アパシーがーる。
「両選手、前へ」
予選では代表の生徒が審判をしていたのだが、決勝トーナメントでは各部の顧問が審判をする事となっている。
決勝トーナメントの第一試合は、空手部顧問の言峰先生だった。
白いテープで区切られた大きな正方形の枠内に二人、士郎とオディナ先輩が入った。
「これより、第一試合を開始する。両者、構え」
こういう時の言峰先生の目は真剣そのものとなっていて、普段と違い生気が宿っているような気がする。いや、死んでる生きてるの意味ではなく、たとえ話なのだけれど。
「――始めっ」
始まった。
弓矢相手では距離を保てば不利になる。オディナ先輩が開始の合図と同時に距離を詰めて初撃である突きを振るが、槍の先端をぎりぎり避けた士郎が床を前転して少しの距離を取り、矢を構え、射る。
しかし、それはオディナ先輩が槍で弾いた。
「……やはり、先程のようにはいかないな、衛宮君」
「それくらい読める」
少しの間。じりじりと距離を取る士郎と、距離を詰めるオディナ先輩。
気迫だけではオディナ先輩が優勢だけれど、士郎は何かを考えているように目を逸らす事無く真っ直ぐに先輩を見据えていた。
「名前」
「どうかしたの?」
「これって武器によっては先輩の方が有利?」
「んー、まぁ、長物だからね。槍は持つ場所によっては自分が動かなくても、距離を詰める事が出来るから。士郎は不利なのかもしれない」
「ふーん。やっぱりよくわかんないなぁ」
友達名前ちゃんが試合を見ながら言うが、やっぱり運動部でないとこの臨場感は理解出来ないものなのだろうか。
凛達の姿を見る為に視線を隣へうつせば、声を出したくてうずうずしているようだった。
決勝トーナメントでは予選とは違い、本当の真剣勝負が行われるのであまり声を出す生徒はいない。
声を出すとしたら、選手同士か、審判か、セコンドとして立つ生徒だけだろう。
「悪いが、勝たせてもらうぞっ」
「それはこっちの台詞ですっ」
また、オディナ先輩が距離を詰める。
それを相打つ士郎は矢を三本構えて照準を合わせているようだった。
「遅い」
アーチャーが低く呟いた。
「無駄だ」
士郎の飛ばした矢をまた槍で弾き、そのまま士郎に突出するオディナ先輩の第二撃。
「わお」
思わず、声が出てしまった。
士郎は槍の先端を弓の上部――確か姫反りとアーチャーが前に教えてくれた、その部分を使って槍を受け流し、オディナ先輩が反転して追撃をする前に背中に担いでいた筒から矢のストックを取り出した。
そして矢を素手のまま反転したオディナ先輩の首元に当てた。
時間にして一瞬。本当に一瞬だった。
「そこまで!」
これが昔でいう戦場だったら、オディナ先輩は首に矢が刺さって死んでいる。そして、お互いの気迫を考えると、どちらも予選は肩慣らしだったとも理解出来る。
――体が震えた。
こうでなくちゃ面白くない。だから、空手を止められない。
早く、あたしもやり合いたい。
「え、今の見えた? 何があったの?」
「ありゃ、ディルムッドも予想外だっただろうな」
「ルール上は必ずしも矢を飛ばす必要は無いですからね。士郎の勝ちです」
「えっ? なんで皆見えてるの? 何が起きたの?」
友達名前ちゃんにアーチャーがわかり易く説明をしているのが聞こえてくる。観客である生徒の歓声も聞こえてくる。聞こえてくるだけであたしは関与しない。
視線は見下げた先の正方形の枠内。明日は自分がそこに立つ。そう考えただけで、ゾクゾクして、ワクワクしている。
「ちょ、ちょっと名前!? 何笑ってるのよ気持ち悪いわね!」
「……え? あぁ、ごめん。明日が楽しみになってきてさ」
「さっすがだな、お前」
「わわっ、ちょっと、クーさん! 頭撫でないでよ!」
頭がボサボサになった。まぁ、気にすることでもないけれど。
