぐらい、今朝の水希の症状は重かったということだろう。真琴が遅れたのは水希の世話を焼いていたからに決まっているのだ。
 心配だ、とにかく心配なのだ。あの無愛想が風邪をひいたなんて、真琴の遅刻と同じぐらい珍しいのだから。
 真琴には止められたが、早引きして様子を見に行かなければ落ち着けない。
 自分の席に戻った遙はほどなくして教室にやって来た数学の教師を隅に入れつつ、どのようにして真琴の目を盗み学校から脱出するか目論むのであった。


 昼休みになったが結局脱出は成功していなかった。何度かこっそり抜け出そうとしたのだが、この幼なじみ、かなり目敏いのだ。腕を掴まれた回数など両手の指だけでは足りない。
 いよいよ真琴も呆れ始めるが、どうしても早引きだけはさせてくれないらしい。終いには「そんなに水希が好きなの?」なんて言われてしまうのだから遙はぐうの音も出なかった。
 昼ごはんは屋上で、水泳部の後輩たちも交えて食べる。
 今日も渚は栄養の偏りそうな菓子パンを持って来ているのだろうかとか、江による抜き打ち弁当チェックがあるのだろうかとか、そんなことを考えたって掠めるのは水希への心配だ。
 今頃は朝に比べれば幾分容体がよくなっているといい。といっても今朝の容体を知らないのでなんとも想像し難いのだが。
 ちらりと先をゆく真琴を見る。そうすると彼はすぐに振り返る。まだ諦めていないのかと、その目が言っていた。遙は目を逸らしてうやむやにした。くそ、逃げられそうにない。
 けれども神さまとやらは遙を見捨てていなかったらしい。
 屋上へ続く長い階段を上り終え、真琴がノブに手をかける。ドアが少し開いたその瞬間、真琴に油断ができたのを遙は決して見逃さなかった。びゅおっと音を立て吹つけてきた風に、真琴の意識が一瞬遙から逸れたのだ。
 今だ! 遙は身を180度回転させ、上り終えたばかりの階段を勢いよく駆け下りた。真琴の目線は追ってこない。踊り場までいったところで「まこちゃん一人?」なんて言う渚の声が聞こえたのだが、ここまでくればもはや死角、真琴に見つかるわけがない。
「何言ってるんだよ渚、ハルは後ろに……」
 この数秒後、真琴が遙の名前を叫ぶのはお約束である。


 さて、学校(というよりも真琴)からの脱走に成功した遙は橘家へと続く石段を軽く息を切らしながら上っていた。そうなるのも無理はなく、なにせ遙は学校からここまで、休まず走り続けていたのだ。
 自分のことながら呆れる。水希がそんなに好きか。
 石段を上り終え、橘家の門をくぐると、まだたどり着いていない、少し離れた玄関が図ったように開かれた。
 きょとんとする遙と同じように、玄関から出てきた人物もきょとんとする。遙の目の前に現れたのは橘家の母であった。
 あまりに意表を突いた出来事に遙が固まっていると、彼女は、あらあらと意外そうに遙を呼んだのち、学校はどうしたのかとか、そんなことよりもまず先に、「もしかして水希のお見舞い?」と尋ねた。
 その通りだ。ゆえに遙は何も言えなかった。
「ちょうどよかった。今から買い物に行くから、水希のこと頼んでいいかしら」
「あ……はい」
「よかった。さすがに一人にするのは心配だったから早めに帰るつもりだったけど、ちょっと長めに買い物してくるわ」
 居心地の悪さはそっと引いていく。
 遙の元までやってきた橘家の母親は家の鍵を開けたままにして、まだ熱が引いてないの、と軽い現状報告をすると、あとはなんのためらいもなくこの場を後にした。
 遙はその姿が見えなくなるまで見送って、ゆっくり橘家に視線を向ける。いつもより静かな家がそこにはあった。
 家に上がる際のおじゃましますは欠かさない。どうやら水希以外の人物はいないようで、出迎える言葉はなく、テレビもなにもついていない橘家はただただ静かであった。時計の秒針の音でも聞こえてきそうだ。
 玄関には隅にきちんと揃えられた水希の靴がある。几帳面に揃えたのは彼自身か、それとも家族の誰かだろうか。
 遙もそれに倣って靴を揃え、隅に寄せた。続く場所は違えど今日だけで何度も上っている階段を踏み、目指すは水希の部屋だ。
 水希の部屋のドアには「しん入きんし」と書かれた画用紙がぺたりと貼ってあった。多分蓮か蘭、あるいは2人が水希に(多分真琴ではないだろう)言われて書いたのだろうが不意打ちだ。ここはどこの隔離病棟だと、ちょっとだけ笑ってしまった。
