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「……おま、何やってんの。しかも椛ちゃんの膝の上で」
「…うるせーなっ」
「ちょ、悟浄!無理やりしないで!」

雪を異様に怯える様子の悟空の頭を、何度か撫でる。寒くて冷たい、そう言った悟空は自分の腕を握った。
そう言えば悟空は未開の地、その山頂に閉じ込められてたって三蔵が言ってたな。どれだけ、寂しかっただろうかなんて想像しただけで涙が出そうになる。

「ピンポンパンポーン。お呼び出しを申し上げまァス。長安にお住まいのバカ猿様、生臭坊主様、美人妖狐様…足が長くて超かっこいい沙悟浄様がお呼びでェす」
「あっはは!」

窓を開けて、窓枠に肘を付き下を見下ろせば足が長くて超かっこいい沙悟浄様と同じく足が長くて笑顔が素敵な猪八戒様が私達を見ていた。

「そんな男には覚えがねぇな」
「何してんの悟浄」
「あらあら、ここには良い男しかいないはずよ」
「愛してるぜ椛ちゃん!!とまぁ、スキヤキだ。行こうぜ」

今から?!と驚き今度にしてくれと頭を抱えた悟空。そんな悟空を優しく抱きしめ、そっと窓から一面の雪景色へと飛び込んだ。

「椛!?…三蔵までっ!」
「…今度は自分で出てこい。悟空」
「大丈夫。そこからはいつでも出られるんだよ、おいで、悟空」

窓から私達を見下ろす悟空は、悔しそうな嬉しそうな、戸惑うようなそんな表情をしていた。

「スキヤキはうめーぞー!牛肉、長ネギ、豆腐シイタケ」
「シラタキも忘れちゃいけませんね」
「エノキも入れて。あと締めはうどんね!炊きたてのご飯は必須!」
「来いよ、バカ猿」
「〜〜〜っバカ猿言うなクソ河童!!」

抱き着いてきた悟空を、悟浄が引き剥がし雪へとダイブさせる。雪だらけの顔面を見て笑顔を零し、釣られて悟空も可愛い笑顔を浮かべる。

「さっさと行くぞ。寒い」
「私も寒い。ビール買って行きましょうよ」
「えー!熱燗だろ熱燗!」
「飲める人はいいわよねぇ」

私も彼も、もう一人じゃない。皆がいるから、笑顔でいられる。

———

「肉…足りませんでしたね……」
「だから言ったじゃないのよ。男四人しかも育ち盛りがいるのに…私数枚しか食べてないし……」

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