1.

 

「なあ、俺たち、結婚しようか」

鼻歌を歌いながらキッチンで過ごしていた夕方のこと。前触れもなくふらりと私の家に現れ、一人ソファの角に座ってテレビ画面を直視していた彼から放たれたその一言に、私は思わず向きかけのじゃがいもをシンクの中に落としてしまった。
食器とジャガイモがぶつかり、ガシャンという音を立てる。
それを聞いて「おい、それ割れてねぇのかよ」とソファから立ち上がった彼はいつも通り自然体そのもので。あまりにいつもと変わらない調子の彼の姿に私は「ああ、今のは幻聴なのか」と一瞬疑ってしまった。

「だって…ひろちゃん、…それ…それって」

初対面の時、20ほども年の離れた彼を恐れ、中居さんと他人行儀に読んでいたのは今は昔のこと。それからどういう縁があってなのか、付き合うこととなり、家では思いきり「ひろちゃん」と馴れ馴れしさ全開で読んでいることを知ったら周囲は一体どんな反応をするだろうか。
ドラマで共演したひろちゃんのジャニーズでの後輩たちはきっと、顔を目を白黒させて驚くことだろう。

「…けっこん、なんて」

ぽつりと零したその言葉に少しだけひろちゃんは気まずそうに私から視線を逸らした。

…結婚。
結婚。

私がその言葉を呑みこむために、何度も何度も胸の内で結婚と唱えていると、

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