尾形と仲良しな話
「……それは尾形さんのお父さんに責任があるんじゃないですかね。」
彼から自身の過去話を聞いたユキは、バッサリと言い切った。
聞くきっかけは、ユキが「夜になかなか眠れないから何か話してくれませんか」と、まだ起きている様子の尾形上等兵に声をかけたこと。
「意外だな。」
「意外ですか?」
「女にしては珍しく、何事においてもはっきりとした意見を持っていて、納得出来なければ啖呵を切ることも厭わないお前のことだ。てっきり手厳しく責められると思っていたのにまさか擁護されることになるとはな。…俺に気があるのか?」
「擁護するも何も、ただ思ったことを言っただけです。欲を女の中に出したのなら、子どもが出来ることは想定しておくべきです。それなのに本妻との間に男の子が生まれたからもう用済みだーみたいに尾形親子を切り捨てた言動には、誠意が感じられません。本妻との子どもだろうと妾との子どもだろうと、立場が違うだけであって自分の血が混ざっていることには変わりないんですから、自分が孕ませたんなら尾形親子のことも責任持って面倒見るのが筋ってもんでしょう。面倒も見られないんならハナから孕ませなければいいんですよ。我慢しろ。」
「…………。」
最後の「我慢しろ」はすごく威力のある一言だな、と尾形は口の端を上げる。しかし内容が内容なので、自分たちが陣取った位置と土方たちがいるところとの距離がそこそこあって良かった、と尾形は内心妙に焦りながら、焚き火の向こう側に寝ているじいさんたちをチラ見した。
「お前、普段じいさん共の前ではもう少し大人しいというか上品だろ。猫被ってたのか。」
「私だって言う時は言いますよ。」
「変な女だ。」
尾形がそう言って小さく笑えば、ユキも悪戯っぽく笑みを返す。彼女はこれまで接してきた女とはだいぶ異なるが、それも100年以上先の未来から来た女だからなのだろうか、となんとなく考えながら見つめていると、「なんですか?」と見つめ返される。
「……なあ。」
「はい。」
「お前は俺を変だと思うか。何かが欠けた人間に見えるか。」
「変と言えば変ですよ。顔からして特徴しかないですからね。大人げなかったり、ちょっと子供っぽいところありますし。ひへへへへッ!! ひはい!!」
ニヤニヤしながら指摘されたことにイラついて、そのやわらかそうな頬を左右にぐいーっと引っ張ってやれば、予想通りその頬はやわらかかった。
「はッ、不細工だな。」
「…………。」
ほくそ笑む尾形の両脇を、ユキは手の先で思い切り突いた。
翌朝、尾形は鳥を多く撃ち落とし、絶好調であった。撃った鳥をまずユキに見せると彼女がすごいと褒めちぎるので益々(どう見ても無表情だが)ご機嫌になる。
朝食の用意をしながら家永と楽しそうに話すユキをずっと尾形が見つめているのを、土方はどこか微笑ましそうに眺めていた。(永倉談)
-3-彼から自身の過去話を聞いたユキは、バッサリと言い切った。
聞くきっかけは、ユキが「夜になかなか眠れないから何か話してくれませんか」と、まだ起きている様子の尾形上等兵に声をかけたこと。
「意外だな。」
「意外ですか?」
「女にしては珍しく、何事においてもはっきりとした意見を持っていて、納得出来なければ啖呵を切ることも厭わないお前のことだ。てっきり手厳しく責められると思っていたのにまさか擁護されることになるとはな。…俺に気があるのか?」
「擁護するも何も、ただ思ったことを言っただけです。欲を女の中に出したのなら、子どもが出来ることは想定しておくべきです。それなのに本妻との間に男の子が生まれたからもう用済みだーみたいに尾形親子を切り捨てた言動には、誠意が感じられません。本妻との子どもだろうと妾との子どもだろうと、立場が違うだけであって自分の血が混ざっていることには変わりないんですから、自分が孕ませたんなら尾形親子のことも責任持って面倒見るのが筋ってもんでしょう。面倒も見られないんならハナから孕ませなければいいんですよ。我慢しろ。」
「…………。」
最後の「我慢しろ」はすごく威力のある一言だな、と尾形は口の端を上げる。しかし内容が内容なので、自分たちが陣取った位置と土方たちがいるところとの距離がそこそこあって良かった、と尾形は内心妙に焦りながら、焚き火の向こう側に寝ているじいさんたちをチラ見した。
「お前、普段じいさん共の前ではもう少し大人しいというか上品だろ。猫被ってたのか。」
「私だって言う時は言いますよ。」
「変な女だ。」
尾形がそう言って小さく笑えば、ユキも悪戯っぽく笑みを返す。彼女はこれまで接してきた女とはだいぶ異なるが、それも100年以上先の未来から来た女だからなのだろうか、となんとなく考えながら見つめていると、「なんですか?」と見つめ返される。
「……なあ。」
「はい。」
「お前は俺を変だと思うか。何かが欠けた人間に見えるか。」
「変と言えば変ですよ。顔からして特徴しかないですからね。大人げなかったり、ちょっと子供っぽいところありますし。ひへへへへッ!! ひはい!!」
ニヤニヤしながら指摘されたことにイラついて、そのやわらかそうな頬を左右にぐいーっと引っ張ってやれば、予想通りその頬はやわらかかった。
「はッ、不細工だな。」
「…………。」
ほくそ笑む尾形の両脇を、ユキは手の先で思い切り突いた。
翌朝、尾形は鳥を多く撃ち落とし、絶好調であった。撃った鳥をまずユキに見せると彼女がすごいと褒めちぎるので益々(どう見ても無表情だが)ご機嫌になる。
朝食の用意をしながら家永と楽しそうに話すユキをずっと尾形が見つめているのを、土方はどこか微笑ましそうに眺めていた。(永倉談)
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