年明けが近づいてきた。
家の大掃除に駆られたり、お節作りや年越蕎麦作りに忙しくてまともに紅白を見れなかったけれど、とりあえず落ち着いて蕎麦を食べることが出来たし。
良い年を越せそうだ。


同棲、五十日目。




「先生、今年はなんか色々とありがとうございました」
「ああ」
「来年もよろしくお願い…しちゃって良いんですよね?」
「名前が願いてェなら願えば良いじゃねェか」
「今年最後の上から目線んん!」

ズルズル。ゴーン。ズルル。ゴーン。ズルルルルルッ。ゴーン。
何も話すことが無くなったので、蕎麦を啜る音とテレビから流れてくる鐘の音がリビングに響く。
今年はほんっとに色んな事があった。
1年Z組最後の三学期が終わったと思ったら、両親がアメリカに出張して2年に進級して、一人暮らしを堪能してたら直接会った事は無いけど噂を常々聞いていた変態保健医高杉晋助先生にいきなり同居宣言されて、体育祭はチアガールさせられるし、小説にはされてないけどプールの授業は楽しかった。
夏休みは勉強合宿させられたり、母さんと父さんが一時帰国してトシに彼氏役を頼んだりしたんだよなー…。
トシと言えば、あたし、トシに告白されたんだよね。トシはかっこよくて、頭も良くて、文武両道って言葉が似合う人だ。だからこそ、あたしなんかとは不釣り合いだと思ったんだ。

「……蕎麦、冷めるぞ」
「いま今年を振り返ってるんです。冷めたらまた温めれば良いんです」
「ククッ…」

えーっと、どこまで遡ったんだっけ。もう良いや、夏休みは終了! 次は二学期だ二学期。
文化祭の準備を進めてたら神威さんのお店を見つけて、店長の神威さんとパティシエの阿伏兎さんと会えた。
それから河上先生が家に居候するようになって、また色々あって文化祭ではメイドして忙しくて十分に満喫出来なかったんだよね。それから…あ、音楽鑑賞の時に河上先生に告白されたんだ。
こう思い返してみれば、あたしって今年がモテ期だったんじゃないだろうか。まぁ、でも、河上先生には悪いけどお断りさせてもらって…えっと、次は、つい最近だから、あっ、また子のストーカー事件だ!
あれは怖かったな、うん。高杉先生が好きって気付いてたから、先生を取られるんじゃないかって、自分の事よりもそっちの方が怖かった。
その背景がどうなっていたか、それは知る術が無くて、どうしてかいきなり謝罪してきたまた子と今では和解して、連絡先を交換してる仲である。
ただ、また子はまだ先生の事が好きなのかな……うん、今度聞いておこう。
そして、先生と初めて過ごしたクリスマス。期末テストが赤点だらけで追試を受ける事になってしまったけれど、周りから沢山協力してもらってなんとか合格。その後、先生から御褒美を貰って、それで、それで――。
あぁ、ダメだ。思い出しただけで顔が赤くなる。デコルテで今も光を反射しているネックレスを触れば、自然と頬がにやけてしまった。

「おい、日付変わるぞ」
「えっ! あ、本当だ! 年越し蕎麦じゃなくて年越した蕎麦になっちゃう!」
「そっちの心配すんのか」
「その心配以外、他に何の心配があるんですかね?」
「クククッ、そーだな。ほら、早く食べねェと年越した蕎麦になンぞ」
「ぎゃっ! あと5分んん!!」

ズルズルと残りの蕎麦を口に掻き込む。
喉に詰まりそうになりながらもなんとか食べ終わり、器とお箸をテーブルに置いた。
残り1分をきっている。セ、セーフ…! これで年越した蕎麦にはならないはずだ!
テレビでは新年へのカウントダウンが始まり、振袖を着たアナウンサーが元気にカウントを始めていた。

「……名前、」
「はい?…っ」



唇が重なった瞬間に日付が変わった。

(2010/01/02)
(2019/09/03 再編集)