じわじわと蒸されるような熱、積み上げられた何らかの資材。
建物は現代日本ではあまり見ないような古めかしい造りだが、決して汚さや荒さは見受けられない。
辺りを軽やかに飛び跳ねる小人は歴史の教科書で見たことがあるような和服。そう、小人、だ。
しかし、その非現実的な小人よりも更に自分を驚かせる人物が、目の前に立っている。

「ここ、第0008本丸審神者の捌宮、といいます。御手杵、これからよろしくね」

幼さを残した笑顔を浮かべる女には見覚えがあった。当時はこんなに髪の毛が長くなかったし着物を着ているのも見たこと無い。それでも、俺は彼女を神咲まどかだと確信していた。

警察学校を卒業してから姿を消して音信不通になった同期。いったいどこで何をしていたんだ!と口を開こうとしたその瞬間、ちくりと頭が痛む。最初は針を刺すような痛みがだんだんと凶暴さを増していき、まるで頭がばらばらに砕けたような恐ろしい激痛に変わる。立ち続けることはもはや不可能で、床に膝を着き手に持っていたそれを強く握った。
この室内で不自然に舞い散る桜の花弁は火の粉に変わり、先ほどとは比べ物にならない程の熱が辺りを燃やす。

あつい、熱い、なんだこれ。

「御手杵!」

神咲の声が遠くに聞こえる。既に視界は黒い墨で隙間なく塗り潰された。もう何も見えない。