晴天の中、日光を浴びつづける事は体力を消耗すると思った。特に気にはしてないけれど。

同棲、十一日目。



「えー、本年度も晴天の空の下、」
「キャッホー! 名前! まずはこのジェットコースター乗るアル!!」
「じゃあその後はこっちの絶叫マシーン行こうよ! 妙はどこ行きたい?」
「そうねー、ゴリラがついて来なかったらどこでも大丈夫よ」
「そ、そんなお妙さんんん!!」
「そこのゴリラァ。いい加減黙んないとオジサン怒っちゃうよ。撃っちゃうよ。良いのかなァ?」

雲一つ無い快晴の空、銀魂高校二年生全生徒は春の遠足に来ていた。
私服で来ても良いという高校ならではの事に、あたしは昨日ウキウキしながら服を選んでいたのだが、途中から同居人の高杉晋助先生が服選びに参加してきて、結局、先生の案を採用したことはちょっとした恥ずかしい思い出である。
某鼠ランドの広場に集まって人数点呼などをした後、学年主任である松平先生の有り難いお話を聞いて生徒は解散した。班分けはされていたはずだけど、いつの間にかみんなで集まって行動しだすZ組はやっぱり仲が良いな、なんてあたしは思った。

「お妙さ  ぶごぉ!!」
「死ねゴリラ。二度と私の前に現れるな」
「アネゴかっくいいーっ!」
「ジェットコースターに轢かれて死ね土方コノヤロー」
「てめぇ…パレードの車に轢かれ死ね総悟コノヤロー」
「死ね土方」
「死ね沖田」
「死ね沖田。…あ、間違えた。死ね土方」

前言撤回。あんまり仲良くないのかも。みんなヒートアップしてきて、このままじゃバズーカとか取り出していつもみたいに暴れだしかねない状況に陥ってきている。ね
ぇみんな、一般のお客さんも居るんだからなんとか仲直りしようよ、なんてあたしが言っても聞いてくれないのが現状で、屁怒呂くんの一声でなんとか静まってくれた。

「なんだなんだおめーら。結局全員で行くのか?」
「あ、ぎんぱ…ち、」

さっきの解散からそんなに時間は経ってないはず。なのに、銀八は頭に鼠耳カチューシャを付けて首からはポップコーンの入った入れ物をぶら下げていた。
完璧生徒以上に鼠ランドをエンジョイしてるじゃねーかよオイ。

「教師のくせにさかなりエンジョイしてるね、銀八。まさか、一人で?」
「俺的に名前みたいな可愛い子を周りにはべらしたかったんだけどな。生憎、そんなツテなんてねェからよ…さっきまで仕方なくアイツとエンジョイしてたわけ」

言いながら銀八が指をさした先には、綺麗な女の人達から逆ナンされてる高杉先生がいる。
これは察しの良い名前ちゃんはすぐに気付いてしまう。これが、モテない男の性だという事を。

「ってことで名前、センセーとデートしようぜ?」
「いや、話が繋がってないから。あたしは皆と廻るから  あれ? 皆の姿が見えないな。こんな短時間で視力悪くなったのかなあたし」
「どんだけ短時間なんだよ。…お前が俺と話してる間に他の奴らは先に行ってたぞ」
「マジでか」

道理で騒がしい声が聞こえてこないな、と思った。
さっきまであたしの周りにはZ組の集団がいたのに一気に居なくなって、今はあたしと銀八。そしてさっきより増えた女の人達に逆ナンされている高杉先生のみになっていた。
今から皆を追おうにも無理だろうと感じ、あたしは仕方なく、本当に仕方なく、銀八と鼠ランドをエンジョイすることにする。
さて、そうとなればとりあえず、アレから乗ろうか。




「ぎゃああああああ!!!」

隣で銀八のうるさい叫び声が聞こえていたが、そんなのを気にすることもなく、あたしは両手を上げてジェットコースターを堪能していた。
やっぱり楽しいね鼠ランド。さすが夢の国。ここに住もうかな、なんて考えちゃうよ。

「銀八ィ、大丈夫?」
「……」

ベンチに座って魂がそのまま抜けて行きそうな銀八からは返事は無く、頷いてみせるものの表情は死んだ魚よりも死んでいる表情だった。
とりあえず一応遠足なのだから、集合してからの帰りは教師が引率しないといけない。つまり銀八がこのままじゃZ組は引率する教師がいないままになってしまう。
放置しても良いのだが、絶叫系が苦手だったらしい銀八にジェットコースターに乗ろうと誘ってしまったあたしの責任もある。仕方ない。
飲み物買ってくるから、とだけ告げれば、覇気のない声で返事、そして手を振られたのでそのまま場を後にする。
さて、自動販売機はどこだ。

「あ、あったあった」

運良く近くに自動販売機を見つけてお茶を二つ買う。自分の分と銀八の分。
ガコン、とペットボトルが落ちてきたので、取り出し口から二つのペットボトルを取り出して、すぐに銀八のいるベンチに向かおうと踵を返す、と。

「すみません、道を聞きたいんですけど」

振り返れば二人組の男性。パンフレットを見ても現在地が解らないらしく、欝陶しいと思ってる気持ちを押し殺しながら説明する。
つか、男二人で鼠ランドとか寂しいな。彼女居ないのか、それともあっち系の人なのか。鼠ランドは夢の国なので、どんな人でもウェルカムだよ! ハハッ!

