Zet at zeT









「晋助」
「あ?…ンだよ馬鹿兄貴」
「倫理の教科書、か、し、てっ?」
「いちいち気持ち悪いんだよ」
「兄に向かって気持ち悪いってなんだ! お兄ちゃん泣いちゃうゾ」
「そういう所が気持ち悪いんだ。…ほら」
「さんきゅー晋助!」
「おめーに礼を言われたら気持ち悪い」
「え、ちょ、それって俺が何しても気持ち悪いって言ってんのと一緒じゃね!?」
「うっせーよ。早く自分の教室戻りやがれ」
「晋ちゃんつーめーたーいー」
「晋ちゃん言うな、殺されてェか」
「上等だコラ。勝った方が名前ちゃんの弁当無しだからな!」
「は? 何言ってんだ銀時。弁当はあの家専属のシェフが…」
「お前それいつの話だよ。確かに名前ちゃんが小学校卒業するまでは住み込みのシェフが作ってたけど、名前ちゃんが中学入ってからはあの子が作ってんだぞ」
「は?」
「平日の夕飯と休日はシェフだけどな」
「は?」
「いやだから、名前ちゃんが弁当を作ってんだって」
「誰のを?」
「俺達のを」
「あいつが?」
「そう、名前ちゃんが」
「あいつ、料理なんかからっきしだったんじゃあ…」
「シェフに教わったりしてたみたいだぞ。花嫁修業とかなんとかで」
「花嫁修業? あいつ嫁に行くにはまだまだガキだろ?」
「それがよ、メイドを口説いて聞いた話によると」
「俺ら一応居候の立場ってのを忘れてんじゃねーのかおめー…」
「細かいことは気にするな。で、そのメイドに聞いた話では、名前ちゃんには許婚が居るんだとよ!」
「…へぇー」
「しかも、名前ちゃんの通う高校に!」
「…へぇー」
「興味無さそうだな」
「興味無いからな」
「晋助なら食いついてくると思ったんだけどなぁ。お前、名前ちゃん相手に抜いた事ねェだろ」
「もうお前黙れよ」
「あの純粋なお嬢様が乱れる姿を妄想しただけで銀さんのバズーカはやばいよ、ほら!」
「学校で盛ってンじゃねェよ。つか、あいつのどこが純粋なんだ? 純粋のじゅの字も無ェだろーが。口うるさいただのわがままな女だろ」
「甘いな、晋助。我が弟ながらとことん甘いな」
「俺、出来ればおめーの弟には生まれたくなかった」
「名前ちゃんは今流行りの何も知らない無垢なツンデレお嬢様なんだぞ」
「知るか」
「ダメダメだな、晋助」
「おめーの方がな。居候の身でメイドに盛ったり娘に盛ったり、頭大丈夫か? あ、大丈夫じゃねェから留年してんだっけ」
「そのひねくれた性格直した方がいいぞ」
「テメーにだけは言われたくねぇ」
「あーあ、名前ちゃん、他の奴とヤる前に俺とヤってくれねーかな」
「もうほんと自分の教室戻れよ」

留年生に対する憂鬱。

(2010/02/18)