デッド・ラインを越えるまでに、



酷く赤に染まった視界だった。
世界はここまでも人生は素晴らしいものだと教えてくることに、反吐が出そうになってしまうのを堪える。
荒んだ性格には荒んだ世界がお似合いだと、自分にこの光は似合うわけないと。殴られた時に切れたらしい口の端から全身に広がる痛みが、それを自分に言い聞かせてくる。
そんな事、理解していた。希望なんて、輝かしいものなんて、自分には必要ないのだ。
それでも、尚、自分に手を伸ばしてきたのは誰だっただろうか。
名前も知らない、見たこともないその誰かは、ハンカチを差し出してこう言ったのだ。

君が見ているモノが、全てではないよ。――と。



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