ふ、と体の力を抜く。セイバーの隣に座っていたネロちゃんを見て、目が合って、そして微笑んだ。
「明日は楽しもうね、ネロちゃん」
「うむ! 余も全力を持って相手をさせてもらうぞ!」
エルキドゥ先輩が試合結果をアナウンスしている中、視線を下へ移すと、オディナ先輩と士郎が握手をしあっているところだった。
歓声や拍手で聞こえないけれど、何かを話しているみたいだ。二人とも笑ってるし、楽しかったんだろうなぁ。
さて、と言ってアーチャーが立ち上がる。
第二回戦はアーチャーとランスロットだ。
「勝ってくる」
「負けてこい」
「君は、私を応援する気はあるのか?」
「無いよ。ランスロット応援するもん」
「私はあるよ! アーチャーがんばって!」
「あぁ、ありがとう」
客席を立って、会場である階下へ下りる階段へとアーチャーが向かって行く。その背中に凛と負けろコールをしてみた。
振り返り様にすごくイラついた表情をしていたけれど、アーチャーは感情を引きずるような性格ではないし、試合には何も問題はないだろう。……と思う。
別にランスロットを応援しているわけじゃなくて、いや応援はしているけれど、アーチャーを表立って応援してしまったら周りがはやし立てるし、えこ贔屓って思われたくないし。
ふられたとか、好きだったとか関係なく、アイツの実力は知っているから。だから、応援しない。
決して、友達名前ちゃんに遠慮しているというわけではない。うん。遠慮はしていない。
「これより、第二試合を始める。両者、前へ」
今回の審判は衛宮先生だった。
「衛宮せんせって、何の顧問だった?」
「さぁ? 射撃部なんて無いわよ」
「衛宮先生は投擲サークルと柔道部を兼任されているそうですよ」
「え! あの先生ってそんなに凄いの?」
「友達名前は校舎が違うため存じないと思いますが、切嗣はゴルゴというあだ名があるのですよ」
「へぇー。名前がゴルゴが来るって言ってたのはあの先生に追われてたからなんだ」
「……友達名前ちゃん、それ、去年だから。今年はリアルサバゲーしてないから」
ランスロットとアーチャーが枠内に入るとほぼ同時に、試合を終わらせてきたオディナ先輩と士郎がやって来た。
二人も興味津々に階下の様子を見ていたので、さっきの試合の事を話し出す人は居なかった。
「では、始めっ」
開始と同時にアーチャーが物凄い速さで矢を射出しだした。連続射出にランスロットは竹刀で矢を払ったり防いだりと防戦一方だ。
でも、矢のストックは無くなってくる。弓道部の選手に支給される矢の数は30本。つまり、30射しか出来ないわけで。今連続で射出している分、ランスロットが巻き返した時にどう出るのかが見ものなのかもしれない。
隣を見れば友達名前ちゃんは大丈夫なのかとハラハラしているし、何だかんだ言いつつアーチャーを応援している凛も彼自身が何を考えて矢を射っているのか理解は出来ていないようだ。
先程の予選トーナメントとは違う戦い方に、あたし達も、他の生徒も戸惑っている。そんなざわめきが起き始めていた。
「そろそろ、無くなりますね」
ライダーがポツリと言った。
矢は残り一本。つまり、あと一回しか放てない。攻撃のチャンスは一回限りとなってしまった。
29もの矢を防いだランスロットもかなりの腕前ではあるけれど、あれだけの速度で矢を連続射出したアーチャーの顔には焦りの色が全く見えなかった。
多分、何か考えがあるんだ。アイツはそうやって自らを窮地に立たせたと見せかける節があるから、きっと、今のこの状態を楽しんでいるのだろう。ひどい性格だ。
「終わりですか」
「あぁ。あと一度しか矢を射ることは出来ない」
「貴方が無駄打ちとは、珍しいものですね。先程は冷静だったようにも見えますが」