「これがあのジェットコースターなので、現在地はここですよ」
「ああ、なるほど。ありがとう」
「いえ、大したことないです。では、失礼します」
「あっ…ちょっと待って、」
「……まだ、何か?」

今度は何なんだろう、と少し嫌な顔をして一応振り向いたあたしの肩には、いつのまにか男性の手がまわされていた。なるほど…この人達はあたしをナンパしようとしてるのか。だからわざわざ夢の国に男二人で来たのか。なんか納得。

「一人だよね? これから俺達と一緒に遊ばねえ?」
「いや、彼氏と来てるんで…」

とりあえず典型的な返し文句で回避しようとしたら、そんなの嘘でしょ〜、なんて軽いノリで流されてしまった。
いやいや貴方達よく見ようよ。あたしお茶のペットボトル二つ持ってるんだぞ、ツレがいるってことはわかるだろ。

「あの、…離してください」
「ねぇ名前は? 俺達と遊ぼうって」
「もし彼氏いても、そいつより楽しくなる保証するからさ」
「け、結構です…!」

すこぶる逃げたい。…のに、肩にまわされた手で動けないしどうするよあたし!
なんかもう死にそうな銀八でも良いし屁怒呂くんでも良いから誰か助けてくれコノヤロー!!

「おい、オメーら」
「なんだよ。俺達今から  え?」

口説く方担当だった男性が声の方を見たのであたしも見てみる。
そこには、心底機嫌が悪くて今にもブチ切れしそうな高杉晋助先生がいらっしゃいました。怖いです先生、あたしも逃げたいです。

「俺の女に何してんだよ、」
「い、いえ! 俺達は道を聞いてただけですから!」
「そ、そうです! キミ、あっ、ありがとうね!! じゃあ!」

一目散に逃げて行く男性二人。あたしはその光景を呆気にとられた表情で見ているしか出来ない。
いきなり先生に手を引っ張られて、ペットボトルが落ちそうになるのを堪える。
どこに向かうのかと思えば、死にそうな銀八のいるベンチだった。

「おい銀八、起きろ」
「……あー…高杉か……?」
「お前に名前を任せたのが間違いだったみてェだな。さっきそこで男に引っ掛かってたじゃねェか」
「マジでか!!?」

いきなり跳び起きる銀八。あたしに確認をとるように視線を向けて来て、頷くと今度は魂がホントに抜けたような表情になってベンチに逆戻りした。

「名前、行くぞ」
「え、でも銀八が…」
「そいつなら集合時間には戻ってくる」

果たして本当にそうなのか。とりあえず銀八の隣にペットボトルを置き、奢りだから、と聞こえてないだろうと思いながらも言って、あたしは高杉先生について行った。




「……先生、」
「…ンだよ」
「なんであたしがナンパされてるの、分かったんですか? それから、周りに女の人いないし…」
「嫉妬か?」
「そんなわけないでしょう!……ただ、どうしてかな、と思いまして」

携帯で時間を確認してなかったから気づかなかったんだけど、もうそろそろ集合時間らしい。先生はあたしの歩くペースに合わしてくれてゆっくり歩きながら、集合場所の広場に向かっているようだ。

「女の事ァどうでもいいだろ」
「そうですねー。じゃあなんでナンパされてると、」
「見回りしてたんだよ。偶然だ偶然」

むむ、解答が早いって事は本当なのかな。いや、でもこの人は自分に都合が悪いことでも頭の中で即座に回避する答えを見つけれる人だから、実質、本当なのかどうか解らないんだけど…まぁいいや。

「あ、先生」
「まだあんのか」
「はい。これだけは言っておきたいんですけど……あたし、先生の女じゃあありませんから」
「……ククッ、馬鹿かおめー。ナンパされた時はああ言うのが一番なんだよ」
「ですよねー」

期待してたわけじゃないけど、やっぱりそうなのか、と納得。
……あ、会話が無くなった。シーン、と二人の間に沈黙が流れ、家に居るみたいな錯覚。
声をかけようにもあたしから話す話題は無いし、かといって周りは賑やかなのにこの空間だけ静かなのってどうなんだろう。
悩めば悩むだけ沈黙は深まっていく。それを破ったのは、高杉先生だった。

「…お前、クラスの女子達と廻ってたんじゃなかったのかよ」
「え……ああ、なんか銀八と喋ってたらみんな先に行っちゃってたみたいで。仕方なく銀八と行動してただけです」
「…そうか」
「それが、どうかしました?」
「お前が気にすることじゃあるめー。後でクラスの連中に聞いてみろよ。面白い反応するはずだ」
「良く解らないけど、わかりました。聞いてみます」

本当にわからないんだけどね。返事をするとまた沈黙が流れる。あ、そうだ。今日の夕飯どうするんだろう。聞かなきゃだめかな、なんて考えてると、集合場所に着いた。

「あら、名前!……と高杉先生じゃないですか」
「もー! なんで妙達先に行っちゃうの? ビックリしたんだから」
「それより銀八はどうしたアルか?」
「銀八なら絶叫マシーンと格闘して見事に敗北したよ。全戦全敗」
「……チッ」

ちょっと待て。なんだその舌打ち! 何に対しての舌打ち!? あたし何かしましたか!!?

「名前、今回は仕方なく折れてやったけど……今度は負けないんだから!」
「ちょっと待てよさっちゃん。何の勝負? あたし達、何か勝負してた?」
「気にせんでええよ、名前ちゃん。あの人ウチもようわからんから」
「あ、ありがとう…花子」

気遣ってくれたのか、一応花子にお礼を言ってまた妙達の会話に入ろうとしたけど、黒いオーラを醸し出していたから近づくのを止めた。だって怖いもん。
それから高杉先生に夕飯の事を聞こうとしたら、綺麗な女の人とまた喋っていたのでまた帰るときにでも、と思って断念。
しばらくしてまだ体調が戻らない銀八がフラフラしながら集合場所に来ると、女子から集団リンチされていた。……見ないふり見ないふり。




で、結局何が面白いことなんですか?…高杉先生。

(2008/09/18)
(2019/09/01 再編集)