Zet at zeT









かくかくしかじか。この言葉って、説明下手なうちを助けてくれる、かなり便利な言葉だと思う。
まぁ、そんなわけでかくかくしかじか、目の前には物凄く機嫌の悪い蔵ノ介さんが居ます。視線を合わすだけで殺されそうなんですけど。うん、怖い。こんな蔵見たこと無い。…怖いよ助けてゆかりちゃん!

「……いきなり呼び出して何? 店、忙しいんやけど」
「あ、その、あんな、」
「しょうもない用やったら戻るで」
「しょ、しょうもなくないし!……いや、あの、蔵に謝りたい、…から」
「謝る? 俺に? お前、俺に何かしたんか?」
「したっちゅーか、やって、しまった?…みたいな?」
「あほらし。謝る理由も分からんのに謝られたかて嬉しないわ」

ごもっともです。返す言葉も無いです。実際、うちはなんで蔵が怒っているのかイマイチ分かっていない。そりゃあ、いきなりやって来て変わった、なんて言われたらはぁ!? ってなるのは分かるけど、そこまでキレるほどでもないと思うし、第一、蔵が変わったのは本当の事だ。
……あれ? なんで蔵が変わったって思ったっけ?
あ、そうか、確かあの可愛い子が蔵の隣にいたからか。蔵は特定の誰かを側に置くなんて事しなかったから、だから、うち、あの子に嫉妬  ん?…嫉妬!? いやいや、そんな、うちが蔵を好きだなんて、あるわけ………………あるかも…。…だからか! だから蔵にキレて、けんけん巻き込んで……うわ、最悪。

「…もうええやろ、戻るわ」
「あっ、待っ…!」

思わず制服を掴んでしまった。何か言わなきゃいけないのに、言葉が出てこない。頭上に蔵の鋭い視線が突き刺さる。ばっ、と振り払われて、うちと蔵の距離はだんだん開いていく。あぁ、もう、どうにでもなれ!

「蔵の分からず屋!!」
「…はあ?」
「うちの言い分くらいちゃんと聞けこのおたんこなす!」
「おたっ…? 意味分からん事言うなやっ」
「意味わからんのは蔵の方やろ! こっちが謝るって誠意見せてんのに拒否ってさ、なんなん!? 結局、蔵はうちに何を言わせたいん!? 変わったって言ったことやったら謝るわ! せやけど、変わったんは蔵の方やろっ? うち以外の子を隣に歩かせて、名前で呼ばせて! そんなに彼女出来たことを自慢したいんっ? それやったらうちもけんけんも違う形やったらちゃんと祝ったったわ。良かったなー、おめでとー。これでええやろ、ほなな。先に大阪帰るわ」
「お、おいっ…!」
「もううちから話すこと無いし! お店忙しいんやろっ? はよ行かな、あの可愛い可愛い彼女に呆れられるんちゃう?」
「お前こそ俺の話聞けっ。あの子とはそんなお前の思うとるような関係ちゃうしっ! 俺はあの子よりお前の事がずっと好きで  ……あ、」
「え……」


(2010/09/12)