「水希、入るぞ」
 コンコン、2度ノック。しばらく待ってみたが返事はなかったので遠慮なくノブを回させてもらう。沈黙は肯定とかいうやつである。
 部屋に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはベッドの上にある膨らみだ。頭だけをぴょこんと出したそいつはこの部屋の主である。近寄りながら気づいたが、抱き枕にひっついているらしく、それもあざらしのぬいぐるみだ。
「……」
 すう、と寝息を立てるのからも、下りた瞼からも彼が眠っているのは一目瞭然。いつもより幼く見えるのはおでこに冷却シートが貼られているのと……あざらしの抱き枕にくっついて眠っているからだろう。
「……かわいい……」
 それは、遙が不覚にも、うっかり口にしてしまうぐらいの破壊力を備えていた。
 そのあざらし、どうしたんだと心内問いかけるが当たり前に答えはない。
 穏やかに眠る水希に手を伸ばしてその頬に触れてみると、確かに風邪っぴきの体温だ。きついだろうに。胸がきゅうと締め付けられた。
「……ん……」
「……? 起きたか?」
 眠りの深い水希が珍しい。思い返せば今日は珍しいことだらけだ。
 見ているこっちが焦れったくなるぐらいゆっくりと目を開けた水希は、遙の姿をぼんやり見つめ、己の頬に当たる彼の手を掴んだ。その力も、目と同様、頼りないものだった。
「つめたい……」
「……気持ちいいか?」
「ん……きもちい」
「……」
 ちょっと気持ちが振れてしまったのだが相手は病人だと遙は堪えた。水希だってまさか狙ったわけではあるまい。問うた自分だって意識していなかった。
「遙……」
「どうした? 何かいるか?」
「学校は……?」
「早退した」
「……真琴がよく、許したな……」
 水希はふにゃりと笑って、病人の握力など高が知れているが、遙の手を握る力をほんの少し強めた。応えるようによしよしと頭を撫でてやる。
 真琴に許されたわけではないのだが(むしろ反対されたなんて)別に話すことでもないだろうから、まあな、と遙は相槌をうった。
「気分はどうだ?」
「ん……なんか、ふわふわする……体があつい」
「…………そうか」
 わかっている。わざとではないことぐらい、わかっているつもりだ。なんだか情事のときの水希っぽい、なんて断じて思っていない。
 最近強く感じるのだが、眠気に押されているときにしろ、水希という人間は弱ったときに人がかなり変わるから厄介だと思う。いつもはツンツンしているくせして、こういうときだけ甘えたになるんだから。
「……昼は?」
「おかゆ……」
「薬は?」
「……飲んだ」
 こっそり付け足された、多分なんていう頼りない言葉は遙にしっかり聞こえているのである。サイドテーブルには空になったコップと、一口ゼリー、錠剤の空があった。
 それが今朝のものであるという可能性は低い。薬はきちんと飲んだのだろう。ところでその一口ゼリーは末っ子たちのお見舞い品であろうか。
「欲しいものとか……あるか?」
「……ないよ……あ、でも」
「どうした?」
「遙」
「ん」
「……そこにいて」
 遙の手に伝わる熱が増えた。水希が両手を使って遙の手を掴んだのだ。
 たまらなかった。気づいたら薄く開いた口を塞いでいて、無抵抗の彼に食らいついていた。熱のせいかいつもより熱い舌を絡めて、何度も何度も角度を変える。いつの間にか遙のブレザーにシワを作っていた水希の手が、くいくいとそれを引っ張ってやっと、遙は口を離した。
 つうと引いた糸がぷつんときれて、拭われない濡れた唇にあたる。
 先に視線を逸らしたのは水希だった。
「……うつったらどうすんだよ……ばかやろー……」
 もぞもぞと布団に潜りながら言うものだから声がくぐもっている。いじけた子どもみたいだ。
「いっそうつせばいい」
「……遙が苦しいのは嫌だ……」
「俺だってお前が苦しいのは嫌だ」
「……」
「もうしたから、ごちゃごちゃ言ったって意味がないけどな」
 少しの沈黙のあと。もぞもぞ。水希がまた顔を覗かせる。
「……遙のばあか」
 ふてくされた子どもだった。
 どうせ意識が半分黄泉にある水希は今この瞬間の出来事をのちに半分も覚えていないのだろう。そう思うとなんとなく腑に落ちない気持ちがもやもや募ったが、遙はそれもいいのかもしれない、なんて思うのだ。
「……バカかもな」
