『ここ……』


校舎へと続く長い坂を登り続け、やっと見えてきたのは、森の奥地に建っているこの場に相応しいというか、雰囲気に合っている、お世辞にも"キレイ"とは言い難い古い校舎だった。

この学校、椚ヶ丘中学校は結構な名門校として有名だ。だが烏間から聞いた話によれば、この校舎の生徒であるE組だけは、かなり劣悪待遇らしい。
それを聞いていると"本校舎"とエライ違いだとか、この校舎までの道のりだとかは...納得のいくものだ。まあ別に何でもいいんだが…


烏間から伝えられた事を再確認するよう思い出せば、改めてその内容は目を、耳を疑うような、おとぎ話みたいな話。

……ある日、月の7割が何者かによって爆破された。まずこの時点で幾つかツッコミたいが...。その月を破った犯人は何の気まぐれなのか、この椚ヶ丘中学校3年E組の担任の先生を、自ら名乗りあげ務めている…らしい。


この嘘のようで本当の話は、国家機密だと念を押して伝えられもした。なにせ例の犯人...。正体はマッハ20の力を兼ね備えた怪物だとかなんとか…。
あぁ、本当に頭が痛くなるような話ですが、現実なのよね、コレ。私自身もこの目で月が七割程無いということは目視済みだ。それに加え散々、それこそ耳にタコが出来るんじゃないかと言えるぐらい、ニュースでも取り上げられていたのだから。
今更疑っても意味は無い。まったく実感などわかないが、


マッハ20だなんて、だって、非現実的すぎる!!そんなものがこの世に居る...なんていう概念がなかったのだから。とは言え烏間から、国家から任務を受け、ここにこうして立っているのは私。文句を言っても仕方がない。

せめてもの抵抗で、大きめのパーカーを着ているものの恥ずかしさが拭われたわけじゃない。当たり前だ。19の私が中学校生活を送るのだから。着るはずのない制服を身にまとっているのだから。


『…はぁ……』


いつまでもグチグチ考えてないで行くか。受けたのは私なんだから。大丈夫、恐らく...きっと、


ALICE+