Zet at zeT









「うわもうまじ死ねよほんと」
「これがおれら四天宝寺の実力っちゅー話や」
「つか、威張る前にあんた試合出てないじゃない。なんだっけ? 強いもんが…」
「あっこら! あの台詞を振り返すな!」
「え、なんで」
「………」
「なんで黙んの?」
「……」
「ほら、白状しなさいよ」
「……言ったあと、恥ずかしかってん…」
「ぶははははははははははは!! 馬鹿だー! ほんと馬鹿だー!! なにそれっ、なんでそんな所で照れるわけ!? 照れるなら言わなきゃ良いのにっ、馬鹿だっ…くくっ、馬鹿がここにいるっ…」
「うっさい。べ、べつにええやろ! 俺は刹那主義やねん!」
「ひー、ひーっ、笑いが止まらん! 自分ほんまおもろいなぁ、昔からやけど…!…くっ、くくくくっ…」
「…あ、」
「ん?」
「……」
「な、なに?」
「大阪弁」
「え、うそ…」
「なんか久々に聞いた気がする」
「うわー、失敗したー。こっちに来てから家以外で喋らないでおこうと思ってたのに…」
「それは無理な話や。大阪の風習は自分の体の隅々まで染み渡っとるからな」
「もうやだ。お家帰りたくない」
「ええええ」
「せっかく東京に慣れようと頑張ってるのにさ、侑士を筆頭に家族三人が、別に慣れなくても良いんじゃね? って思ってるんだよ? ひどくね?」
「とりあえずその話し方むかつく」
「とりあえずだよひよこ」
「とりあえず返しすんな」
「じゃあひよこ」
「さっきの訂正。とりあえず返しはええからひよこと呼ぶな」
「メロス、君は人の話を聞いているのかい?」
「…もうええわ」
「そんな君を東京色に染めるために、明日、東京観光に連れていこうじゃないか!」
「まともなこと言えるって初めて知った!」
「もちろん侑士も一緒だけどね」
「忘れとった。こいつブラコンやった」
「ぶはははは! デートだと思ったの? あんたばかぁ?」
「うわ、めっちゃむかつく」
「ってことで、明日6時にわが家へ来なさいメロス!」
「早っ」
「朝ご飯から夕飯まで東京というものを味あわせてあげるわ!」
「せんせー、質問でーす」
「どうしたワトソン君」
「お土産屋とかには行きはるんですかー?」
「仕方ない。行ってやろう」
「よっしゃ」
「てかさ、お土産屋で何買うの? 弟君にご当地きゅーぴー?」
「オカンへの土産に決まってるやろ」
「あー、そうだねー、あんたマザコンだったもんねー」


(2010/06/03)