05

配給は昼頃にやってきた。交渉はすんなり通って、今は配給が終わるまで待っている。手伝おうとしたら、移動で疲れるのだからと止められてしまったのだ。
沢山の子供達がやってきては、「お話ありがとう」「また会えたらお話ししてね」「お姉ちゃん無事にね!」と声をかけてくれる。私はそれに「ありがとう」と返事をして、頭を撫でて、抱きしめてあげた。「無事でいてね」と私が声をかけることは出来なかった。

「お姉ちゃん」

最後の最後、女の子がひょっこりと顔を出した。これ、と差し出されたのはどこかでひっそりと咲いていたらしい小さな花だった。こんな場所でもまだ花が咲いている所があるのだと驚く。

「ありがとう大切にするね」
「あのね、シュナだよ」

女の子は背伸びをして、私の耳元でそう囁いた。

「私の名前!」
「……そう、そうなの。ありがとう。私の名前はね、なまえって言うの」
「なまえお姉ちゃん」
「うん」
「ありがとう、なまえお姉ちゃん」
「全然、私なんか、ぜんぜん……」
「本当のお姉ちゃんが出来たみたいで嬉しかった」
「私も本当の妹が出来たみたいで嬉しかったよ」
「嬉しい!」

出発の時間が来た。私は荷物の乗っていた場所に乗せてもらうことになった。乗り心地が良いとは言えないが、文句を言える場合ではない。ゆっくりと動き出すと、沢山の子供達が手を振って見送ってくれた。サラさんもユーリさんも、手を振ってくれている。私は託された手紙と、さっきもらったばかりの花を握りしめて、手を振り返した。姿が見えなくなるまで、シュナは大きく手を振ってくれていた。

「あの、なにか重しになるものありませんか?」
「なんて?」
「押し花を作りたくて」
「ああ、じゃあこの本を使いな」

受け取った本は大きくて押し花に丁度よかった。もらった花を本の間に挟んで閉じる。この花は何処にでも咲く花なのかもしれない。こんな状況でも咲き続けられる生命力のある花なのだから。けれどどんなに凡庸な花だとしても、この花は宝物だ。記憶もぼんやりしていて、何も持っていなかった私の、初めての宝物になるのだ。