「いやなに、私の腐れ縁が君を応援すると言っていたのでね。少しムキになってしまったようだ」
「それは、珍しいですね」
アイツは何喋ってるんだ。後で殴ってやる。
「さて、こちらは残りの一手で勝負をするが、君はどうする?」
「そうですね。悩む間もなく、全力を持って討たせて頂きますよ――っ!」
ランスロットが突進する。近付き過ぎると矢を射にくい。
狙うは面のみ。あの威力だと一発KOだ。いくらアーチャーであっても、くらったら脳しんとうどころではなくなるはず。
「いけません、ランスロット!」
セイバーが叫んだ。
しかし、ランスロットの突進は止まらず、アーチャーの頭に向かって竹刀を振り下ろす。
それをアーチャーは弓で受け止め、体制を低くした。
つばぜり合い。アーチャーの腕力だったら受けきれるとは思うけれど、片膝をついてしまっているので押し返すのが難しい。
けれど、アーチャーは、あたしの幼馴染みは、劣勢でありながらニヤリと笑っていた。
「チェックメイトだ、ランスロット」
「何を――貴方、矢はっ……!?」
「そろそろ、お前へと落ちてくる頃だろう」
アーチャーの低い声は、体育館によく響いた。
そして、真上に放った矢がランスロットの背中へと一直線に落ちて、当たった。
「そこまでだ」
衛宮先生の声が響いた。
がくりとうなだれるランスロットと、勝ち誇ったように立ち上がるアーチャー。両極端だった。
「何よ今の勝ち方! 納得いかないわ!」
「まぁまぁ、姉さん落ち着いて」
「今のは慢心したランスロットが悪い。あとでキツく叱らねばいけませんね」
「そうですね。残り一本の時点であらゆる攻撃パターンを予想するのが武道を嗜む方の基本かと」
「やっぱりアーチャーかっこいい!」
「相変わらずよく分からねぇ作戦立てやがるな」
「弓矢にとって距離を詰められると抵抗が出来なくなってしまうから、いい作戦ではあるが……こういう場面でしか適応は出来ないだろうな」
「くそ……あんな戦い方ずるいだろ」
まさに十人十色の反応だった。皆それぞれの感想を言っているが、結局勝ったのはアーチャーで、負けたのはランスロット。その事実は覆らない。
ざわざわとした観客席を気にせず、エルキドゥ先輩が同じように試合結果と十分間のインターバル連絡を告げていた。
飲み物を買って来ようかと立ち上がるが、あたし自身が空気になったように誰も気に止めなかったのでそのまま自動販売機のある外へと移動する為に、観客席を出て階段を降りた。
試合を終えたばかりの幼馴染みにお疲れ、と言えば、あぁ、と返事をされた。
「アーチャーらしくない戦い方だったね」
「是が非でも次に進まなければいけなかったからな」
「次? あー、クーさんとか」
「アイツには借りを返さなければならない」
そんなに予選で負けたのが悔しいのか。汗を全くかいていないアーチャーはそのまま階段を登っていく。観客席の方へと向かうのだろう。
凛から何か言われるかもよー、と言えば、それを承知しているかのように、左手をひらひらと力なく振ってきた。
ランスロットにもお疲れ様と言おうとしたが、姿が見えないので、もしかすると観客席からセイバーが怒号を飛ばしているのかもしれない。
可哀想なランスロット。ご愁傷様です。ただ、慢心したのは悪いと思うよ、うん。
「あ、」
体育館を出て、隣接している自動販売機を見れば、いつも飲んでいる飲み物が売り切れだった。
休憩は十分だし、少し外を歩くのもいいかもしれない。外と言っても大学の敷地内だけれど。
ほとんどの生徒は体育館に残っているようで、出歩いている生徒はあまり見たことの無い生徒ばかりだった。多分、友達名前ちゃんと同じ音楽科の生徒とかだろう。技術系の特別学科は別棟なので会う事はまず無いからわからない。
気が付けば、道場の一角へと歩いて来ていた。
