攻略不可の鬼神娘
一体どういう風の吹き回しなのか、鬼灯は白澤から呼び出しを受けた。
しかも今回は、喧嘩がしたいわけではなく頼みを聞いて欲しいというのだから、本当にどういう風の吹き回しなのだろうと、鬼灯の中では疑問符が大増殖している。
「お前の部下でさ、ユキちゃんって子がいるだろ?」
「……いますが。」
「あの子、お前の彼女?」
「……違いますが。」
鬼灯が否定すれば、いつものニタニタ顔を更にニタニタさせる白澤。
「なら、僕が彼女に手を出しても、お前に口出しする権利はないわけだ。」
「ああ……そういう……。」
「お前なら、ユキちゃんが何をもらったら喜ぶか知ってるだろ? 僕にそれを教えっギャーーーーーーー!!!!」
神速アッパーを喰らって断末魔と共に上空へ飛んだのち、神獣は地面に顔面をめり込ませた。
「彼女は大事な部下です。万年発情期のクソ偶蹄類にくれてやるくらいなら、今すぐここでお前を始末する。」
「ユキちゃんの好きなものくらい教えてくれたっていいだろ!!」
「私がわざわざ教えなくても、あなた、データだけは豊富じゃないですか。女の子の攻略はお得意でしょう?」
「っ…………いや、あの子は例外だ。僕のデータは役に立たない。」
攻略本いらずの色情魔・白澤だが、どんなにアプローチしてもユキは全く振り向いてくれないのだと言う。
ある日、白澤は偶然デパートでユキと遭遇し、彼女の荷物が多かったので、「僕が代わりに持つよ〜」とニコニコ笑って言った。
彼女はいつもの無表情のまま「そうですか」と言うと、持っていた荷物を全て差し出したので、白澤が受け取ろうとしたところ、重すぎてとてもじゃないが持ち上げることが出来なかった。
「……まあ、彼女は鬼神ですからね。」
「僕が助けを求めるまで、ユキちゃんずーっと、あの無表情のまま、苦しむ僕を見下ろしてたんだよね……。」
「女の子の荷物を持ってあげたい、という男のプライドを壊したくなかったのでは?」
「そうかな? そうだといいけど……。彼女、僕から荷物をどけた後、倒れたままの僕を放置してどこかへ行っちゃった。」
別の日には、呉服屋のショーウィンドウを眺めるユキを見かけたので、「僕が買ってあげるよ」と提案したところ、怪訝な目つきで見られ、「なぜ白澤さんが買う流れになるんですか」と抑揚のない声で返された。
「遠慮しなくていいんだよって粘ったんだけど、結局買わせてもらえなかったよ。僕が買ってあげたいだけなのに、どうしてだろうね。」
「以前、『男が女に服を贈るのは自分が脱がせるためだ』と、彼女に教えたのですが、そうして正解でした。」
「お前のせいかよ!! っていうか何教えてんだよ!! やっぱりお前、ユキちゃんとはそういう……!」
「いえ、話の流れで教えることになっただけですよ。鬼神とは言え、ユキさんは元人間です。あの世の住人となって日が浅いですので、教えることがまだまだたくさんあるんです。『白澤という男は隙あらば女を取って食おうとしているから気をつけなさい』とか、『白澤から何か誘いを受けたら全て無視しなさい』とか。」
「僕がユキちゃんから変に警戒されてるの、全部お前が原因か!! チクショー!!」
--------------------
「……ユキさんは、あなたが何を贈ったところで簡単には心を開きませんよ。」
「なんでそんなことがお前にわかるんだよ!」
むかついている相手に否定されてムキになる神獣を一瞥すると、鬼灯はどこか遠くを見ながら言葉を続けた。
「彼女の死因は、実の父親からの暴行によるものです。彼女の父親は女にだらしがなく、よく若い女性を取っ替え引っ替えしていました。ギリギリの貯蓄で女性への贈り物を購入するものですから、生活は当然苦しい。
そしてある日、ユキさんが就活するにあたって実家を出ようとしたところ、激昂した父親から殴る蹴るの暴行を加えられ、ユキさんは死亡しました。
