attention*IF子世代です。
子供の名前は「想」で固定しています。




「父さん!次はいつ会える?」

エスカレーターだった中学を卒業し、春休みを迎え明日高校の入学式の私は、長期の休みを合わせてくれた父に別れを惜しみ、母の実家にある転移装置から父がミッドチルダにある別邸へ戻る際に抱きつきながら問いかけた。

困ったように笑い、優しく頭を撫でられ答えを察した。思わず口を尖らせ意地悪く父の弱点を突く。

「また母さん泣いちゃうよ」
「ゔ…」

「いつまでも新婚気分ですけど、今回だって私の卒業と入学なのに、ずぅと母さんとイチャイチャしてて……」
「そうだな、また近いうち来れるように調整してみるよ」
「えっほんとに?!クロノくん一年くらい航路って言ってたのに!」

突然現れた母がパタパタとスリッパを鳴らし駆け寄ってくる。この春高校生になる私もびっくりな若さを保つ母は嬉しそうに私を巻き込み父に抱きついてきた。

「まだわからないけどね、落ち着いてたら数日休暇くらいはとってくるから。」
「とっても嬉しいけど、その分忙しくなるなら無理しないでね…?」
「ありがとう、また連絡するよ」

私を挟んでイチャイチャしないで欲しい。ハートの乱舞が見える。突然母の力が入ったことに気がつき、顔を向けると弾ける笑顔が覗く。

「よかったね想!入学式は私が行くから安心して」
「母さん……騒ぎになるから目立たないで来てね…」
「ええ…クロノくん、想…普通に白いジャケットスーツで行こうかなって思ってたけどダメかなぁ…サングラスとかマスクは流石に目立つもんね…?」
「こっちでのなまえは有名人だからな、無難でいいと思うけど似たような格好で双子のとき騒ぎになってたよ」

思い返すように眉間に皺を寄せ考えていたクロノは当時の記憶を遡り頭を振った。

「そもそも私が言ってる騒ぎは服装云々じゃないし」
「まぁ姿が割れているバリアジャケットじゃないし、ちゃんとお忍びで行けばまあ大丈夫じゃないか?」
「母さんを見つけられるほどの人いたら大変じゃない??」
「でも行くのはヒーロー科だし、娘の入学式に忍んでいくのも違うような……」

口を再び尖らした私の頭を両親から撫でられる。

「自慢の母さんだろ」
「えー?」
「クロノくんの自慢になるなら嬉しいけど、親としては結構ダメダメだからあんまり持ち上げられるとなぁ、あっクロノくんは最高のお父さんだし旦那様だし、もちろん想達も自慢だよ」
「ちょ、力強い」

父さんの言葉に少し渋った、事実、いつまでも新婚気分で父大好きな母だが、経歴によりその資格ありとヒーロー科を卒業せずに特殊免許ヒーローとなった最強の名を欲しいがままにしている存在である。

こんなにゆるゆるであるが。

こんな体勢だが少し反抗期を自覚している私は口をへの字にして眉を寄せる。

「ヒーローになるなら目立つことを考えないと。親の七光りなんて言われても、気にするな。自慢の娘なんだから。」
「父さん…」

普段会えない父に宥められ渋々頷く。
そんな私に母も声をかけた。

「そうだよ、想。お母さんもお父さんも応援してるからね。」

「…うん。」

今度はしっかりと頷き想は父と母から離れる。
「父さんもお仕事、頑張って。応援してる。また通信で学校の話いっぱいするね。」

「ああ。待ってる。」
「母さんも、そろそろ父さんから離れて、見送ってあげよ」
「ううう、クロノくん、お仕事ほどほどにね。いつだって帰ってきて……でも怪我だけはやめてね」
「わかってる。なまえも油断だけはするなよ」

父の胸に顔を埋めてぐりぐりと頭を擦らせる様に肩を落とす。別れ際にいつもやっている光景だ。

一度頬にキスをしてようやく離れた母は、転移装置へ向かった父に手を振ってわかれた。
多分私がいなかったら延々とギリギリまでやっていたと思う。

母さんに部屋に戻ってると伝えて愛機である「ミスティア」を呼び出す。
片手で外装であるデフォルメの白猫ぬいぐるみのミスティアと戯れる。一生懸命に短い手を私の指に絡めて愛嬌を振りまいてあそんでいる。あ

「ねぇティア、夢を追いかけるだけで良いのかな。」
 
最近、両親を見てそんな事を思う。それこそが反抗期の小さな燻りとなっている。ずっと仲のいい夫婦。そんな両親が理想像ではあるんだけども。夢を追ってるだけで彼らみたいな幸せな家庭が築けるのか。

私たち兄妹の理想の夫婦が両親なのだ。彼氏彼女への理想値が天井突破しているため、私も未だ彼氏を作ったことがない。高すぎるせいで今後できる気もしない。

「とはいえ高校はヒーロー科だしなぁ」

確実に出会いよりも目標優先。ってイメージだよなぁ。入学実技試験を思い返した想はこっそりため息をついた。ティアまで指にしがみついたまま肩を落とすように表現した。


母が憧れのヒーローだから自分もヒーローに。
悔しいがそういった気持ちがないわけでもない。遠い昔、母が幼い頃に行った映像ディスクを兄にこっそり見せてもらった。父の部下から譲り受けた救助映像。そして教導官としての母の姿。僕らが物心継いた頃は、すでに母は事故に巻き込まれ生死すら不明であったと。僕らはこういった映像で母を知ったと。だから今直接教えを請える今が夢のようだと。その映像に強く憧れた。

だから幼い頃から鍛えたのだ。七光りなところもあるかもしれないが、自分の努力でもある。徒手格闘技の試合にも出る様になったし、結果も残せる様になった。

母が時空管理局を正式に辞職し日本でヒーローへ転職したことをきっかけに、私は初めてヒーローという存在を認識した。

これだと思った。時空管理局はどう頑張っても縦割り社会だ。そして縛りも多い。星を跨いだ出張も多ければ、一つの事件に対しての拘束期間も長い。

私の目指したいヒーローはNo. 1とかランキングにのるようなそんな大それたヒーローじゃなくて、別に星や世界を救うなんてワールド的な話でもない。

伸ばした範囲が救えるそんな愛されるヒーローになりたい。

大変遺憾だが、私の中でのNo. 1はいつだって母親なわけだし。あれは考えるだけで頭がおかしい。