Zet at zeT










「辰馬兄さん、明日授業で使うプリントなのだけど…」
「どこかわからないとこがあるんか?」
「えぇ、この  あ!」
「こんな問題もわからねェのかよ」
「ちょっと! 返しなさいよ晋助!」
「お嬢様学校も大したことねェな」
「うっさいわね、馬鹿校に行ってるあんたなんかに言われたくないわ。あたしはこれでも上位で」
「あー、はいはい、ストップストーップ。名前ちゃん落ち着いて落ち着いて」
「っ、銀…」
「ほら、小太郎が泣きそうだから。言い合いはやめましょー」
「名前ちゃん…喧嘩しちゃ、やだ…」
「ごめん! ごめんね小太郎くん! 喧嘩しない、もう喧嘩しないよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと!」
「名前ちゃんすきー」
「あたしもすきー」
「気持ち悪ィ」
「ちょっと晋助! 自分の弟にそん」
「喧嘩はストップだってば。おい晋助、名前ちゃんに喧嘩ふっかけんな」
「へいへい」
「なんだ兄に向かってその言い方!」
「留年して同じ学年なんだ、兄貴も糞もあるめーよ」
「ンだとコラ…!」
「わーっ、銀、ストップ! ストーップ!」
「ククッ…銀時、俺とやろうってのか?」
「上等だ…!」
「ちょっと小太郎くんが泣くでしょ…!?」
「名前ちゃんが喧嘩しないならおれ知らない」
「えー」
「あっはっはっ、若い時は元気が有り余る方がいいのう。あっはっはっはっは」
「辰馬兄さん! 笑ってないで止めてよ!」
「わしも高校生の頃はあんなにはしゃいで」
「あぁ、だめだこの人。小太郎くん、あの二人の喧嘩止めれる?」
「ん、わかった」
「さっさと表出んぞ!」
「ククッ、覚悟しとけよ」
「にいさん、にいさん」
「なんだ?」
「あ?」
「おじ様が帰って来てるよ」
「ただいま帰ったよ。今日は遅くなってしまってすまないね…」
「お父様…いつの間に……」
「お帰りなさい、おじさん」
「お仕事ご苦労様です」
「えー」
「あっはっはっはっは、ほんに二人は素直じゃのう」
「いや、ちょっとはこの状況につっこもうよ辰馬兄さん!」

長男に対する憂鬱。

(2010/02/16)