風を切る音がする、これは飛行機だろうか。次いで、大きな爆音。空気が震えて、届く熱と何かが燃える臭い。大勢の人々の叫び声。
熱い。熱い。熱い。熱い。
もうやめろ、やめてくれ、融けちまう。
そうか、これは、………
「っ、空襲……!!」
布団から勢い良く起きがり、目に入るのは木造の天井。そして今見たものが夢だと理解する。じっとりと汗をかき、呼吸は荒い。なんてリアルな夢だ、まさか戦争で空襲を受けるなんて。今でもあの爆音と熱に光、臭い、体が融ける感覚を覚えている。
「夢、か」
いったい、どこからどこまでが?
おそらくあの空襲は夢だ。では、その前、舞い散る桜とかつての同期は。
「意識が戻ったのか」
開いていた襖からひょこり、白が飛び出してきた。白い髪、金の瞳。纏う和服も相まって、とにかく白いと印象を殴りつけられる。年の頃は20代前半だろうか、線が細く全体的に儚く感じられた。
「…ああ」
「何か違和感はあるかい?まさか顕現してすぐに気絶なんて初めてのことでな、そういった事例が無かったか本部に問い合せてる最中だ」
君も分かることが事があったら教えてくれ。そう言われても、××××もいったい何がどうしてこんな状況になっているのか全く理解出来ないでいた。
……?
ふと、自分の中に違和感を感じる。おかしい、変だ。自分が死んだことは覚えている。組織でのあれこれも、その前の警察学校の事だって。自分が何処に生まれたのか、両親の名前だってしっかり覚えている。それなのにーーーー、自分の名前が分からない。
スコッチ、それは組織でのコードネームだ。では、自分の本名は。生まれてから27年、共に過ごした本当の名前は。
思い出そうとすればあの灼熱に包まれ、頭をグラグラと揺らされる。
「おい、大丈夫か?」
「…大丈夫だ」
声が、違う。握りしめた掌の感触、撃ち抜いたはずなのに痛みなど全く無い胸、触れた顎には髭は無く、視界の上をチラつく髪は茶色。
「御手杵、しっかりしろ」
「悪い、とにかく熱くて」
御手杵?やけにすんなりと受け入れたそれは、たしか気を失う前にあいつに告げた名前だ。
「なあ、俺の名前は御手杵なのか?」
「…こりゃ驚いた、君で二人目だ。すぐに主を呼んでくる。時間は掛からんが少し横になっていた方がいいぜ」