イゾルデの姉

イゾルデとの仲が良好ということで、最近の午後は性教育ではなく、お付きのマリアンヌと散歩したり、紅茶を飲んだりして過ごしている。
今日は、中庭でお茶しながらのお喋りだ。

「マリアンヌさん、イゾルデさんに何か贈るなら、どんなものがいいと思いますか?」
「あら、イゾルデ様は、ユキ様からの贈り物ならなんでも喜ばれると思いますが……」
「たとえそうでも、適当に選ぶわけにはいかないんです。私はイゾルデさんから貰ってばかりだから、たまには何かお返ししないと」

イゾルデはよく、ドレスやアクセサリーをユキにと贈る。
高価なものばかりなので、そういう贈り物は年に一度でいいとユキが言ったのだが、全く聞き入れてもらえない。
そのため、それならせめてお返しに何か贈りたい、という結論に至ったのだ。

「けどよくよく考えてみたら、私が何か贈ったところで、イゾルデさんからのプレゼント攻撃は止まない気がする……」
「あー、アイツは加減を知らんからなあ」
「うーん…………えーと、どちら様でしょう」

いつのまにか隣に座っていた美女に尋ねると、イゾルデの姉で第2王女のオリーヴィアだという答えが返ってきた。
白髪の美人という点は、イゾルデと共通している。しかしニコニコ、いや、ヘラヘラと言う表現が相応しいか。イゾルデの笑顔と比べれば、オリーヴィアのそれはかなり胡散臭く思えた。

「君は最近イゾルデの妻になったという、ユキちゃんだね。うん、噂通りの可愛らしさだ」
「はあ」
「アイツ、結婚には乗り気じゃなかったみたいなのに、君と結婚してからは毎日楽しそうなんだよな。態度もいくらか丸くなったし」
「そ、そうですか……」

ユキが頬を染めて視線を逸らすのを見て、オリーヴィアの笑みが深まる。

「第1王女の姉さんが頑として結婚しないし、私はまだまだいろんな子と遊びたい盛りだからさ、それで第3王女のイゾルデが結婚することになったんだよねぇ」
「そうなんですか……」

どこか居心地悪そうにするユキと距離を詰めると、オリーヴィアは腰を引き寄せ囁く。

「イゾルデとの激しい閨に嫌気が差したら、私のところにおいで? 私はアイツと違ってちゃんと加減が出来るから」
「あ、あのっ!?」
「姉上ッ!!」

怒気を含んだ呼び声に、オリーヴィアは余裕すら見える笑みを浮かべてそちらを見た。
ユキも目を向けると、そこには歯を食いしばって姉を睨むイゾルデが立っていた。
イゾルデはオリーヴィアを強めに押しのけると、ユキの腕を掴んで立たせ、自分の背後に隠す。

「ユキは私の妻です。遊び相手が欲しいのであれば、高級娼館にでも行かれては」
「お前とのまぐわいが激しくて可哀想だと思ったから、私が慰めてあげようとしただけだよ」
「余計なお世話です」

ユキの位置からイゾルデの表情は見えないが、先程強く掴まれた腕の痛み、それから声と雰囲気から、彼女がとても怒っているのが感じ取れた。
イゾルデが腰の剣に手をかけたところで、オリーヴィアは両手を上げた。

「おっと、これ以上ユキちゃんを怖い目に遭わせたくないから、私はもう行くよ。じゃあね、ユキちゃん」

オリーヴィアが投げキッスをしてこの場を去り、空気がシンと静まり返る。

「……マリアンヌ、今日の夕食は遅めにしてくれ」
「かしこまりました」

短いやり取りをしてから、イゾルデはユキを抱き抱えると、ズンズン進む。通路でも階段でも終始無言なのが怖い。
私室の寝室に着くと、ベッドにユキを軽く放ってすぐに覆い被さり、服を脱がせ始める。

「んっ、まだ明るいのに……イゾルデさっ……!」
「中庭で姉上に腰を抱かれて、頬を染めていたくせに」

力任せに脱がせるため、着ていたワンピースは破れ、下着も無惨にちぎれてしまった。
震える唇に顔を寄せたところで、容赦ないユキの手のひらが、イゾルデの頬にぶつけられた。

「やだ……やめて……やめて下さい……」

涙でくしゃくしゃになった顔を見て、イゾルデはハッと青ざめる。
そして、これまで自分との性交を拒絶せず受け入れてきたユキが、本気で嫌がり怯えるほど、自分が酷いことをやったと思い知る。

「その……すまない。つい、嫉妬してしまった。すまない……本当に、すまない……!」

すまない、すまない、と必死に謝罪し狼狽するイゾルデ。
ユキは彼女の赤くなった頬に優しく手を重ねると、謝罪の止まらない口を塞ぐ。

「……!」

しばらくそうしてから、ユキは真っ赤な顔を見られないよう、イゾルデの胸に頬を寄せる。

「私はイゾルデさんの妻です。抱かれるなら、あなたがいい」
「ッ……!」
「けど、乱暴にされるのは嫌です。いつもみたいに、優しくして下さい」

いつもみたいに優しく、と言われ、姉の「まぐわいが激しくて可哀想」という言葉が頭をよぎる。

「……私は加減が苦手だ。現にいつも、一度や二度では終えられていない。本能のままに君を求め、無理を強いている。全然優しくない」
「無理なんかしてません。イゾルデさんとの行為はいつも、その……気持ちいい、です。何度も『好きだ』『愛してる』って言われて、嬉しいです」
「ユキ……」

そっとベッドに押し倒すと、優しい瞳に見つめられる。

「実は今日、イゾルデさんに何か贈り物をしたいって、マリアンヌさんに相談したんです」
「……そうなのか。もう決まったのか?」
「いえ、まだ何も……」

困り顔で笑うユキ。
イゾルデは唇を重ね、舌を絡め、歯列をなぞり、最後にまた舌を絡ませてから唇を離す。そして笑って言った。

「だったら、ユキとの子供が欲しい」

それから二人はこれまで以上に通じ合った心で睦み合い、イゾルデはユキの中にたっぷり子種を注ぎ込んだ。