怪我が多いユキを叱る月島軍曹
「それ、どうしたんだ」
「え?」
「右の手首、青くなってるぞ」
書庫にてユキが、読みたい・興味のある本を選んでいると、付き添いの月島軍曹が不意に声をかける。
言われた箇所を確認してみれば、確かに右の手の甲の下に青アザが出来ていた。
「あら、いつの間に」
「本は俺が持つから、医務室へ行こう」
有無を言わせない感じで、既に抱えている数冊の本を強引に奪い、手を掴んで書庫を出ようとする月島に、慌てたユキは「放っておけばそのうち消えますから大丈夫です」と伝える。
そして、
「こういうアザはよく出来るんで平気ですよ」
と続けた瞬間、手を掴む力が強まった。
「『よく出来る』……?」
「はい。割と家具や壁の角にぶつかるんで、いつのまにかどこかにぶつけて、こういうアザが出来るんです。いつもそのうち自然に消えますから、わざわざ治療しなくても……」
「この間は転んで膝を擦りむいていたな……。嫁入り前なのだから、怪我しないようもう少し気を配れ」
はぁー、と呆れたようにため息をつく月島だが、ユキは全く気にしていない様子でへらっと笑う。
「私を嫁にしたがるような物好き、そうそういませんし、今更怪我のひとつやふたつ、大したことありませんよ」
20を超えて未だ独り身だというのに気にする素振りを見せず、怪我をしても痕になるかとかそういうのを心配しない。
150年以上も先を生きる女はこうも変わり者なのか、と月島基はため息を深くついた。
「ユキさんがいた時代がどうかは知らんが、女一人で自立して生活することは、この時代かなり厳しい。誰かと所帯を持って家庭を築くことが、女にとっては何より幸せなことなんだ」
「いや、別に私は……」
「26歳なんだろう? ただでさえ行き遅れているのだから、少しは焦ったほうがいい」
口にして気づいた。空気が凍りついたことに。
しまったとハッとして隣を見やると、感情の見えない顔をしたユキがいた。
「最近やっと竃での料理に慣れたような、役立たずで行き遅れで余り物の珍妙な女なんか、誰も貰いませんよ」
「いや、そこまでは言ってな」
「月島さんだって30過ぎて独り身のくせに……!」
「カタブツ!」「筋肉野郎!」「坊主頭!」「長風呂!」「ヴォルデ○ート!」……などなど悪態つきながら全力疾走で視界から消えたユキ。
(坊主頭はほとんどの兵士に当てはまるだろ! 長風呂のどこが悪い! あと、"ぼるで○ーと"ってなんだ!?)
はぁーーー……と何度目かわからぬ深いため息をついてから、彼女を捕まえて問い詰めるべく、月島も走った。
後日、
「"カタブツ"で"筋肉野郎"の月島軍曹殿」
と、やたらニタニタしながら揶揄ってきた尾形上等兵は、とりあえずしばいておいた。
-12-「え?」
「右の手首、青くなってるぞ」
書庫にてユキが、読みたい・興味のある本を選んでいると、付き添いの月島軍曹が不意に声をかける。
言われた箇所を確認してみれば、確かに右の手の甲の下に青アザが出来ていた。
「あら、いつの間に」
「本は俺が持つから、医務室へ行こう」
有無を言わせない感じで、既に抱えている数冊の本を強引に奪い、手を掴んで書庫を出ようとする月島に、慌てたユキは「放っておけばそのうち消えますから大丈夫です」と伝える。
そして、
「こういうアザはよく出来るんで平気ですよ」
と続けた瞬間、手を掴む力が強まった。
「『よく出来る』……?」
「はい。割と家具や壁の角にぶつかるんで、いつのまにかどこかにぶつけて、こういうアザが出来るんです。いつもそのうち自然に消えますから、わざわざ治療しなくても……」
「この間は転んで膝を擦りむいていたな……。嫁入り前なのだから、怪我しないようもう少し気を配れ」
はぁー、と呆れたようにため息をつく月島だが、ユキは全く気にしていない様子でへらっと笑う。
「私を嫁にしたがるような物好き、そうそういませんし、今更怪我のひとつやふたつ、大したことありませんよ」
20を超えて未だ独り身だというのに気にする素振りを見せず、怪我をしても痕になるかとかそういうのを心配しない。
150年以上も先を生きる女はこうも変わり者なのか、と月島基はため息を深くついた。
「ユキさんがいた時代がどうかは知らんが、女一人で自立して生活することは、この時代かなり厳しい。誰かと所帯を持って家庭を築くことが、女にとっては何より幸せなことなんだ」
「いや、別に私は……」
「26歳なんだろう? ただでさえ行き遅れているのだから、少しは焦ったほうがいい」
口にして気づいた。空気が凍りついたことに。
しまったとハッとして隣を見やると、感情の見えない顔をしたユキがいた。
「最近やっと竃での料理に慣れたような、役立たずで行き遅れで余り物の珍妙な女なんか、誰も貰いませんよ」
「いや、そこまでは言ってな」
「月島さんだって30過ぎて独り身のくせに……!」
「カタブツ!」「筋肉野郎!」「坊主頭!」「長風呂!」「ヴォルデ○ート!」……などなど悪態つきながら全力疾走で視界から消えたユキ。
(坊主頭はほとんどの兵士に当てはまるだろ! 長風呂のどこが悪い! あと、"ぼるで○ーと"ってなんだ!?)
はぁーーー……と何度目かわからぬ深いため息をついてから、彼女を捕まえて問い詰めるべく、月島も走った。
後日、
「"カタブツ"で"筋肉野郎"の月島軍曹殿」
と、やたらニタニタしながら揶揄ってきた尾形上等兵は、とりあえずしばいておいた。
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