Zet at zeT







「…げっ」
「げってなんやねん、げって」
「ゆーしー! 不審者が居るんだけどー!」
「誰が不審者やねん! どうみても青春真っ盛りな中学生やろ!」
「自分で青春とか言ってるんですけどー、マジキモいんだけどー」
「姉貴、謙也困ってるやん。許したって」
「侑士がそう言うなら…」
「うわキモッ! なんか、前よりも増してブラコンになってるやん!」
「キモいとか言うなヘタレひよこ! つか何しに来たんだよ、死ねよ」
「従弟に向かってそれはないやろ! 全国大会に来たに決まってるやん」
「え、なにそれ。四天宝寺ってまた全国出場したの? 死ねば良いのに」
「俺らの実力やっちゅー話や」
「キモい」
「ひどっ」
「我が最愛の弟に一回も勝った事無いのに、自分が強い的な自己チュー考え捨てたほうがいいよ。これ、人生の先輩からの忠告ね。とりあえず四天宝寺はずたぼろに負ければ良いと思う。もうテニスなんてしたくなくなるくらいに」
「自分の卒業中学をそこまでけなせる姉貴に脱帽や」
「え、侑士褒めてる? 褒めてるっ?」
「褒めとる訳無いやろアホ」
「死ねメロス」
「あぁもう、二人はよ家入れや。近所迷惑なるやろ」
「そうだそうだ! ヘタレひよこは帰れー」
「誰が帰るかい! 居座ったる!」
「居座られたら困る! どうしよう、侑士! わが家に変な置物があるって近所の噂になっちゃう!」
「人を勝手に置物にすんな!」
「俺は今のこの状態が噂されると思うんやけど…。まぁええわ。謙也はよ入り。オカンとオトンも自分に会うの楽しみにしとったから」
「私は楽しみにしてなかったがな!」
「姉貴はちょっと黙っとき」
「……ゆうしぃ…」
「弟相手に甘えるとか意味わからん。キモい」
「うっせーよひよこ。テメェはその辺でちぎってばらまかれた食パンを食べときな!」
「姉貴っ、オカンに飯の準備手伝うように言われとったやろ!…ん? 謙也、何しとるん?」
「うちのオカンに今侑士ん家におるって連絡してんねん。うちのオカン心配性やから」
「そりゃあ子供の精神年齢が低かったら心配性にもなるよねー、侑士」
「ん?……あー、まぁそりゃそうやな」
「否定せんかい!」
「すまんすまん。ほな、姉貴も謙也もはよ入り」
「お邪魔しま……あ、忘れとった」
「どうかしたのかい、ヘタレひよこ。大好きなママにまた連絡するのかい?」
「なっ、なんでわかってん!」
「……え、」
「…今から侑士ん家に入るでー、っと」
「ゆ、ゆーし、この子馬鹿なの? ホントに頭のネジ抜けてるんじゃないの?」
「俺は何も知らん。俺は何も知らん」
「あ、電話や。…もしもし? オカン? おう夕飯は侑士ん家で食べんねん。…伯父さん達にはちゃんと挨拶するって。でもやっぱオカンの作る料理が恋しくなるわぁ。はよ東京から帰りたい。ん?……ん、わかった。ほなな」


(2010/05/18)