正直に言おう。風邪を引いた。ありえない、この私が、だ。ほんっとうに最近の私はどこかおかしい、平和ボケしてるわ風邪を引くわ、弛んでる。

こんなザマで暗殺者だなんて誰が信じるだろうか?きっと誰も信じない。もし同じ暗殺者が風邪をひいたなんて聞けば私でも鼻で笑う。

思わず出た舌打ち。どうかしてる本当に、私なんかがこんな平和ボケしていいはずがないのだから。チラリと時計を見れば06:36分の文字。さて、どうするか、なんて悩んでいれば聞こえてきた律の声。


「遊乃さん、38.5℃はあります。休まれた方がよろしいかと」

『なんでそんなこと分かるのよ』

「携帯を持った時の手の熱、呼吸の乱れから推測させていただきました」

『……あんた本当優秀ね』


ばかみたいに痛い頭、関節の痛み、これほどなく重たい身体……だけど、これくらいのことで休んでられない。あの子達の暗殺のチャンスを掛けた期末日だぞ、今日は。……あぁ、ほらまた、何故私はあの子達のために動いている?これは私の任務だ。

……任務、任務ってなんだっけ?あの生物、殺せんせーを暗殺することだろ?私は何をしているんだろう。平凡な生活、平凡な日常に憧れているとでも言うのか。ハッ、今更反吐が出る。

痛む頭を抑え思考を中断させた。考えたって今はまともに考えられない、服を脱ぎ捨て制服へと着替える。あぁ、これが寒気ってやつか―――



静かに開けたドアの先には誰もおらず自分の席へと腰掛けた。フードを深く被り様々な痛みと怠さに耐える。そういえば風邪なんて10年ぶりくらいな気がする。……いや、もっとか?…そんなことはどうでもいいか。

ぞくぞくと集まってきた見知った顔に、マスク越しに挨拶をするのだった。


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