恨む気持ちが非常に高かった彼女は、死んでまもなく鬼神になりました。」
「…………。」
「これでもうわかるでしょう。ユキさんは、女にだらしのない男は決して受け入れません。そもそも男と恋愛関係になること自体を、ユキさんは望んでいません。」
今までものにしてきた女の子たちは、物をあげて甘い言葉を交えて優しく接すれば、いとも簡単にコロッと落ちた。
しかし相手がユキの場合はその手法が逆効果で、しかも男そのものがNGだとわかり、白澤は項垂れる。
「……ん? ちょっと待てよ。けどユキちゃん、お前とは普通に会話してるじゃん。男のお前と。」
「ああ、異性に寄せる類の好意を向けられなければ、話せますよ。要するに、お前のようにあからさまな下心を見せる輩が駄目なんです。」
「けどさあ、彼女って見た目が結構可愛いじゃん。僕じゃなくても惚れる男はそれなりに現れるだろ。」
白澤の言う通り、たとえ無表情の鬼神であっても、色白でスタイルが良くて顔立ちが可愛らしいものだから、ユキに心奪われる男は少なくなかった。
しかしユキは男が憎い。彼女が男に対して許すボーダーラインは、仕事上だけでの関係、又は友人止まり。
鬼灯曰く、彼女が男嫌いとわかった上で告白する男もいるにはいるのだそうだ。
いるのだが、男側がどれだけ照れ臭そうに一生懸命想いを告げても、ユキが返すのは決まって、
「お断りします。」
という拒否する言葉。
それでも溢れる想いを抑えられず、名前を呼びながら抱きつこうとしたとある獄卒は、顔面に彼女の拳がクリーンヒットし、文字通り玉砕したらしい。
そんなユキだが、女性から好意を寄せられた場合は嫌悪感に襲われることがないようで、たまに女性から迫られて、どう対応したら良いかわからず困惑している姿を見ることがあるそうな。
-7-しかも今回は、喧嘩がしたいわけではなく頼みを聞いて欲しいというのだから、本当にどういう風の吹き回しなのだろうと、鬼灯の中では疑問符が大増殖している。
「お前の部下でさ、ユキちゃんって子がいるだろ?」
「……いますが。」
「あの子、お前の彼女?」
「……違いますが。」
鬼灯が否定すれば、いつものニタニタ顔を更にニタニタさせる白澤。
「なら、僕が彼女に手を出しても、お前に口出しする権利はないわけだ。」
「ああ……そういう……。」
「お前なら、ユキちゃんが何をもらったら喜ぶか知ってるだろ? 僕にそれを教えっギャーーーーーーー!!!!」
神速アッパーを喰らって断末魔と共に上空へ飛んだのち、神獣は地面に顔面をめり込ませた。
「彼女は大事な部下です。万年発情期のクソ偶蹄類にくれてやるくらいなら、今すぐここでお前を始末する。」
「ユキちゃんの好きなものくらい教えてくれたっていいだろ!!」
「私がわざわざ教えなくても、あなた、データだけは豊富じゃないですか。女の子の攻略はお得意でしょう?」
「っ…………いや、あの子は例外だ。僕のデータは役に立たない。」
攻略本いらずの色情魔・白澤だが、どんなにアプローチしてもユキは全く振り向いてくれないのだと言う。
ある日、白澤は偶然デパートでユキと遭遇し、彼女の荷物が多かったので、「僕が代わりに持つよ〜」とニコニコ笑って言った。
彼女はいつもの無表情のまま「そうですか」と言うと、持っていた荷物を全て差し出したので、白澤が受け取ろうとしたところ、重すぎてとてもじゃないが持ち上げることが出来なかった。
「……まあ、彼女は鬼神ですからね。」
「僕が助けを求めるまで、ユキちゃんずーっと、あの無表情のまま、苦しむ僕を見下ろしてたんだよね……。」
「女の子の荷物を持ってあげたい、という男のプライドを壊したくなかったのでは?」
「そうかな? そうだといいけど……。彼女、僕から荷物をどけた後、倒れたままの僕を放置してどこかへ行っちゃった。」