 遙がほんのわずかに口許を緩めてやると、水希は潤んだ目を幸せそうに細めた。
 徐に伸びてきた水希の手を遙は優しく包んでやる。意図的ではないのかもしれないが、強請る視線に答えてもう一度顔を寄せた、ちょうどそのとき。コンコンとドアをノックする音。遙は慌てて水希から離れた。
 ドアの向こうからひょっこり顔を見せたのは買い物に出かけた母親だ。彼女に出会ったのはつい先ほどの出来事のような気がするが、意外と時間が過ぎていたのだろうか。
 目があったので会釈する。彼女もまた遙に微笑みかけありがとうと言うと、水希を見る。それから口許に手を当ててくすくす笑った。
「……あら、遙くんに来てもらえて、随分顔色がよくなったみたいね?」
 なんでもお見通しと暗に言われた気がしてどきりとしたのは遙だけじゃなかっただろう。きっと深い意味はないのだと思いたい。
「……変なこと言うなよ……」
「ふふ、冗談よ。遙くんも、よければ様子をみててあげて。体調悪いくせに、お世話はいらないって拒むんだから」
「はい」
 それじゃあ、と彼女は身を引いてドアを閉めた。どうやら水希の様子をちょっと窺いにきただけだったらしい。
 遙も水希も、2人揃って安堵の息をつく。部屋には妙な空気が鎮座した。
「焦った……」
「……ああ」
 数秒、無言の視線を交わして、どちらともなくふっとふき出す。本当、心臓に悪いよなあなんて言えるころには、いたずらっ子の気分である。
「……な、眠気もすっかりとんじゃったし、話につきあってよ」
「あんまり無理したらダメだ」
「いいじゃん。しゃべるぐらい」
 弱っているから人恋しいのだろう。
 にぎにぎと手を弄んでくる水希を見下ろす遙の瞳は相変わらず読めない。
「……そのあざらし、どうした?」
 早く寝ろと布団に押し込められるかと思ったが、なんと意外にもノリ気らしい。
 水希はそっと視線を落とし、ゆるい顔をしたあざらしを見る。
「ゲーセンでとった」
「そうか……」
「かわいいだろ、なんか憎めない顔してるし。真琴も色ちがいもってる」
 ゆるキャラ好きの遙としても頷けるところは確かにあった。のほほんとした顔立ちのあざらしを見ていると癒される。つられて笑んでしまいそうだ。
「……今度の休み、遙も行こうよ」
「?」
「あざらし。3人でおそろい」
 な、と笑いかけられ遙は無言のまま水希の頭を撫でた。それが肯定なのだと知っている水希は気持ち良さそうに目を閉じる。その安堵し切った顔はあざらしのぬいぐるみみたいだと思ったけれど、遙の口から出たのはそんな感想じゃあなく、ふああと、大きなあくびだった。
 つられて水希もあくびをする。お互いまどろんでいるかのような瞳を向けあって、微かに笑う。そっと瞼をおろしたのは、どちらが先だったが、誰も知らないのだ。



 部活まで終えて家に帰ると靴が一足増えていた。誰のものかなんて考えるまでもないので、一度リビングに向かって母に帰宅を伝えた後、水希の部屋に向かう。
 朝と変わらず進入禁止の紙が貼られたドアをあければベッドの上には膨らみが2つ。なにしてるんだかと呆れてため息をついた。
 一緒に眠るなんて、風邪がうつったらどうするんだ。
 遙は、水希とは別の布団をかぶっているとか、そんなこともせずに、彼らはおんなじ布団に仲良く2人でおさまっていた。
 向かい合う2人の間には、この間水希がクレーンゲームでとったばかりのあざらしの抱き枕が、ちょんと身を置いている。男2人に挟まれてもそいつは窮屈そうな顔もせず、反って微笑ましそうにまあるい黒目をくりくりさせていた。
 家族に見られたらなんと言い訳する気なんだろうか。真琴は呆れつつ2人に近寄る。水希は今朝より顔色が良くなっているように思われた。
 腰を曲げてよくよく見ると、水希はあざらしに、遙はあざらし諸共水希に抱きついているらしく。
 真琴は、目眩がした。
 いつもお互い無愛想な分、こういうシーンは卑怯だと思う。なんだこいつら可愛いところもあるじゃないかとか、思ってしまうのだ。
「ほんっとしょうがないなあ……」
 もし遙に風邪がうつって、今度は彼が寝込むことになったって、どうせ似たようなことをするのだろうから注意したってムダなのだ。
 深くため息をついてつけっぱなしになっていた照明を落とす。部屋を出る前に真琴が遙たちを見たとき、なんだかんだいって、真琴の表情は、かのあざらしに負けず劣らず、弛んでいたのかもしれない。