久しぶりの繁華街。今日はいっぱい服とか買ってやるぞ、と意気込んでいたんだけど……待ち合わせ場所ってどこだっけ。
同棲、十九日目。
つい一昨日に行方不明になっていたあたしの携帯はベッドと壁の間に落ちていて、ちょうど妙からの電話でそれが分かったあたしは、妙と神楽のお誘いを断ることも無く三人で水着やら夏物の洋服を買う約束をしたのが昨日。
そして今日、カレンダーを見て驚いたのが、明後日に銀八主催の勉強会があること。そうか、だから買い物に行こうと誘ってくれたのか、と納得して家を出たものの、迷ってしまって待ち合わせ場所がどこなのかも判らない状況に陥った。
「名前、やっと見つけたわ!」
電話で迷ったことを伝えること早10分。妙と神楽が捜しに来てくれた。流石友情!
「私、ハーゲンダッツ3個ね」
「酢昆布10個よろしくアル」
……………友情の見返りは大きいのです。
ある程度の買い物をして、喫茶店に入り三人でお茶をすることにした。
ケーキセットを頼んで食べながら色々喋っていると、前置き無しに突然高杉先生の話になる。女子会の話題は尽きないものだなぁなんて噂話に耳を傾けていれば、矛先はあたしへと変わる。
彼女はいたの? とか、今の女の数は推定どれくらい? とか、聞いてくるのは基本妙だけだけど、神楽のテンションが上がってしまえばあること無いこと大声で叫ばれるような気がしたから、まだテンションが低いうちに適当にごまかしておくと、妙がつまらなさそうにため息を吐いた。
「名前、何にもわからないのね」
「寧ろわかりたくないかも。女遊びは激しいし、しょっちゅう学校に行ってるのは、多分、生徒とヤる為だろうし。いや、仕事はちゃんとしているとは思うけど」
「可能性はありえるヨ。私、夏休み中一回だけ学校に行ったけど、サッカー部のマネージャーがケガもしてないのに入って行ったのを見たアル」
「あら、そうなの?」
「仕事しに行ってるのかナニしに行ってるのかわかんないよ、ホントに」
三人一斉にはぁ、と溜め息を吐いた。何がはぁ、なのかあたし的にイマイチわからないんだけど、先生にはほとほと呆れてるからとりあえず溜め息を吐いてみた。
そろそろ帰りましょうか、と妙が腕時計を見て言う。あたしも携帯のディスプレイを確認するともう18時。もうすぐ先生が帰ってくる時間だし夕飯も作らないといけない。それを知ってか知らずか、気を使ってくれた妙にはほんっとに感謝だ。
「あ…」
「どうしたの?」
「いや、あれ見て…」
自分の分の会計を済ませ外に出たあたしは気になる三人組を見つけた。
次に妙も喫茶店から出て来て、あたしが気になった三人組を見つけるなりすぐに呼び寄せた。
「げっ!」
「なんでィ、チャイナも一緒かィ…」
「お妙さァァァァ ぶふぉ!!」
「貴方は呼んでないのよゴリラさん。早く動物園の檻に帰りなさい」
「トシー!…と、退ーっ!」
「良かったな山崎。三人ってのは近藤さん以外みてェだ」
「これで地味キャラ卒業…!!?」
実を言うと退の存在には気がつかなかったんだけど、本人の数少ない幸せを壊すのもなんかあれなので何も言わないでおく。
「そうだわ、土方君、名前を家まで送ってくれないかしら?」
「………妙、なんでいきなりそんな話になるの?」
「だって部活帰りに寄っただけなんでしょう? 私達は反対方向だし、土方君からすれば悪い提案では無いと思うのだけれど?」
妙のいきなりの提案により、トシと帰ることになったあたしは帰路を歩きながら謝ってばっかりだった。
だって、トシは少し怖そうに見えて根は優しいから、道が違うくても送ってくれる。一応トシも銀校からそれほど近くないし、自転車通学だから遠くなさそうに見えるだけで遠いし。
それでいてあたしの家の近くまで送ってくれるってのは、自分の家からかなり遠くなるということなのに、気にすんなよ、なんて言われたら尚更気にしてしまうではないか。
「……この辺で良いよ?」
「いや、まだ先まで送る」
「ありがと…」
「ん…」
「……」
「……」
「この辺で良いよ?」
「いや、家まで送らねェと志村姉に何言われるかわかんねェし」
「あ…そっか」
今日は繁華街に来たこともあってかトシは自転車じゃない。だから、トシが家に帰る時間がかなり遅くなっちゃうということでして。
一人でどうやってトシを帰らせるかを考えていたら、名前を呼ばれたことに反応するのが遅れてしまった。
「どうかした…?」
「あのさ、実は俺、…志村姉に感謝してんだ」
「感謝?」
「……名前、」
「ん?」
「俺がお前のこと好きだって言ったらどうする?」
「…………え、…?」
改めてトシの顔を見ると夕日の光で、ただでさえ男前なのに余計にかっこよく見えてしまって。
「一年の時から、好きだった」
自分が告白されているのにも気づくのが遅くなって、気付いた瞬間、あたしの顔に体中の体温が集まったように顔が熱くなるのを感じた。
夕焼けの大事さを思い知った。
(2008/11/10)
(2019/09/01 再編集)