別の日には、呉服屋のショーウィンドウを眺めるユキを見かけたので、「僕が買ってあげるよ」と提案したところ、怪訝な目つきで見られ、「なぜ白澤さんが買う流れになるんですか」と抑揚のない声で返された。
「遠慮しなくていいんだよって粘ったんだけど、結局買わせてもらえなかったよ。僕が買ってあげたいだけなのに、どうしてだろうね。」
「以前、『男が女に服を贈るのは自分が脱がせるためだ』と、彼女に教えたのですが、そうして正解でした。」
「お前のせいかよ!! っていうか何教えてんだよ!! やっぱりお前、ユキちゃんとはそういう……!」
「いえ、話の流れで教えることになっただけですよ。鬼神とは言え、ユキさんは元人間です。あの世の住人となって日が浅いですので、教えることがまだまだたくさんあるんです。『白澤という男は隙あらば女を取って食おうとしているから気をつけなさい』とか、『白澤から何か誘いを受けたら全て無視しなさい』とか。」
「僕がユキちゃんから変に警戒されてるの、全部お前が原因か!! チクショー!!」
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「……ユキさんは、あなたが何を贈ったところで簡単には心を開きませんよ。」
「なんでそんなことがお前にわかるんだよ!」
むかついている相手に否定されてムキになる神獣を一瞥すると、鬼灯はどこか遠くを見ながら言葉を続けた。
「彼女の死因は、実の父親からの暴行によるものです。彼女の父親は女にだらしがなく、よく若い女性を取っ替え引っ替えしていました。ギリギリの貯蓄で女性への贈り物を購入するものですから、生活は当然苦しい。
そしてある日、ユキさんが就活するにあたって実家を出ようとしたところ、激昂した父親から殴る蹴るの暴行を加えられ、ユキさんは死亡しました。
恨む気持ちが非常に高かった彼女は、死んでまもなく鬼神になりました。」
「…………。」
「これでもうわかるでしょう。ユキさんは、女にだらしのない男は決して受け入れません。そもそも男と恋愛関係になること自体を、ユキさんは望んでいません。」
今までものにしてきた女の子たちは、物をあげて甘い言葉を交えて優しく接すれば、いとも簡単にコロッと落ちた。
しかし相手がユキの場合はその手法が逆効果で、しかも男そのものがNGだとわかり、白澤は項垂れる。
「……ん? ちょっと待てよ。けどユキちゃん、お前とは普通に会話してるじゃん。男のお前と。」
「ああ、異性に寄せる類の好意を向けられなければ、話せますよ。要するに、お前のようにあからさまな下心を見せる輩が駄目なんです。」
「けどさあ、彼女って見た目が結構可愛いじゃん。僕じゃなくても惚れる男はそれなりに現れるだろ。」
白澤の言う通り、たとえ無表情の鬼神であっても、色白でスタイルが良くて顔立ちが可愛らしいものだから、ユキに心奪われる男は少なくなかった。
しかしユキは男が憎い。彼女が男に対して許すボーダーラインは、仕事上だけでの関係、又は友人止まり。
鬼灯曰く、彼女が男嫌いとわかった上で告白する男もいるにはいるのだそうだ。
いるのだが、男側がどれだけ照れ臭そうに一生懸命想いを告げても、ユキが返すのは決まって、
「お断りします。」
という拒否する言葉。
それでも溢れる想いを抑えられず、名前を呼びながら抱きつこうとしたとある獄卒は、顔面に彼女の拳がクリーンヒットし、文字通り玉砕したらしい。
そんなユキだが、女性から好意を寄せられた場合は嫌悪感に襲われることがないようで、たまに女性から迫られて、どう対応したら良いかわからず困惑している姿を見ることがあるそうな。
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