Zet at zeT










東京で開催されるでかい文化祭にテニス部代表として蔵と金ちゃんとちぃが参加しに大阪を旅立ってから一週間ほど経った。うちも一緒に行きたかったけど、幸か不幸かS-1GPの一次予選を勝ち進んでしまったので蔵と行動を共にすることは出来なかった。蔵はカッコイイ。贔屓する必要なんて無いくらいかっこよくて完璧なのだ。聖書なのだ。

「何が言いたいねん」
「頭悪いなぁ、けんけん」
「けんけん言うな」
「蔵はモテる」
「俺と同じくらいな」
「見栄張んなし」
「張ってないし」
「こっちでモテるっちゅーことは、あっちでも同じくらい、もしくはそれ以上モテるってことやん?」
「まぁ、そういうことになるわな」
「もう分かったやろ」
「は?」
「はぁ。けんけん阿呆通り越して馬鹿や」
「馬鹿言うなっ!」

頭の悪いけんけんに事の重大さを説明すれば、盛大な溜め息を吐かれたので手元にあったテニスボールを至近距離で投げ付けてやった。さすがに至近距離じゃあ避けきれないらしい。浪速のスピードスターの弱点見っけ。

「ただの幼なじみやろ」
「幼なじみやからやん。幼なじみやから心配になるの!」
「東京弁喋んな。きしょい」
「けんけんの方がきしょい」
「は?」
「うっざー。けんけんうっざー」

こっちは蔵が居なくて寂しくて、いろいろと切羽詰まってるというのにこのヒヨコ頭め。いつかシメる。ピヨとかプリとか鳴いとけ。ん? なんか違う?

「今のお前あれみたい」
「あれ? あれって何?」
「なんやったっけな。思い出されへん」
「やっぱ馬鹿や」
「馬鹿言うなってさっきから言うてるやん」
「はいはい。で、なに言いたいん?」
「あの、あれやん」
「なによ」
「なんか、一人暮らししたら家が恋しくなるやつ」
「は?」
「なんやったっけ。ほ、ほーむ…ほーむ…」
「…ホームシック?」
「そうそれ! 自分の場合はあれやな、白石シック。略して白石ックや!」
「しょーもな…」


(2010/03/22)