水飲み場の近くにある自動販売機は売り切れになっておらず、いつも通りの飲み物を買う事が出来た。
食道が冷たくなっていく感覚。そして高まっていた体が落ち着いていく。
予選の時はそうでもなかったけれど、決勝ともなると出場者の目つきが全く違うから、感化されていたみたいだ。
きっと、出場しなかったら、あたしは道場に入って昂りを一人で消沈させようとしていたんだと思う。それくらい、今年はすごい。
去年は男子の試合をあまり見なかったし、そこまでやる気も無かったのでつまらなかったけれど。
ペットボトルを半分まで飲み終わり、ふぅ、と一息。
「あ、れ……?」
そして、この場に不似合いな人物が剣道部の使う道場から出て来たのが見えた。
気付いていないふりをしてそのまま立ち去ろうとしたが、バッチリと、目が合ってしまったので立ち去る事も出来ずに気まずい空気が流れた。
「何をしている雑種」
金髪の髪に、燃えるような赤眼。整った顔立ちと体型に似合わない剣道着には違和感を覚える。
タオルで汗を拭きながら出て来た会長は、予選が終わってから体育館で姿を見なかったから、昼休みに入ってからずっと道場に居たのだろう。
何をしていたかなんて一目瞭然で、この人は慢心をせずに一人で稽古をしていたに違いない。決勝の自分が出る試合まで体を温めていたのだ。
「いや、体育館の自動販売機が売り切れが多かったので、ここまで買いに来てました」
「そうか。貸せ」
手元にあったペットボトルはそのまま会長に攫われてしまい、キャップを開けて――飲んだ。
「ああああああー!!」
「なんだ。別に良いだろう。減るものでも無い」
「減りますから!」
「ケチ臭いな」
「このジャイアニズム会長め!」
半分だった飲み物が残り4分の1になって返却される。
これ飲んだら関節キスになるんですけど。会長は気にしてないのだろうけれど、一応年頃の女の子であるあたしからするととても気にするわけでして。会長のファンクラブ的な人達を敵に回したくないので、飲むなら全部飲んで欲しかった。
あたし、まだ、死にたくないっす。
「なんだ、飲まんのか」
「いや、えーっと、後で、飲みます」
「そうか」
ザ、気まずい。どこに行くわけでもなく、会長は隣に立っているし、あたしは話す事とか無いし。
というか、会長のファンに殺されたくない以下略。
「……会長、体育館にいかなくていいんですか?」
「貴様は行かんのか」
「いや、まぁ、行きますけど」
「我の試合を見んとは言わんだろうな」
「言わないです。ちゃんと見ます、はい」
では行くぞ、と先導されて、後をあたしがついて行く形になる。なんで先導されてるんだと思ったが、もうなんかいいかな、と。
この会長が強引なのは間違いないわけだし。
「おい」
「はい?」
「当然、我の勝利を願うのだろうな?」
「えーと、いや、分かんないです」
「わからんだと?」
ギロリ、と睨まれた。いやいや、あたしが応援しなくても他に応援してくれる生徒はたくさんいるじゃないか。
例えば、友達名前ちゃんとか、エルキドゥ先輩とか。
聞いてみると、友達名前は知らんがエルキドゥは信用が無いと言われてしまった。
まぁ、友達名前ちゃんはアーチャーの応援するだろうなぁ。そう考えたら、会長は応援してくれる人が居ない事になるのだろうか? いやいやいや、ファンクラブ的な生徒達が応援するだろうし、剣道部員も応援するはずだ。
「会長は、あたしの応援が無くても優勝すると思うので」
「当たり前だ。我より上に立つ者などおらん」
じゃあ、あたしの応援なんて必要ないじゃないか。
とかは言わずに、ケガしないように頑張って下さい、と無難な一言を掛けて、観客席へと向かう為に階段を登ろうとした。まぁ、腕を掴まれてそれは実行出来なかったのだけれど。
「え、なんですか?」
