土方 じゃなかった、トシの家に行って皆で勉強した甲斐あってか、テスト問題はスムーズに解けた…はずなのに、七月に入って手元に返ってきたあたしの答案は、物凄いことになっていた。
同棲、十六日目。
「名前ー、教師の事ナメてる?」
「いえ、全くもって銀八と坂本先生以外ナメてるつもりはありません!」
「あれ? 俺ともじゃが同類的な発言無かった? 気のせいだよな?」
「いえ、全くもって気のせいではないと思われます」
「そこ否定しろよ」
放課後になり、昼の暑さにはまだ敵わないにしろ代々Z組の教室にはクーラーなんて高級な物は設置されておらず、天井に設置されている古びた年代物の扇風機がぐるぐる回っても暑いことには変わりがなく、そして、銀八の何が目的で着てるのかわからない白衣を見ているだけで暑苦しいことこの上なかったりする。
つか、ヅラにヅラ取れって言う前にお前がその暑苦しい白衣取れ。
「あれ? どうしよう、銀さん目からいちご牛乳が…」
「良かったね、これでいちご牛乳買わなくて済むじゃん」
夕焼けの差し込む教室にはあたしと銀八の二人きり。
理由は、机に広げられたテストの答案用紙にあった。そして冒頭の会話に戻っちゃうんだよなー、これが。
「……名前ー、教師…ってか、俺の事ナメてる?」
「完全にナメてるー」
「泣いて良い?」
「泣けば?」
確かにあたしは前回の中間テストで三桁をきるという偉業を成し遂げた。だけどさ、あんなのさ、まぐれなわけじゃん? どうして大人は皆、上の高みに目指せみたいな事言うのかな。
「それはテメーがやれば出来るからだろ」
「あ、高杉先生」
「やっと来たか、遅ェぞ高杉」
「うるせー。俺にも仕事があんだよ」
教室に、教師が二人そして生徒が一人。
別にやましいことを今からするとか計画ではなくて、実に言いにくいことに、今から三者面談が始まる。
結局あたしは高杉先生に三者面談のお知らせと書かれていたプリントを渡さなかった。それを知ってか知らずか、銀八が余計なお節介を働いたおかげで三者面談の日時を高杉先生に知られてしまったのだ。それが銀八の仕事内容であり、親代わりの同居をしている高杉先生の役割なので仕方がないことなのだが、サボる時はとことんサボるくせしてちゃんと仕事をする時は教師ヅラするので気に食わないことこの上ない。
結局、テスト明けの月曜日の放課後に決行することになったわけでして、まだ見せていないあたしの答案用紙を見た高杉先生は一瞬固まった。
「…………………名前、お前、…」
「痛っ! い、今マジでぶった…!?」
無言で立ち尽くしていた先生があたしの隣の席に座るなりいきなり頭を叩いてきた。痛いんですけど、あなたが加減したとしてもこっちはかなり痛いんですけど!
「俺もね、名前のこの点数はやばいと思うんだけど、本人の名誉のためにテストの順位は口に出さないでおく」
「銀八ィ…それはそれで誰に対するプライバシーを守ってんの?」
「そこで提案なんだが、」
「無視かよ」
「高杉、夏合宿って事で夏休みのうち三日ぐらいあの別荘借りられねェか?」
あれ? 話飛躍した? 別荘? 夏合宿? ワタシナンノコトカワカリマセンヨ?
「あそこの所有者って一応お前じゃん? 担任の俺としては、他にも頭の悪ィ奴とか呼んで、夏休みの宿題ついでに勉強させたいわけよ」
「……考えておく」
「サンキュー!……で、名前の話に戻す」
「戻された!」
このままもう三者面談は終わりかな、なんて甘い考えは通用しなかった。
そこから銀八は担任らしく進路の話やら今後勉強課題の話やらを口を挟む間もなく喋り続け、ただのやる気の無い死んだ魚のような目をした教師じゃなかった、ということを思い知らされてしまうのだった。
「…じゃあ、銀魂大学で良いんだな?」
「まぁ、推薦枠多いし、みんなそこに行くし」
「空知学園の大学部なんて名前が行けるわけねェだろ」
「高杉先生それは言いすぎです! いくらなんでもあたし、怒りますよ!」
「ほォ…」
「あたしが空知学園の高等部に入っていれば、すんなりエスカレーターで上がれました!」
「名前、…それ違うそれ違う」
「と、とりあえず、あたしの進路は一応、銀魂大学でお願いね銀八!」
銀八の頼りない返事を聞いて、三者面談は終わった。
合宿とか、なんか気になる単語が出てきてたけど、他のクラスメイトも候補として上がっているみたいだし、あたしはその辺には大賛成だ。
変態保健医高杉大魔王先生と三日間だけでも離れられるなら、その三日間の自由を思う存分に楽しみたい。
「何言ってんだお前」
「え…?」
「銀八の言う別荘は、俺の別荘なんだ。持ち主が行かなくてどうすんだよ」
「マジですか」
嗚呼、前途多難!
(2Z夏編スタート!2008/11/02)
(2019/09/01 再編集)