04

「意味が無いんだって、思ったことはないですか?」

私の質問に、手紙を書いていたユーリさんは目をぱちくりとさせた。

「それは、私達がイシュヴァール人の治療をしていることかな?」
「はい。あの、すいません、……不快に思ったのなら」
「いいよ。……意味が無いなんてことはないさ。怪我を治すことは医者の仕事だからね。それに、僕達が治療をすることで、彼等の中で何かが変わることだってある。それが今じゃなくてもいいんだよ。もっと未来、私達がここで治療をしていたことが、誰かの考えをほんの少しだけ変えることが出来るかもしれない」
「……」
「まあ、出来ないかもしれないけどね。それに結局、これは僕達がやりたいだけなんだ。やらない偽善より、やる偽善!ってね」
「変な事聞いて、すいません」
「いいよ。子供の疑問には答えてこそ大人なんだから」

ユーリさんはそう言って笑って、手紙の続きを書き始めた。明日の配給の人が来たら、その人に頼んで一緒に連れていってもらう予定なのだ。今日が最後の日だ。なんだか目が冴えてしまって、眠れない私を気にしてユーリさんは私の傍に来てくれた。ずっと手紙を書きながら娘の自慢話をされていたが。

「リゼンブールはいい所だよ。ウィンリィも可愛いし、近所にね、エドワードとアルフォンスという男の子がいるんだ。両親が居なくてご飯をうちで食べてるから、きっと会える。頭が良くていい子たちなんだ、ちょっとやんちゃだけどね」

沢山遊んであげて。ユーリさんはそう言って笑った。ウィンリィちゃんも、このエドワードとアルフォンスという男の子のことも、とても誇っていて、愛していて、そして心配していることが感じ取れた。話を聞けば聞くほど手紙を渡さなければならないという使命感を感じる。もしかしたらそれが目的なのかもしれなかった。

「きっと仲良くなれるよ。なまえはとても優しいから」
「そうでしょうか」
「そうだよ。今だって、ここに残る私達のことを心配してくれる」

ユーリさんは立ち上がって、私に微笑んだ。

「もう寝なさい。明日は移動で疲れるだろうから」
「……はい。おやすみなさい」
「おやすみ」

灯りを持って、ユーリさんが去っていった。まるでそれを待っていたかのように、声が掛かる。

「お姉ちゃん、一緒に寝てもいい?」
「!」

振り向くと女の子が立っていた。きっと彼女に気付いたからユーリさんは去っていったのだろう。

「いいよ、一緒に寝よう」

女の子は私から許可を貰うとするりとベッドに潜り込んできた。その体を抱きしめて、布団をかけてやる。女の子は何も言わずに私の胸で丸くなって目を閉じた。名前も知らない女の子。


「おやすみなさい、良い夢を」