「貴様、何かあったか?」
「はい? 特に、何もないですけど」
変な顔でもしていたのだろうか? いや、会長には顔がおかしいだのいじられた事はあるから、きっとその延長線上なのかもしれない。
「そうか。気にするな」
「まぁ、わかりましたけど」
「貴様は我が頂に立つ様を傍観しておけ」
「言われなくても見てますけどね」
「そして、役に立たん知人が敗れ去るのを目に焼き付けておくがいい」
「え、それは嫌ですよ。何言ってんですかこの馬鹿会長」
「……ふむ、いつもの調子に戻ったな。貴様がそうでなければ、我の楽しみが減るのだ。気をつけろ」
何を言っているんだ、と言い返そうとすれば、頭を2度ぽんぽんと叩かれ、会長は決勝の場である体育館内に入っていった。
何だったんだ、一体。
いつもと違う会長が体育館内の中心へと歩いて行くのを見送りながら、あたしも階段を登って観客席へと急ぐ。
さっきと同じ場所には、さっきと同じメンバーが揃っていた。
「何処に行っていたんだ?」
「あー、いや、飲み物を買いに行ってました」
「おっ、それ、オレも飲みたかったんだよなー」
空いていた座席であるオディナ先輩の隣に座れば、真ん前に座っていたクーさんにペットボトルを奪われ、そして飲まれた。
……あたしの所持する飲料は許可無く飲んで良いなんて事はない。断じてない。
会長に飲まれてどうしようかと処遇を決めかねてはいたが、人にあげるなんて考えていなかった。なので、勝手に何も確認せずに飲んだクーさんには鉄槌を下そうと思う。
「それ、さっき会長に奪われて、ほとんど飲まれたんだよね。あたしその後飲んでないから。良かったね、クーさん。会長と関節キスだよ」
勢い良くクーさんの口から霧吹きのように水分が噴射された。はは、いい気味だ。
「お、おおおおおまっ、先に言えよな!」
「言う前に飲んだのクーさんじゃんか」
「今のはクーさんが悪い」
オディナ先輩も便乗してくれる。さっきの会長の事は忘れ、試合の始まる少しの間だけ楽しい時間を過ごせた。
――が、それは友達名前ちゃんの一言によってぶった切られた。
「これ、衛宮が負けるよ」
凛が猛反論をする。セイバーも、桜ちゃんも、ライダーだって負けないように勢い良く否定する。
けれど、友達名前ちゃんはいたって冷静に、静かに言葉を紡いだ。
「ギル兄、本気だよ。いつもの余裕ぶった感じじゃない」
「……確かに。あの会長が慢心をしていないとは、珍しいな。名前、先程会ったのだろう? 何か変化はあったのか?」
「んー……?」
アーチャーに言われ、遭遇してからつい数分前の事を思い出す。特に変わった事は無い、はず。
「――……あ、ずっと道場に居たっぽい」
「おいおい、それマジかよ。つまりアイツは、試合を見ずにずっと道場に籠ってたってワケか?」
「ずっとかはわかんないけど……でも、道場から出て来た時、汗拭きながらだった、ような……」
「友達苗字さんの言っていた事、あながち嘘でもないな。彼は、本気で勝つつもりだ」
「ギル兄の本気は怖いよ。多分、ここにいる全員でかかっても勝てないと思う」
アーチャーや先輩達が弱いって言っているわけじゃないけど、とフォローを入れるが、友達名前ちゃんの言っている事は本当だ。
その証拠に、準決勝第一試合は開始直後に終了した。
会長の突きが士郎の鳩尾にヒットし、場外に飛ばされてダウン。士郎は担架で保健室へと運ばれて行った。
観客も、審判であったハーウェイ先生も、逸脱した強さに圧倒されていた。
会長が勝者という声が静まり返った体育館内に響き、それを待っていたかのように士郎を応援していた凛達がバタバタと観客席から出て行くのを見送る。
もう一度階下の様子を見れば、こちらを見上げた会長と目が合った、気がした。
(2015/06/14)