「最近さ、騒がしくないか?」
「は?」
「銀にーちゃんどうしたの? とうとう馬鹿になったの?」
「とりあえず小太郎君、兄に対するその言葉遣いはやめようか」
「やめなくて良いぞ。そいつは兄であって兄じゃないからな」
「何お前ら。俺に対してその扱い酷くない?」
「ひどいの?」
「いや、こういう扱いして当たり前だから気にするな」
「わかった!」
「……もうやだ…」
「なんじゃ、おまんら。こんなとこにおったか」
「辰馬にーちゃんどうしたのー?」
「大切な話があるきに」
「なんだよ、改まって」
「これで変な事吐かしたら殴るからな」
「そげん殺気立つなって。…来月には、この家を出て行かなきゃならん」
「は?」
「えっ?」
「なんだよ、それ」
「最近、屋敷内が騒がしいのは知ってるじゃろ?」
「まぁ、…それとなしに」
「婚約発表があるんじゃ」
「まさか名前ちゃんと例の許婚の? おいおい、マジかよ…」
「それでわしらは居候の身じゃき、わしも金時も晋助も働いておるし、後は卒業だけじゃき」
「金時じゃなくて銀時な」
「これ以上、苗字家の世話にはなれん」
「辰馬にーちゃん」
「なんじゃ?」
「もう名前ちゃんには会えないの?」
「会おうと思えばいつでも会える。それではいかんか?」
「…ううん」
「小太郎には悲しい思いをさせるなぁ、すまん」
「いい。俺、まだ何もできない、子供だから」
「…………晋助、」
「ンだよ馬鹿兄貴」
「名前ちゃんの事どうすんだ?」
「は? 意味わかんねェ事言ってんじゃねェよ」
「残ってもいいんだぞ」
「は?」
「気遣いとかじゃなくて、後悔しないように言ってるんだからな」
「…とうとう頭パーになったのか? 馬鹿も大変だな」
「晋助、このままで良いんか?」
「…俺が知るかよ。あいつには俺らが来る前から許婚が居たんだろォが。あいつが、名前がどうなろうが知ったこっちゃねぇ」
「はくじょーだね」
「あ?」
「よし、もっと言ってやれ小太郎!」
「晋にーちゃんは怖いんでしょ? だから何も出来ないんでしょ? 行動に移せないんでしょ?」
「うるせーよ、黙れガキ」
「ガキなのはおめーだよ、バーカ」
「晋助、話ぐらいはしてきたらどうじゃ?」
「……うっせー…」
俺が望むもの。
(2010/06/08)