Zet at zeT








朝から雨が降っていた。ゲリラ豪雨と世間では呼ばれる状態は、昨日の晴れた天気が嘘のようだと思えた。
部屋の窓から見える空はどんよりと暗く、太陽の光はまったく拝めない。
お母様がよく太陽が好きだと言っていた。命日は今日なのだが、この雨じゃあ墓参りなんて行けやしないだろう。家にいる住人全員が喪服を着ていたが、すぐに普段着に着替え直すはずだと思いあたしは着ようと思っていた喪服をクローゼットにしまった。
お母様の墓参りに行けないことは毎度の事でもあるから気にしない事にしている。いや、気にしなくなったの方が妥当かもしれない。
8年前の今日この日はお母様の命日であるとともに、この家に使用人以外で新しい家族が増えた日でもある。しかも四人。懐かしい思い出だ。
扉をノックする音が聞こえたので返事をすると、今日の予定の中止を知らせる人物が部屋に入ってきた。
眼帯に切れ長の目。あたしはこいつの目が嫌いだった。初めて会った8年前と今ではその眼光の鋭さは増し、目があった瞬間、ライオンやトラも怯えてしまうのではないかとひそかにあたしは思っている。
ぶっきらぼうに中止の旨を淡々と告げるこいつは、8年前から何も変わっていないと思えた。


8年前のこの日。

(2010/02/16)