先生から頼まれた、と言うより丁度良い所に私が居たので押し付けられたと言っていい餌やり。小さく溜息を吐き出し鯉に餌を撒いていれば、上から軽い爆発音が聞こえ反射的に音の方へと顔を向けた。
その数秒後、私の目線の先から男の子がノートを放り投げそれは一直線にこちらへと降ってきた。個性を使いノートを手元へと引き寄せる。
「将来…の為の、ヒーロー分析No.13……」
正直、悪いと思ったが好奇心には勝てず餌を置きふちへと腰掛けノートを捲った。そこにはビッシリと丁寧な字でヒーローのことが綴ってあった。しばらく読みふけり、また、ページを捲ったところで私の動きは止まる。
とある二人のヒーロー分析が今までのページ同様に丁寧に書き綴ってあったからだ。それから逃げるように視線を逸らし、次のページへと進んだ。あぁ、見るんじゃなかったかなぁ、人のもの勝手に見た罰が早速当たったようだ。なんて、そこで聞こえてきた足音と戸惑うような声に反応して顔をあげれば思わず目を見開いた。
「て、く……?」
「え……?」
緑頭の男の子はノートから私へと視線を移す。目が合い、数秒…もしかしたら数十秒かもしれないが、私は男の子を食い入るように見ていた。ポチャン、後ろから聞こえた水音で我に返り勢い良くノートを閉じた。
「これ君の、だよね?勝手に見ちゃってごめんなさい。ヒーロー、目指してるんだね」
今のこの時代、目指してない人はきっと少ないであろうバカな質問を投げかける。焦ったようにあたふたする彼に少し笑いが零れてしまい、私も目指してるんだ、なんて聞かれてもいないのに答える。
スカートを数回片手で払い、ノートを手渡した。いくらか歩いた所で声を発せば彼は不安そうな表情でこちらを振り向く。
「そのノート、すごいね!君、超立派なヒーローになるよきっと!じゃあね!緑谷出久くん!」
先程の不安そうな表情とは打って変わって嬉しそうな顔をした緑谷くんに、背を向けて思わず微笑む。あの子が笑えばああいう風に……なんて考えてやめた。
かんかんと照りつける、憎らしいほどの眩しい太陽は、嫌でもあの日のことを私に思い出させるのだから。
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