Zet at zeT








「ふっかーつ!!」
「リ、ボーン!!」

苗字が休んだ理由を知ってから二日後、今まで以上に元気に、そして欝陶しい復活を遂げた苗字を見て謙也は笑顔を浮かべていた。適当に挨拶を交わし席に座ると苗字が不敵な笑みを浮かべて近付いてきた。謙也も同じような笑みを浮かべている。二人は付き合ったのかと思ってしまうほど息の合っている情景に何故か腹がたった。

「…なに?」
「じゃーん!」
「なんや、その封筒の束」
「おいおい白石、俺らはなんやった?」
「は?」
「恋愛ペレストリョ……ロイカ隊やろ!」
「噛んだ事を何も無かったかのように編集は出来ひんからな」
「うちが休んでる間に、こんなに手紙が来とってん」
「で?」
「でっ…て白石くん、嬉しないの?」
「俺に嬉しなる要素無いやん」
「白石、どうしてん。機嫌悪いんはわかるけど苗字さんにあたることないやん」
「あたってはない。ただ、俺に嬉しなる要素なんて無いやん。恋愛ペレストロイカ隊は無理矢理結成させられたんやし」

むしゃくしゃした。黒いもやもやは俺の中でどんどん大きくなって、気持ち悪くなってきた。頭が痛い。苗字の不安そうな表情や、苗字を庇う正義感を背負った謙也の表情が俺を突き刺し傷口から血が出てきた感覚がする。

「…俺、抜けるわ」
「えっ…?」
「恋愛ペレストロイカ隊、抜ける」
「白石っ…!」
「なんで謙也が怒んねん。意味わからん」
「意味わからんのはお前やろ」
「皆注目してるから止めっ、白石くんも忍足くんも落ち着きって!」

苗字に言われとりあえず黙ったが、謙也に睨まれ居心地が悪くなったので学校に来てすぐだが、今日は早退しようと思い鞄を肩に掛け無言でその場を後にした。むしゃくしゃする。なんやねん、これ。自分でもわけがわからなくなって早く家に帰りたいという一心で階段を下りようとしたら、声を掛けられた。振り返らなくても声の主はわかった。苗字だ。

「…なんや」
「抜けるって、ほんまなん?」
「は?」
「白石くん、恋愛ペレストロイカ隊ほんまに抜けるん?」
「あぁ、せや」
「なんで?」
「俺やなくて謙也とよろしくやっとけばええやん」
「よろしくって…」
「自分ら仲ええやん」
「それは友達としてに決まって、」
「謙也はちゃうかもしれんで」
「え?」
「自分はそう思っとっても、謙也は友達って思ってないかもしれんで」
「そんなんっ…」
「せやから謙也とコンビ組んだらええやん」
「……嫌や」
「は?」
「嫌や」
「は?」
「コンビは白石くんとがええねん。白石くんやないとあかんねん」
「なんで、」
「うち白石くんのこと好きやねんもん…!」

  ……ほんま、意味わからん。


(2010/04/15)