ベッドの横にある一つの台、至ってシンプルな黒のソレに置いてあるスマホから無機質な音が物音一つしなかった部屋に、突如鳴り響いた。

その音に反応したシーツの中の人物。もそもそ動いたかと思えば、日焼けのしてない真っ白で華奢い綺麗な腕がスマホに伸びた。なんなく手に取られたスマホは腕と一緒に、シーツの中へ消える。


プルルというありきたりな音が消えたと同時に響いてきたのは、掠れた女の声。寝起きは機嫌が悪いのか最低限の相槌しか打っておらず、変わらない掠れた声がシーツの中を占領していた。

だが、少しの間、無言が続いたかと思えば上半身を起こし打って変わって怒声に似た驚きの声を上げた。


『ちょ、ちょっと待ってよ!!本気で言ってるの!?私はもうそんな歳じゃないわ!!大体無理に決まってるでしょ?19よ!?』


体から滑り落ちるシーツもそのままに、細い指で前髪をくしゃりとかきあげ、電話の相手に訴える。見開いた目やシワのよった眉根は、まるで正気か?と言っているよう。


『…なんとかするって……あんたね、...分かった、分かったわよ。やるわ』


言葉同様に心底納得がいっていない表情だが、何かを引き受けたようで、数回頷くと女は電話を切った。そしてそれを放り投げた。放り投げたといっても枕元付近に軽く、だが...。ボスっと音を立てて落ちた数秒後に規則正しいバイブ音が数回聞こえ、暗かった画面が光る。


メール受信を知らせるものだったようだが、女が見る気配は無く、深い溜息を零すと台の上にあったタバコを一本取り出し、柔らかそうな唇に加えると火をつけた。



一度、煙を吐き出しぼそりと、か細い声でこう言った。


『本当にやっていけるの、19の私が"中学校生活"だなんて…』


next→夢主設定



ALICE+