かったるい職員会議なんて、あまり出席したいと思わなかった。
昼になれば名前の弁当が食える。ただその一心で、俺は冷たいパイプ椅子に腰掛けた。
同棲、五十九日目。
採用された新任の教師やら、転勤し異動してきた教師が紹介されるこの職員会議は、俺にとっちゃかなり面倒臭い会議だ。何のメリットも無い。どいつがどこの高校に吹っ飛んで、どいつがどこの高校からこの銀校に吹っ飛んで来たなんて、名前の裸体以上にそそられない。
隣に座った銀八はいつものだらしないにやけ顔で、慣れないスーツに身を包んだ新人の女教師を見定めしている。
「なぁ高杉、あの子良くね?」
「知るか」
「俺的にはもうちょっと胸があった方が良いんだけどな」
「知るか」
銀八のしょうもない話に適当に相槌をうちながら、手元に配られた会議の資料に目を遣れば、新規採用と転勤で来た人数が全く違うことに気が付く。
目の前に座る三人はまさしく新規採用の新人だろう。だが、資料には合計が四人と書かれており、あと一人スーツを着込んだ人間が居るはずなんだが見当たらない。
遅刻なのだろうと雑に資料の束をテーブルに置き、椅子の背もたれに体重をかけるとミシミシと音が鳴った。
「めんどくせぇ…」
呟いた俺の声は突如として開かれた扉に掻き消される。現れたのは理事長のババァと教頭のハゲと校長のバカだった。
会議の始まりを知らせるように三人が登場したことによって、会議室に集まった全教員が立ち上がる。
かったるい体を持ち上げて例に漏れず俺を立ち上がった訳だが、バカが座れという言葉をなかなか言わず、この時点で会議が長引く事を予見してしまう。
「ん? 一人少ないようだの」
「あぁ、彼女は遅れてくるそうだよ。電車で人身事故があったらしくてね」
そりゃ災難ですな。教頭が言い、ババァがふて腐れるバカの代わりに席に座るよう教員全員に伝えた。ガタガタと椅子の音があちらこちらから聞こえ、着席すればパイプ椅子は少し冷えてしまっている。
会議の進行に変更は無く、手順通りに進んでいくようだ。
転勤する教師と定年退職する教師の最後の挨拶やら、新人教師らの自己紹介、新学期からの予定や部活顧問、委員会の担当などが発表。
養護教諭である俺が発言するのはまだ先であるため、手持ち無沙汰になり手元にあったペンを回して時間を潰していると、勢いよく会議室の扉が開かれた。
一斉にそちらを見る他の教師達。興味が無かった俺はペン回しに集中するが、銀八に呼ばれ半ばいらつきながら扉方面に視線を向けた。
「すみませんっ…! 遅れました…!」
息を荒げ、走って来たのだろう。乱れた長い髪を手櫛で整えながら深く一礼するそいつは、先程言っていた人身事故の影響を受けた災難な奴だ。
ババァが席に座るように促し、顔を上げたそいつと目が合う。
「…し、…晋、助……?」
俺の手からするりと抜けたペンは、カツンと音を立てて床に落ちた。
(2010/04/02)
(2019/09/03 再編集)