桜がちらほらと咲き、学校は去年の自分達のように初々しい新入生達の元気な声で春が訪れたのだと思っていたのに、たった数日で冬の寒々しい凍えそうな季節に逆戻りした。もう四月だぞと驚き寒がる声が教室の何処かから聞こえた。
クラス替えで会話したことのないクラスメイトの愚痴に心の中で同意しながら咲いた桜が散ってしまいそうだなぁと窓から見える八分咲の桜を心配していると、何処からか今日は雪かもしれないんだってと少し興奮気味な声が聞こえた。
誰に言ったのかも分からないその一言で慌ててスマホの天気予報を確認すると、季節外れの雪マークを同じく確認したのだろう人の悲痛な声や学校が休校にならないかと期待する声でクラスは、盛り上がる。寒さに強い筈の自分の背中が季節ハズレの雪を想像するだけでふるりと震えてしまった。
「あ、竈門」
声をかけられたと気づき振り向けば、名前は確か岡本と言っただろうか、彼が少し困り気にこちらを見ている。
「廊下で三年生がキョロキョロしながらクラス覗いて誰か探してるんだけどさ、お前探してるんじゃね?」
「……三年生が?」
「金髪の派手な人。この前お前と一緒に帰ってたし、一年の時もお前のクラスでしょっちゅう見てたから覚えてたんだけどさ。お前になんか用なのかもよ」
「そうか、わざわざありがとう」
椅子から立ち上がり礼を言いながら廊下に出れば、教室よりもひんやりとした冷たい空気に思わず戻ろうかと葛藤するがしかし、見知った黄金色の髪を見つけてしまい、寒さ戻ることも出来なくなりやけに挙動不審でおどおどとしている友人の背に声をかけた。
「善逸?」
おどおどしいその背中は名前を呼ばれた途端しゃんと背筋が真っ直ぐになったかと思えばこちらを振り向く。
「炭治郎!!」
とても心細かったのかきらきらと大好物を前にした子供のように嬉しそうに駆け寄ってくる善逸に思わず苦笑してしまう。
「聞いて聞いて、一年の可愛い子リサーチしたんだけどさ。禰豆子ちゃんを含めて今年も美人揃いでやばいよもう、どうやって話しかけようっ!?」
「落ち着け善逸、三年が突然一年のクラスに行ったら流石に怖がられるぞ」
「マジ?確かに二年の時にお前んとこに行く時も最初すっげぇ視線あったしなぁ。これは偶然を装ってみるのがありか?ん?ん?」
自分の世界に入り込んだ善逸がぶつくさと言い始める善逸の背中に周りを寒いから中に取り敢えず入れと押す。
教室の温かさにあったけぇと溢す善逸にそうだなと同意しながらも、ちっとも温まっている気がしない。なんなら心が凍えてしまいそうだった。それを紛らさせるように寒い寒いと手を擦り、気を逸らそうとするけど、逸らせる筈もなく。
虚しい心にぽっかりとあいた穴からヒューヒューと音が聞こえそうだと、締りのない顔で異性の話をする友人に悟られないように相手に困らせるような事はするなよと叱る。
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